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関連審決 無効2002-35557
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成1行ケ55 判例 商標
平成20行ケ10089審決取消請求事件 判例 商標
平成13行ケ47審決取消請求事件 判例 商標
平成14行ケ88審決取消請求事件 判例 商標
平成17行ケ10418審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 包装 /  出所表示機能 /  指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項11号 /  4条1項15号 /  著名商標 /  類似性(類否判断) /  商品の類似 /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  観念(観念類似) /  離隔的 /  離隔的観察 /  取引の実情 /  出所の混同 /  存続期間 /  無効審判 /  外国 /  継続 /  非類似 / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 113号 審決取消請求事件
原告 田辺製薬株式会社
同訴訟代理人弁護士 阿部隆徳
同 弁理士 石津義則
被告 エステー化学株式会社
同訴訟代理人弁理士 松田省躬
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/11/25
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
1 特許庁が、無効2002-35557号事件について、平成16年2月17日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
前提となる事実(争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯 被告は、指定商品を商標法施行規則別表第5類「防虫剤、防臭剤(身体用のものを除く。)」(以下「本件指定商品」という。)とし、「エスパラ」の片仮名文字と「ESPARA」の欧文字を上下2段に横書きしてなる登録第3371409号商標(平成4年8月7日登録出願、平成13年8月31日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。
原告は、平成14年12月27日、本件商標に対する無効審判の請求をした。
特許庁は、同請求を無効2002-35557号事件として審理した上、平成16年2月17日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月27日、原告に送達された。
2 本件審決の理由 本件審決は、別紙審決書の写し(以下「審決書」という。)記載のとおり、
本件商標が、「ASPARA」の欧文字を横書きしてなり、昭和43年4月16日に登録出願、商標法施行規則別表(平成3年通産令70号による改正前のもの)第1類(以下「旧第1類」という。)「薬剤、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和45年2月7日に設定登録され、現に有効に存続している登録第845681号商標(以下「引用商標1」という。)、「アスパラゴールド」の片仮名文字と「ASPARAGOLD」の欧文字を上下2段に横書きしてなり、昭和58年8月11日に登録出願、旧第1類「薬剤、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和61年1月24日に設定登録され、現に有効に存続している登録第1832508号商標(以下「引用商標2」という。)、「アスパラ」の片仮名文字と「ASPARA」の欧文字を上下2段に横書きしてなり、昭和62年12月11日に登録出願、旧第1類「薬剤、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成2年8月30日に設定登録され、現に有効に存続している登録第2256412号商標(以下「引用商標3」という。)及び「ESPAL」の欧文字を横書きしてなり、平成1年10月18日に登録出願、旧第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、平成4年12月25日に設定登録され、平成14年12月25日をもって商標権の存続期間満了により消滅している登録第2487988号商標(以下「引用商標4」という。)と類似する商標であるとすることはできないから、商標法4条1項11号に違反しておらず、また、本件商標を本件指定商品に使用しても、原告又はそれと経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について誤認、混同を生じるおそれはないから、同法4条1項15号にも違反しておらず、同法46条1項の規定によりその登録を無効とすることはできないとしたものである。
原告主張の審決取消事由の要点
本件審決は、@引用商標1ないし3(以下「引用各商標」という。)が本件商標と類似するにもかかわらず、これを非類似と誤認し(商標法4条1項11号違反、取消事由1、なお、本件商標と引用商標4との非類似は争わない。)、A本件商標が、本件指定商品に使用されたときに、原告又はそれと経済的、組織的に関係を有する者の業務に係る商品であるかのような商品の出所の混同を生じるおそれがあることを誤認した(商標法4条1項15号違反、取消事由2)ものであるから、
違法として取り消されるべきである。
1 引用各商標と本件商標との類似性の誤認(取消事由1) (1) 称呼について ア 本件審決が、本件商標と引用各商標の称呼について、「本件商標より生ずる「エスパラ」の称呼と引用商標1ないし3より生ずる「アスパラ」の称呼とを比較するに、両称呼は、ともに4音からなり、語頭音において「エ」と「ア」の音の差異を有し、第2音以下において「スパラ」の音を共通にするものである。」(11頁)と認定したことを争うものではない。
しかしながら、同審決が、「当該差異音の「エ」と「ア」は、ともに有声の開放音であり、明瞭に澄んだ音として称呼され、かつ、聴取されるばかりでなく、僅か4音という短い構成音数の称呼において、重要な要素を占める語頭に位置することから、その差異が両称呼に与える影響は大きく、両称呼全体をそれぞれ一連に称呼しても、その語感が相違し、互いに聴き誤るおそれはない」(同頁)と判断したことは、誤りである。
イ すなわち、「ア」と「エ」は本質的に近似した音であり、語頭音であろうとなかろうと、(a)意識的に強勢されない限り、(b)意識的に明瞭に発音しない限り又は(c)両者に明瞭な観念上の相違がない限り、聞き間違うおそれのある音である。「アスパラ」と「エスパラ」を発音してみれば明らかなように、「ア」及び「エ」には強勢アクセントも高音アクセントも置かれず、無アクセントで平坦に称呼されるのが一般である。また、「アスパラ」と「エスパラ」は、大声で発音するか、「ア・ス・パ・ラ」、「エ・ス・パ・ラ」のように一音づつ明瞭に発音すれば聴別できるとしても、商取引の現場では常にそのように発音されるとはいえず、
かつ、騒音の中で取引されることもある。さらに、「アスパラ」も「エスパラ」も特定の観念を持たない造語である。そうすると、上記(a)ないし(c)の観点は無視できず、両商標はこれを全体として称呼したときは、その語韻、語調の近似性のために聞き誤るおそれがある。
ウ 以上のことは、判例(東京高判平成14年6月26日、甲13)も教示しており、この判例に基づいて、具体的に検討する。
まず、本件において、「その余の部分の同一性又は類似性」は、4音構成からなる両商標中「スパラ」の3音を共通にし、音そのもの、音数及び拍数のいずれも同一である。
また、「語頭部分の類否」について、「ア」(a)の音は、口を広く開き舌を低く下げ、その尖端を下歯ぐきに触れた程度の位置におき、声帯を振動させて発する母音であるのに対し、「エ」(e)の音は、前舌面を平らにし歯ぐきのうしろに近づけ、舌の先をややひっこめ、声を口腔内に響かせて発する「ア」と「イ」の中間の母音であって、「ア」と比較的近似した音である。しかも、「アスパラ」及び「エスパラ」を発音してみれば分かるように、ともに第2音の歯茎摩擦音「ス」が比較的強く発音されるため、その前音「ア」及び「エ」は相対的に弱勢とならざるを得ず、必ずしも聴別が容易ではない。
そして、「アスパラ」及び「エスパラ」の称呼方法として、両者を一気呵成に発音する場合と、「アス」及び「エス」と「パラ」との間に僅かに休拍を置いて称呼する場合とがあり得るが、いずれの場合でも、「パ」には強弱アクセントも高低アクセントも置かれず、全体が平坦な無アクセントで発音されるのが一般である。このような無アクセント下では、「パラ」が破裂音であるため、前半部「アス」、「エス」に比し相対的に強く聴覚に残るとみるべきである。してみれば、例え「ア」及び「エ」が語頭にあるとしても、比較的強く印象に残る「スパラ」の部分を共通にする「アスパラ」及び「エスパラ」の称呼が相紛れるおそれがないとはいえない(東京高判平成14年7月11日(甲14)、平成10年6月26日審決(甲112)参照)。
エ 以上からすると、語頭部分の相違は、上記3音の同一性をしのぐものではなく、両商標を全体として称呼したときは、その語韻、語調は近似したものになり、聴者をして両者を聞き誤らしめるおそれがある。
したがって、本件商標と、引用各商標、特に引用商標1及び3とは、称呼において類似する。
(2) 外観について 本件審決が、「本件商標と引用商標1ないし3は、外観において、判然と区別し得るものである。」(12頁)と判断したことは誤りであり、本件商標と引用商標1及び3とは、外観において類似する。
まず、本件商標や引用商標3のように、片仮名表記部分とそれに対応する欧文字部分とを2段に表記してなる商標においては、その各段が独立して出所表示機能を発揮するという我が国で確立された観察方法がある。この観察方法に立つと、本件商標の欧文字部分「ESPARA」と引用商標1及び3の「ASPARA」とは、語頭の1文字を除く残りの5文字「SPARA」を共通にしており、文字の配列も同じである。アルファベット6文字のうちの最初の1文字が異なるだけであるから、外観上相紛れるおそれがないとはいえない。すなわち、離隔的観察による場合、本件商標と引用商標1及び3の欧文字部分は、6文字中順序を全く同じくする5文字が共通であるため、一見して即座に区別することは困難であり、外観上極めて紛らわしく、視覚的に商品混同を起こす危険がある。そして、取引者・需要者は、全体的直感ないしは外観的印象に頼って異同を認識しやすいという商品取引の実際からも、外観類似は顕著である。ちなみに、外観の類否を判断する上でアルファベットの文字並びを重視する諸外国において、「ASPARA」と「ESPARA」とを非類似とする国が見当たらないことは自明である。以上のことは、
「Singlestar Brand」と「SINGER」とは、前者の要部「Single」の部分の6文字のうちの4文字を共通にするので、外観上類似すると判断した判例(東京高判昭和45年2月17日(甲113))との比較からも、妥当である。
以上により、本件商標と引用商標1及び3とは、外観において類似する。
なお、被告の主張は、離隔的観察ではなく対比観察に当たり失当である。
(3) 観念について 本件審決は、「本件商標は、特定の意味合いを有しない造語よりなるから、引用商標1ないし3とは、観念において比較することができない。」(12頁)と判断しているが、本件商標と引用各商標とは、観念において比較することができないとしても、その観念は、称呼及び外観における類似性をしのぐものではない。
なお、被告主張のように、仮に引用各商標から植物「アスパラガス」を想起する者がいるとしても、それはアスパラギン酸の命名起源を知るごく少数に止まり、一般需要者等が、引用各商標から植物「アスパラガス」を想起することが容易に認められることにはならない。
(4) 取引の実情について ア 本件審決が、「請求人の提出した審判決例(甲第5号証ないし甲第9号証及び甲第12号証ないし甲第15号証並びに甲第98号証ないし甲第100号証(注、本訴における書証番号も同一))は、いずれも本件とは事案を異にするものであるから、それらを参酌しても、前記の判断を覆すことはできない。」(12頁)と判断したことも誤りである。
イ すなわち、多くの最高裁判例(最判昭和36年6月27日(甲114)、最判昭和43年2月27日(甲115)、最判平成4年9月22日(甲116)、最判平成9年3月11日(甲117)は、商標の類否判断に当たっては、その商品の取引の実情を考慮しなければならないとしており、この取引の実情の内容としては、商標の周知・著名性も勘案すべきものとされている(最判昭和35年10月4日(甲118)、
東京高判昭和51年7月13日(甲119)、東京高判平成5年3月3日(甲120)、
東京高判昭和53年12月20日(甲121))。
そして、原告は、「アスパラ」又は「アスパラ」の文字を要部とする「アスパラ○○○」の商標を、商品「滋養強壮変質剤」について、様々な媒体による広告を利用して、本件商標の登録出願前から継続して使用していた(甲18〜55、57〜89、枝番は省略)。その結果、原告の使用に係る商標「アスパラ」は、取引者・需要者の間において広く認識されて周知・著名であり、その周知・著名性は、本件商標の登録審決時においても継続していた。このことは、本件審決も認めている(13頁)。
このような原告の使用にかかる商標「アスパラ」の周知・著名性を考慮して本件商標との類似性を検討すると、本件商標「エスパラ」を本件指定商品に使用すると、取引者、需要者は、著名な商標である「アスパラ」を連想し、「エスパラ」の商標を付した防虫剤・防臭剤が原告の製造・販売に係るものと誤認し、商品の出所を混同する。
上記事実は、本件指定商品である防虫剤・防臭剤と引用各商標の指定商品である滋養強壮変質剤とが、同一メーカーによって製造・販売されていることなどによっても首肯し得る。
したがって、本件商標は、取引の実情に照らし、全体として引用各商標に類似する商標に該当する。
2 商品の出所混同のおそれの誤認(取消事由2) (1) 本件審決が、「本件商標と請求人の使用に係る商標「アスパラ」とは、前記したとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標として容易に看取、認識されるものというべきである。そうとすれば、請求人の使用に係る商標「アスパラ」の著名性、売上高、取引の実情等を考慮したとしても、人の口に入れる商品「滋養強壮変質剤」と、人の口に入れることのない商品「防虫剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」とが、たとえ、同一店舗において販売され得るとしても、それぞれの置き場も相違し、先ず充分に吟味して購入され、一般需要者等による誤認・混同可能性も低いと予測されることよりすれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、請求人の使用に係る「アスパラ」商標を連想、想起するとはいえないだけでなく、請求人又はそれと経済的あるいは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、
その出所について誤認、混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。」(13頁)と判断したことは、以下のとおり誤りである。
(2) まず、前述したように、本件商標と引用各商標とは、称呼及び外観において類似し、取引の実情のもとにおいても類似している。また、引用各商標は、取引者、需要者の間において周知、著名であり、かつ、独創的な商標である。そして、
本件指定商品である防虫剤・防臭剤と滋養強壮変質剤とは、ともに大衆薬という属性において関連性を有している。さらに、両商品の需要者の相当部分が、両商品が販売されている薬局における需要者であり、共通する。そして、滋養強壮変質剤と防虫剤・防臭剤とは、同一メーカーが製造・販売しているという取引の実情がある。しかも、両商品はともに一品100円程度の比較的低価格の商品であり、購買者が入念に精査吟味するとは限らない商品であるから、誤認・混同するおそれが助長される。
以上のことを前提とすると、取引者・需要者は、「エスパラ」と名のついた防虫剤・防臭剤を見たとき、「エスパラ」という商標から周知・著名な引用商標「アスパラ」を連想し、「アスパラ」で有名な原告又は原告との間に親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係にある営業主が、多少名前を変えて防虫剤・防臭剤を売り出したものと誤認、混同するおそれが多分にある。このことは、判例(最判平成12年7月11日(甲125))の定立した基準によっても明らかである。
(3) 本件審決は、著名商標の使用されている商品とこれに類似する商標の指定商品とが、同じ販売系統に属し、一般に同一店舗において取り扱われているものかどうかを基準として、同じ店舗で取り扱われるような商品であれば、出所混同のおそれがあるものとしてきた古くからの判例(大判昭和13年10月15日(甲127)、最判昭和41年2月22日(甲128)に反する。
すなわち、著名商標である「アスパラ」が使用されている滋養強壮変質剤と、これに類似する商標である「エスパラ」の指定商品である防虫剤・防臭剤とは、同じ販売系統に属し、一般に同一店舗において取り扱われている(甲96の1〜28)。そして、本件審決自身が、滋養強壮変質剤と防虫剤・防臭剤とが同一店舗において販売され得ることを認めている(13頁)。現に、商品「滋養強壮変質剤」と商品「防虫剤・防臭剤」とが同じ置き場に置かれている例も多数あり、また、商品「滋養強壮変質剤」が冷蔵されて陳列されていることもあるが、これは消費者の嗜好に合わせたものであって、商品の性質上は室温で陳列されることに何らの問題もなく、スーパーやコンビニでもそのまま山積みして販売されているのが実情である(甲163の2〜5)。しかも、平成11年の厚生労働省の通知「医薬品販売規制緩和に係る薬事法施行令の一部改正等について(平成11年3月12日、医薬発第280号、各都道府県知事政令市市長・特別区区長あて厚生省医薬安全局長通知)」(甲164)により、医薬品であっても安全性の確認されたものについては医薬部外品とされ、医薬部外品は、薬局以外の例えばコンビニエンスストアでも販売を許可されるようになり、他の商品と同じ棚に並べられてもよいこととなった(薬事法施行規則10条の反対解釈。)。そして、原告の著名商標「アスパラ」を付した商品たる滋養強壮変質剤「アスパラドリンク」類は医薬部外品であり、他にも医薬部外品として承認を受けた滋養強壮変質剤は多数ある。また、平成16年には、「「安全上特に問題がない」ものの一般小売店での販売について」(厚生労働省医薬食品局報道発表資料、甲165の1)により、更に多数の滋養強壮変質剤が医薬部外品としての承認を受け、一般小売店での販売が可能とされた(甲165の2)。
さらに、原告を含む日本の製薬会社の売上高の上位を占める製薬会社及びその他の数多くの製薬会社が、過去から現在に至るまで、滋養強壮変質剤のみならず、防虫剤・防臭剤も営々と製造・販売してきており(甲123、124、135〜161)、
製薬会社は滋養強壮変質剤のみならず、防虫剤・防臭剤をも製造・販売するという取引の実情が確立・存在している。したがって、滋養強壮変質剤と防虫剤・防臭剤とは、同一メーカーによって製造、販売され、同一店舗において取り扱われている商品である。
以上からすると、「アスパラ」なる商標を使用して滋養強壮変質剤を製造する営業主がある場合に、他方で「エスパラ」なる商標を使用して防虫剤・防臭剤を製造する営業主があるときは、これらの商品は、いずれも、薬剤を製造する同一営業主たる原告又は原告との間に親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係にある営業主が、防虫剤・防臭剤に、商標「エスパラ」を付して販売したものと誤認するおそれがあるというべきである。
(4) 指定商品間に、人の口に入れるものか否かの違いがあること等を理由に、
需要者による誤認・混同可能性を低いと認定し、出所混同のおそれを否定した本件審決は、最高裁判例(最判昭和43年11月15日(甲129)、最判昭和36年6月27日(甲114))に反する。
すなわち、上記最高裁判例に従うと、商標法4条1項15号の出所混同のおそれの有無を判断するに当たっての商品の類似性判断は、「滋養強壮変質剤」と「防虫剤・防臭剤」とを比較して行うものではなく、「商標アスパラを附した滋養強壮変質剤」と「商標エスパラを附した防虫剤・防臭剤」とを比較して行うものである。そして、仮に「滋養強壮変質剤」と「防虫剤・防臭剤」とが、誤認混同を生ずるおそれがないものであったとしても、「商標アスパラを附した滋養強壮変質剤」と「商標エスパラを附した防虫剤・防臭剤」とを比較した場合には、「商標エスパラを附した防虫剤・防臭剤」が「商標アスパラを附した滋養強壮変質剤」の営業主である原告の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがあるので、商品の類似性があり出所混同のおそれがあるというべきである。
しかも、本件審決の上記判断は、指定商品が人の口に入れるものか否かの違いを一切考慮せずに、指定商品が同一店舗において取り扱われがちのものであることを理由に、出所混同のおそれを肯定した判例(大判昭和13年10月15日(甲127)、大判昭和14年6月28日(甲131))にも反するものである。
被告の反論の要点
本件審決の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由にはいずれも理由がない。
1 取消事由1について (1) 称呼について 本件商標と引用各商標とは、語頭音において「エ」と「ア」音の相違を有する。すなわち、「エ」音は、前舌面を平にして歯茎の後に近づけて引っ込めた声を口腔内に響かせて発生する半開き音で弱音であり、「ア」音は、口を広く開いて発音する強音である。両音は、ともに有声の開放音であり、はっきりした澄んだ音として発音される上、後子音として弱音の無声摩擦音「ス」が位置するために、よりこの両音が明確に発音され、かつ、聴取し得るものである。しかも、両商標が4音の短い音数からなることも加わり、この語頭音「エ」と「ア」の相違は、全体としての称呼に及ぼす影響が大きく、一連に称呼するとき、両商標は明確に区別し得るものとなる。
また、語頭音「ア」と「エ」音が比較的近似した音であることは認めるが、第2音の「ス」の音は、「弱音」であり弱く発音されるため、この無声摩擦音「ス」を後子音とする場合は、前に位置する語頭音が明確に発音され、聴取される。(乙3)。
このように語頭音における相違は、称呼類似の判断において重要な要素になるとするのが原則であり、原告引用の判例(東京高判平成14年6月26日、甲13)が、「一般に、語頭部分が語尾部分に比べて称呼の識別上重要な要素となることは肯定されるけれども」と認定されているのみならず、多数の審決(乙3〜8)の示すところである。
なお、引用各商標の付された商品は、アスパラギン酸が成分のほとんどを占めており(乙1)、このアスパラギン酸は、植物のアスパラガス(asparagus)の液汁から分離されたものである(乙2)。アスパラガスは、日常飲食に供されており、取引者・需要者間において、単に「アスパラ」と簡略称呼されていることは自明なことである。したがって、引用各商標「アスパラ」の語から「アスパラガス」を想起すること明らかであり、引用各商標が特定の観念を持たない造語であるとの主張は誤りである。
本件商標及び引用各商標に共通する後半「パラ/para」の語は、「異性体・誘導体」を意味する化学用語であり(乙9)、本件指定商品の登録商標に接尾辞的に多数採用されている(乙10)。したがって、この部分は、この種商品について慣用語的なものとなっており、仮に、本件商標及び引用各商標を前後半で分離判断すると、後半部分は識別性の薄い部分とみるべきであり、前半の「エス」「アス」の部分が識別要素として重要な部分となる。
その他原告の引用する判決及び審決は、本件商標及び引用各商標とは構成が異なり、本件の参考となるものではない。
(2) 外観について 原告の引用する判決は、構成文字数及び語頭並びに指定商品において相違する本件商標の場合とは事情を異にするもので、本件の参考とはならない。
文字を記憶する際に文字が長い場合は、その始めの部分を記憶するなり、
難解の語であれば身近かな同一音の語あるいは類語等に置き換えて記憶するのが常であるが、短い語であればそのまま記憶することが容易である。いずれにしても、
始めの部分が強く印象に残り記憶されるとみるのが一般である。本件商標及び引用各商標のように称呼がわずか4音からなる短い語にあっては、そのまま全体が文字として記憶され離隔的観察においても区別し得るものである。
そして、片仮名文字部分にて相違する語頭「エ」と「ア」は、字画数が3と2の相違を有する上、本件商標の語頭「エ」は、引用各商標には存しない平行な横線を有するものである。また、欧文字部分にて相違する語頭「E」と「A」も、
字画数において4と3の差を有し、しかも、「E」が3本の平行線を有するのに対し、「A」が2本の対象な斜線を有する。元来、片仮名文字及び欧文字は、少ない字画で構成されるものであり、字画数の差異は1字画であるが、これに加え構成線の傾きに大きな差を有するものであるから、両者は、外観上紛れるおそれがない。
(3) 観念について 前記したように、引用各商標の付された原告商品は、植物のアスパラガスの液汁から分離抽出されたアスパラギン酸を成分とするものであり、これらドリンク剤の原料にビタミンが豊富である植物が使用されていることは容易に想像がつくから、引用各商標、とりわけ引用商標3「アスパラ/ASPARA」は、英語のスペルも同じであり、植物「アスパラガス」を想起する。
これに対し本件商標は、被告エステー化学株式会社の頭部「エス」と主原料である「パラジクロロベンゼン」の頭部「パラ」を結合させたもので、意味を有しない造語であるから、両者が観念においても類似しないこと明らかである。
2 取消事由2について 一般論として、2つの商品が、同一メーカーによって製造、販売され、同一店舗において取扱われている場合、商品の混同のおそれを判断する上での材料とすることに異論はないが、当該2つの商品の密接性を更に具体的に考慮すべきである。
本件のように、「滋養強壮変質剤」と「防虫剤・防臭剤」とが同一店舗にて取扱われる商品であるとしても、滋養強壮変質剤は医薬品であり、薬事法の適用される商品であり、薬事法施行規則(昭和36年2月1日厚生省令第1号)10条(医薬品の管理)に「薬局の管理者は、医薬品を他の薬品と区別して貯蔵し、又は陳列しなければならない。」と規定されている。また、取引の実情をみると、原告のアスパラシリーズの商品は、いわゆるドリンク剤として、アンプルに入れられ販売されており、被告の防虫剤、防臭剤は、フィルム、紙、ビニール包装、袋、箱等、プラスチック容器に入れて販売されているのが通常である。しかも、ドリンク剤は、冷蔵ケースに収納されて陳列されている。
以上のような取引の実情を考慮すると、滋養強壮変質剤と防虫剤、防臭剤とは法律により区別して販売することが義務付けられているだけでなく、容器の形態が全く異なり、かつ冷蔵されている差異をも有しており、両者は全く異なる販売形態である。
そして、滋養強壮変質剤は、人の口に介するものであり、「防虫剤、防臭剤(身体用のものを除く)」は、むしろ身体に害を及ぼすおそれのあるものであり、
人の口に絶対に入れないものである。そのような商品同士を陳列棚に並べて配することは常識的にあり得ないものである。さらに、医薬品・医薬部外品は、健康に影響を及ぼす商品であるため、慎重に商品を吟味して購入するものである。したがって、商品を購入するに当たって、購入者が、身体に良いものと悪いものとを間違えるおそれは皆無である。
以上のような取引の実情を勘案すれば、なおさら商品の混同を生じることは有り得ない。したがって、本件審決が、滋養強壮変質剤と防虫剤、防臭剤が同一店舗において販売され得ることを認めながら、出所の誤認混同のおそれを否認しても、何ら不合理でない。
なお、本件商標は、被告が昭和50年より防虫剤(洋ダンス用の詰替用)に使用しており、過去3年間の平均売上は1.5億円に達しているが、この過去30年間にわたり問題なく販売している事実は、まさに需要者において商品の出所の混同を生じていないことを肯定するものである。
当裁判所の判断
1 引用各商標と本件商標との類似性の誤認(取消事由1)について (1) 称呼について ア 本件商標と引用各商標の称呼が、本件審決認定のとおり、「本件商標より生ずる「エスパラ」の称呼と引用商標1ないし3より生ずる「アスパラ」の称呼とを比較するに、両称呼は、ともに4音からなり、語頭音において「エ」と「ア」の音の差異を有し、第2音以下において「スパラ」の音を共通にするものである」(11頁)ことは、当事者間に争いがない。
原告は、本件審決が、本件商標と引用各商標の称呼について、「当該差異音の「エ」と「ア」は、ともに有声の開放音であり、明瞭に澄んだ音として称呼され、かつ、聴取されるばかりでなく、僅か4音という短い構成音数の称呼において、重要な要素を占める語頭に位置することから、その差異が両称呼に与える影響は大きく、両称呼全体をそれぞれ一連に称呼しても、その語感が相違し、互いに聴き誤るおそれはない」(同頁)と判断したことが、誤りであると主張する。
イ そこで検討するに、本件審決が認定する(11頁)とおり、本件商標からは「エスパラ」の称呼が生じ、引用商標1及び3からは「アスパラ」の称呼が生じるとともに、引用商標2からは「アスパラゴールド」の称呼と「アスパラ」の称呼が生じるものと認められる。この「エスパラ」の称呼と「アスパラ」の称呼とを比較すると、両称呼は、ともに4音からなり、語頭音において「エ」と「ア」の音の差異を有し、第2音以下において「スパラ」の音を共通にする。そして、上記「ア」と「エ」とは、比較的近似した母音であるばかりでなく、「アスパラ」及び「エスパラ」を一連のものとして発音した場合、破裂音の「パ」を含む「パラ」が比較的強く聴覚に残ることもあって、全体の語調・語感も近似する面があることは否定できない。しかしながら、「アスパラ」及び「エスパラ」のように4音という短い音数の構成からなり、通常、一連にのみ称呼される商標においては、語頭に位置する音の差異は重要であり、それらがいずれも弱音である「ス」の前に位置する明瞭に称呼される母音として相違することも考慮すれば、語頭音における上記差異は、第2音以下における共通性等を凌駕するものといわなければならない。
この点について原告は、語頭音である「ア」と「エ」との音の近似性、
称呼した場合の共通する第2音以下の重要性などを縷々主張するが、これらはいずれも前記説示に照らして、採用の限りではない。
また、原告は、上記主張を裏付けるものとして多数の裁判例及び審決例(甲5〜9、12〜14、98、112、132)を提出するが、裁判例のうち、語頭音のみが異なる「リスコート」と「ビスコート」(甲12)、「エクサス」と「ネクサス」(甲13)及び「サマリール」と「アマリール」(甲14)は、いずれも異なる語頭音の中に共通の母音を含むことなどから、本件とは事案が異なるというべきである。さらに、審決例については、原告主張のとおり、語頭音の「ア」と「エ」とのみが異なる「エンドラン」と「アンドラン」(甲7)、「エルミック」と「アルミック」(甲8)、「エバンス」と「アバンス」(甲9)及び「エコフロック」と「アコフロック」(甲112)につき、いずれも称呼が類似すると判断されている反面、「エスプロ」と「アスプロ」(乙3)、「エスサン」と「アスサン」(乙4)、「エイミー」と「アイミー」(乙5)、「エクセル」と「アクセル」(乙6)及び「エクセーヌ」と「アクセーヌ」(乙7、8)については、いずれも称呼非類似と判断されていることから明らかなとおり、審決例において一定の基準を定立することは困難といわざるを得ない。
以上のとおり、本件商標と引用各商標とは、称呼上相紛れるおそれはないから、非類似の商標というべきである。
(2) 外観について 原告は、本件商標の欧文字部分「ESPARA」と引用商標1及び3の「ASPARA」とは、語頭の1文字を除く残りの5文字「SPARA」を共通にして文字の配列も同じであるから、外観上相紛れるおそれがないとはいえないと主張する。
たしかに、本件商標の欧文字部分「ESPARA」と引用商標1及び3の「ASPARA」とは、語頭の1欧文字を除く残りの5欧文字「SPARA」を共通にしており、近似する面を有することは否定し難いところであるが、全体で6欧文字という比較的短い配列において、語頭の欧文字は、当該商標の取引者・需要者にとって重要な印象を及ぼすものであり、しかも、その両者が「E」と「A」という明瞭に異なる外観を有することを考慮すると、外観上、区別されるものといわなければならない。また、本件商標の片仮名文字部分「エスパラ」と引用商標3の「アスパラ」とは、「スパラ」の文字部分を共通にするものであるが、上記同様に、取引者・需要者にとって重要な印象を及ぼす語頭の片仮名文字が、「エ」と「ア」という明瞭に異なる外観を有して相違することから、この点からも外観上区別されるものといえる。なお、原告が指摘する裁判例(東京高判昭和45年2月17日(甲113))は、当該事案における商標が語頭の欧文字が同一である点で本件と事案を異にしており、上記の判断を左右するに足りるものではない。
したがって、原告の上記主張は、採用することができない。
(3) 観念について 原告は、本件商標と引用各商標とが、観念において比較することができないとしても、その観念は、称呼及び外観における類似性をしのぐものではないと主張するが、本件商標と引用各商標とが称呼及び外観において類似するものでないことは、前示のとおりであり、本件審決が、「本件商標は、特定の意味合いを有しない造語よりなるから、引用商標1ないし3とは、観念において比較することができない。」(12頁)と判断したことに誤りはない(なお、被告は、引用各商標から植物「アスパラガス」が想起されると主張するところ、仮にそのような観念が生じるとしても、特定の観念が生じない本件商標(このことは当事者間に争いがない。)と比較することができないことは、同様である。)。
(4) さらに、原告は、商標の類否判断に当たって、その商品の取引の実情を考慮すべきであり、この取引の実情の内容としては、商標の周知・著名性も勘案すべきものであるところ、原告は、「アスパラ」又は「アスパラ」の文字を要部とする「アスパラ○○○」の商標を、永年にわたり商品「滋養強壮変質剤」について使用した結果、原告の使用に係る商標「アスパラ」は、取引者、需要者の間において広く認識されて周知・著名であり、このような原告の使用にかかる商標「アスパラ」の周知・著名性を考慮して本件商標との類似性を検討すると、本件商標「エスパラ」を本件指定商品に使用すると、取引者、需要者は、著名な商標である「アスパラ」を連想し、「エスパラ」の商標を付した防虫剤・防臭剤が原告の製造・販売に係るものと誤認し、商品の出所を混同すると主張する。
たしかに、商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、そのためには、当該商品に使用された商標がその外観観念称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかも、できるだけ当該商品の取引の実情を明らかにした上、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。そして、当該商品の取引の実情の内容としては、商品に使用された商標の周知・著名性も当然考慮すべきものといえ、原告により「滋養強壮変質剤」に使用された引用各商標中の「アスパラ」が、本件商標の登録出願時までに、取引者・需要者の間において広く認識され、周知・著名となっており、その周知・著名性が、本件商標の登録審決時においても継続していたことは、本件審決認定(12〜13頁)のとおりである(甲18〜55、57〜95、枝番は省略)。
しかしながら、原告の使用に係る商標「アスパラ」の周知・著名性を考慮したとしても、前示のような本件商標と引用各商標との非類似性、とりわけ、両商標の称呼及び外観における語頭の相違は、本件指定商品における取引者・需要者にとって明確に意識されるものであり、これらの商標を使用した商品につき出所の混同のおそれを生じさせるものとは認め難いところである。
また、原告は、著名商標である「アスパラ」が使用されている滋養強壮変質剤と、これに類似する商標である「エスパラ」の指定商品である防虫剤・防臭剤とは、同じ販売系統に属し、一般に同一店舗において取り扱われていること、現に、商品「滋養強壮変質剤」と商品「防虫剤・防臭剤」とが、薬局のみならずコンビニエンスストアなどでも同じ置き場に置かれている例が多数あること、原告を含む日本の製薬会社の売上高の上位を占める製薬会社及びその他の数多くの製薬会社が、過去から現在に至るまで、滋養強壮変質剤のみならず、防虫剤・防臭剤も製造・販売してきていることなどの点も上記取引の実情として考慮すべきであると主張する。
なるほど、薬局及びコンビニエンスストアなどの小売店の同一店舗内の比較的近接した箇所において、「アスパラ」の商標が付された滋養強壮変質剤と、
「エスパラ」の商標が付された防虫剤・防臭剤が陳列されることがあり、また、一般的に製薬会社が防虫剤・防臭剤を製造・販売するという取引の実情があることが認められる(甲96、135〜161、163、枝番は省略。ただし、大手の製薬会社である原告が、滋養強壮変質剤に加えて、防虫剤・防臭剤も製造・販売していることを、本件指定商品の取引者・需要者が、広く周知しているような事実を認めるに足りる証拠はない。)。しかしながら、前示のとおり、本件商標中の「エスパラ」の部分と引用各商標中の「アスパラ」の部分とが称呼外観及び観念において類似しておらず、また、本件商標が周知著名な「アスパラ」の商標を一部に含むようなものでもないことから、通常の取引者・需要者は、両商標を明確に区別して認識し得るものと認められるばかりでなく、上記取引者等が「アスパラ」の商標が付された滋養強壮変質剤や「エスパラ」の商標が付された防虫剤・防臭剤を購入するに当たり、後記のとおり、慎重に吟味することを勘案すると、その商品についての出所の混同を生じるおそれはないものといわなければならない(なお、現実の取引において、
「アスパラ」の商標が付された滋養強壮変質剤と「エスパラ」の商標が付された防虫剤・防臭剤とが、同一の出所によるものと誤認混同されて購入されたことを認めるに足りる証拠がないことも、上記の説示を首肯するものである。)。
したがって、原告の上記主張を採用することはできない。
(5) 以上のとおり、本件商標と引用各商標とは、称呼及び外観において1部類似する面がないわけではないが、全体的に考察して非類似というべきであり、また、観念において比較することはできず、さらに、取引の実情において原告の使用に係る商標「アスパラ」が周知・著名であり、上記両商標の指定商品が同一店舗内で取り扱われているなどの点を考慮しても、通常の取引者・需要者が、上記指定商品を購入するに当たり払う注意力の程度等からみて、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるとはいえない。
したがって、、本件商標と引用各商標とは類似するとはいえず、原告主張の取消事由1は理由がない。
2 商品の出所混同のおそれの誤認(取消事由2)について (1) 原告は、本件商標と引用各商標とが、称呼及び外観において類似し、取引の実情のもとにおいても類似していることを前提とした上、引用各商標が、取引者、需要者の間において周知、著名であり、本件指定商品である防虫剤・防臭剤と滋養強壮変質剤とが大衆薬という属性において関連性を有しており、両商品の需要者の相当部分が共通することなどを理由に、取引者・需要者は、「エスパラ」と名のついた防虫剤・防臭剤を見たとき、「エスパラ」という商標から周知・著名な引用商標「アスパラ」を連想し、「アスパラ」で有名な原告又は原告との間に親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係にある営業主が、防虫剤・防臭剤を売り出したものと誤認、混同するおそれがあると主張する。
しかしながら、本件商標と引用各商標とが、称呼及び外観において類似しているといえないばかりでなく、取引の実情を考慮し、引用各商標中の「アスパラ」部分が、取引者・需要者の間において周知、著名であるなどとしても、本件商標と引用各商標とが類似しているといえないことは、前示のとおりであるから、原告の上記主張は、その前提において誤りがあり採用できない。
(2) また、原告は、本件審決が、商標法4条1項15号の出所混同のおそれの有無の判断に当たって、「滋養強壮変質剤」と「防虫剤・防臭剤」とを比較し、
「商標アスパラを附した滋養強壮変質剤」と「商標エスパラを附した防虫剤・防臭剤」とを比較していないことが、判例(最判昭和43年11月15日(甲129)、最判昭和36年6月27日(甲114))に反し、また、人の口に入れるものか否かの違いを理由にすることが、指定商品が人の口に入れるものか否かの違いを考慮せずに、同一店舗において取り扱われがちのものであることから、出所混同のおそれを肯定した判例(大判昭和13年10月15日(甲127)、大判昭和14年6月28日(甲131))にも反するものであると主張する。
しかしながら、「商標アスパラを附した滋養強壮変質剤」と「商標エスパラを附した防虫剤・防臭剤」とを比較しても、その商品についての出所の混同を生じるおそれがないことは、前示のとおりである。また、指定商品の具体的内容との関係において、その取引者・需要者が、どの程度注意深く商品を識別するかは、当該商品の出所の混同のおそれを判断する上で、考慮すべき1要素であり、例えば、
人の飲用、食用に供されるもの、あるいは反対に、人が飲用、食用をすると身体等に害を及ぼすものは、他の商品に比較して慎重に吟味して購入されるであろうことは明らかであって、原告引用の判例も、指定商品が人の口に入れるものか否かを考慮することを一般的に否定するものではない。したがって、この点に関する原告の主張も、これを採用する余地はない。
(3) 以上のとおりであるから、本件審決が、「本件商標と請求人の使用に係る商標「アスパラ」とは、前記したとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標として容易に看取、認識されるものというべきである。そうとすれば、請求人の使用に係る商標「アスパラ」の著名性、売上高、取引の実情等を考慮したとしても、人の口に入れる商品「滋養強壮変質剤」と、人の口に入れることのない商品「防虫剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」とが、たとえ、同一店舗において販売され得るとしても、それぞれの置き場も相違し、先ず充分に吟味して購入され、一般需要者等による誤認・混同可能性も低いと予測されることよりすれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、請求人の使用に係る「アスパラ」商標を連想、想起するとはいえないだけでなく、請求人又はそれと経済的あるいは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について誤認、混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。」(13頁)と判断したことに、誤りはない。
3 結論 以上のとおり、原告主張の取消事由にはいずれも理由がなく、その他本件審決にこれを取り消すべき瑕疵は認められない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 清水節
裁判官 上田卓哉
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