関連審決 |
不服2000-15521
審判1999-19978
不服2008-3199
無効2003-35195
異議1998-92040 審判1999-14416 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成21行ケ10102審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成20行ケ10442審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成20行ケ10439審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成21行ケ10031審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成21行ケ10021審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 出所表示機能 / 識別機能 / 指定商品 / 記述的商標(3条1項3号) / 3条1項6号 / 商品の同一性 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 4条1項11号 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 取引の実情 / 非類似 / |
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事件 |
平成
21年
(行ケ)
10022号
審決取消請求事件
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原告インターナショナルフランチャイズ ホールディング(ラブアン)リミテッド 訴訟代理人弁理士杉本ゆみ子 同 石田知美 同 鈴木智香子 被告特許庁長官 指定代理 人馬場秀敏 同 鈴木 修 同 酒井福造 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2009/08/27 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が不服2008-3199号事件について平成20年9月24日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
1本件は,原告が,下記商標(本願商標)について商標登録出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,特許庁から請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。 2争点は,本願商標が下記引用商標との関係で類似するか(商標法4条1項11号),である(下線は判決で付記)。 記(1) 本願商標・商標・指定商品第30類食品香料(精油のものを除く),茶,コーヒー及びココア,菓子「及びパン,トマトソース,ケチャップソース,ドレッシング,マヨネーズソース,マスタード,砂糖,はちみつ,糖蜜,食塩,その他の調味料,香辛料,穀物の加工品,サンドイッチ,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,調味済スパゲッティ,イーストパウダー,酵母,ベーキングパウダー,米,脱穀済み」のえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン(2) 引用商標・商標・指定商品第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」・出願年月日 平成16年11月16日・登録年月日 平成17年5月27日・登録 第4867330号・商標権者 株式会社アオキーズ・コーポレーション |
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当事者の主張
1 請求原因(1) 特許庁における手続の経緯原告は,平成18年5月2日,本願商標について商標登録出願(商願2006-40747号。以下「本願」という。)をしたが,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。 特許庁は,同請求を不服2008-3199号事件として審理した上,平成20年9月24日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年10月6日原告に送達された。 (2) 審決の内容審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願商標と引用商標とは,称呼を共通にする類似の商標であって,指定商品も同一又は類似であるから商標法4条1項11号に該当する,というものである。 (3) 審決の取消事由しかしながら,商標法4条1項11号に該当するとした審決は,以下に述べるとおり,誤りであるから,違法として取り消されるべきである。 ア本願商標のうち独立して自他商品の識別標識の機能を果たす部分の認定の誤り審決は,本願商標を構成する「ThePIZZACompany」の文字部分は,独立して自他商品の識別標識としての機能を果たしうるものというべきであると認定した。 しかし,?@本願商標においては,「The」「PIZZA」「Company」の語が三段に記されていること,?A本願商標を一見した際,最初に目に付く部分は,全体を二重横長楕円の枠で囲まれた部分であり,中でも他の文字よりも倍程度の大きさで記された「PIZZA」を中心とした皿様図形の上に乗った文字上段の「The」と文字下段の「PIZZA」の部分であること,?B皿様図形の皿の柄に相当しうる部分に記されている「Company」の部分と皿様図形の上に記されている「The」「PIZZA」の部分とは,黒文字か白文字かという色の相違,皿の上か表面かという位置の相違により,分離して認識するのが自然であることに照らすと,本願商標において,識別標識としての機能を果たすのは,「The」「PIZZA」の部分である。 したがって,商標全体からいずれかの部分を分離して看取するのであれば,「The」と「PIZZA」,そして「Company」部分とに分離して看取すべきものである。 イ引用商標の片仮名文字「ピザカンパニー」の部分については,独占権として他人の登録を排除する効力を認めるべきではなく,商標法4条1項11号適用の範囲外であること審決は,本願商標の「PIZZACompany」の文字に照応する引用商標の「PIZZACOMPANY」及び「ピザカンパニー」の文字が,特定の商品の品質等を表示する語として一般的に使用されているものとまではいい難い,と認定した。 しかし,引用商標は,片仮名文字で横一連に表記された「ピザカンパニー」と,デザイン化された特殊な態様による欧文字で横一連に表記された「PIZZACOMPANY」とを,上下2段に記載した態様からなるところ,「PIZZA」「COMPANY」の各語は中学生程度の英語力で理解できるものであり,引用商標が上段に示す片仮名文字「ピザカンパニー」はピザを売る店や会社という意味合いを直感させ,「ピザの製造会社,販売会社」という特定の観念が生ずることは否定できないから,指定商品「ピザ」との関係からは商品の品質等を表示するものとして商標法3条1項3号に該当し,あるいは需用者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標として商標法3条1項6号に該当する。 そうすると,引用商標の片仮名文字「ピザカンパニー」の部分は,識別力がないか若しくは僅少であるが,下段に示されたデザイン化された特殊な態様による文字と共に構成されていることをもって識別機能が認められ,商標登録がなされたものと思料される。そうであれば,片仮名文字「ピザカンパニー」の部分については,独占権として他人の登録を排除する効力を認めるべきではなく,商標法4条1項11号適用の埒外と解すべきである。 ウ 本願商標と引用商標とは「The」の有無により識別可能であること審決は,本願商標の「構成中の『The』の文字は,英語の定冠詞であるほか,『普通名詞の前に付いて,同類のものの中で特に代表的・典型的なものとして強調する語』(株式会社研究社新英和大辞典第6版)としても親しまれた語であることから,後に続く『PIZZACompany』の文字を,単に特定或いは強調するかのように使用されているものと認識されるにすぎず,また,『The』の文字を冠したことにより別異の意味合いを形成するに至ったものともいえないものである。さらに,『ThePIZZACompany』の文字全体から生ずる称呼はやや冗長であるといえる」(2頁29行〜37行)と認定した。 しかし,「The」の文字は,普通名詞の前に付くことで,そのものを限定,特定,或いはその全体,種別を総括して指称するといった意味,機能があり,定冠詞の有無以外は称呼が同じ商標が多数登録されている。 また,「Company」の語を含む商標が,指定商品が食品関係である第29類ないし第39類において多数登録されていることからすれば,「Company」の語の識別力は弱い。 さらに,本願商標が構成要素として含む「The」「PIZZA」「Company」の各言葉は,前記のとおり,それぞれが慣れ親しんだ英単語であり,三段に書かれた文字を「ザピザカンパニー」と一連に称呼したとしても全7音であり,冗長というほどのものではない。 以上からすれば,引用商標の「ピザカンパニー」と本願商標の「ザピザカンパニー」とは全体として音数も異なり,強調を示す語頭の定冠詞の有無といった,語調,語感も相違するため識別可能である。 エ 本願商標の称呼認定の誤り審決は,簡易迅速を尊ぶ商取引の場においては,「ThePIZZACompany」の文字中,「The」の文字部分を省略し「PIZZACompany」の文字部分に着目して,これより生ずる「ピザカンパニー」或いは「ピッツァカンパニー」の称呼をもって取引に資される場合も決して少なくないと認定した。 しかし,?@本願商標においては,前記のとおり,「The」と「PIZZA」の文字が目立つように記載され,あえて「The」の文字を外して称呼するまでもないこと,?A昨今の日本人,特にピザを好んで食するような若い人達の間では,「The」は独特の語感を有しており,「The○○」と称することで,言葉を際立たせ,特別な言葉として使用していること,?B「The」の文字が定冠詞であったとしても,省略せずに取引に資する場合が少なくないことに照らすと,本願商標が「ThePIZZA」と称され,商取引において識別機能及び出所表示機能を発揮することも十分に考えられる。 オ 本願商標と引用商標は外観非類似であること本願商標と引用商標の外観は,前記のとおりであって,明らかに非類似である。 そして,「花心」と「花神」(平成10年異議第92040号),「菜/サイ」と「彩」(平成11年審判第19978号),「ファイン/Fa印」と「ファイン/Fine」(不服2000-15521号),「龍」と「辰/SUNTORY」(平成11年審判第14416号),「NAS」と「NASU」(無効2003-35195号)のように,「称呼同一であっても外観非類似」として併存登録を認める審決例が複数あることに照らせば,本願商標と引用商標とは,非類似である。 カ 小括以上のとおり,本願商標と引用商標とは,称呼及び外観が非類似であり,構成も全く異にすることから,全体として非類似であり,本願商標は商標法4条1項11号に該当しない。 2 請求原因に対する認否請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実は認めるが,(3)(審決の取消事由)は争う。 3 被告の反論(1) 本願商標の認定ア 本願商標の外観本願商標は,二重の横長楕円形の内部に上から順に「The」の文字,「PIZZA」の文字,横長帯状図形内に白抜きで表された「Company」の文字を配置し,それらの下部に「“FlavouredtoExcite”」の文字及び記号を表してなるものである。そして,その構成中,二重の横長楕円形及びその内部の文字等は,二重の横長楕円形の存在により,また,大きさ及び位置関係からみて,「“FlavouredtoExcite”」の文字及び記号の部分とは視覚的に分離されて看取されるものである。さらに,「The」,「PIZZA」及び「Company」の文字は,ありふれた書体であって,特段デザイン化されているものでもないことから,本願商標の他の部分と分離して認識されるものである。そして,本願商標に接する看者にとって,その構成中,二重横長楕円形内部に存在する「The」,「PIZZA」及び「Company」の文字のうち,特に大きく,かつ,中央に表された「PIZZA」の文字部分が視覚的に最初に認識されるものであるところ,その二重の横長楕円形の内部において,宙に浮いたように表された「The」に比べ,「PIZZA」の文字が「Company」の文字を白抜きで表した横長帯状図形の上にあたかも皿の上に載せられたかのようにまとまりよく表されていることから,これらの文字部分を「The」の部分と「PIZZA」及び「Company」の部分の2つに分離して看取されることも十分にあり得るものである。 イ 本願商標の称呼本願商標の構成中,「“FlavouredtoExcite”」の文字及び記号の部分は,「FlavouredtoExcite」の文字部分が,「興奮させる味をつけた」程度の意味合いを理解させるものであり,本願の指定商品が食品であることからすれば,商品の品質等を表示したものとして理解されるものであるから,自他商品の識別標識として機能するものではない。 一方,二重の横長楕円形の内部に表示された「The」の文字,「PIZZA」の文字,及び横長帯状図形内に白抜きで表された「Company」の文字については,「The」の文字は英語の定冠詞として,「PIZZA」の文字はイタリア語を基とする語であって英語においても「ピザ,ピッツァ」の意味で普通に使用されている語として,「Company」の文字は「仲間,人の集まり,会社」の意味を有する英語として,それぞれ我が国においても親しまれているものである。そして,「PIZZA」の語は,「ピッツァ」又は「ピザ」という我が国において一般に親しまれた外来語であり,「ピッツァ」及び「ピザ」の語は同義語として扱われているから,「PIZZA」の文字部分は「ピッツァ」のほかに「ピザ」と称呼される場合も少なくない。また,「The」の文字部分は,その代表的語義が「その,例の,問題の」であるように,後に続く名詞中の特定のものを限定する機能を有する定冠詞であり,「強いて訳さなくてよい場合が多い」とされている(株式会社研究社新英和辞典第6版1856頁,乙4)ように,次に続く名詞に対する限定性ないし指示性の弱い語であり,「The」(the)の語が英語の初歩的な基本語として国民の間に広く浸透していることからすると,この文字部分が有する限定性は弱く,同部分の自他商品識別機能は薄弱であって,本願商標に接する取引者,需要者が,二重の横長楕円形の内部に表示された文字のうち「PIZZA」及び「Company」の文字部分のみに着目することは十分にあり得る。さらに,「PIZZA」及び「Company」の文字部分は,「The」の文字とともに常に一体不可分のものとして別異の意味合いを形成するに至ったものであるとの事実もない。 してみれば,本願商標は,「PIZZA」及び「Company」の文字部分に相応して,「ピザカンパニー」及び「ピッツァカンパニー」の称呼を生ずるものである。 ウ 本願商標の観念本願商標の「PIZZA」及び「Company」の各文字部分の意味が上記のとおりであり,特に「Company」の文字が多様な意味を有するものであることから,これらの中より特定の意味を抽出して結合した「ピザ仲間,ピザ会社」といった程度の意味合いを想起することはあるとしても,これらを一連にした明確な意味を有する熟語等が存在しているといえるものでもなく,特定の観念が生ずるとまではいえない。 (2) 引用商標の認定ア 引用商標の外観,称呼及び観念引用商標は,下半分を黒地に白抜きした「PIZZACOMPANY」の欧文字で表し,その中央部分である「・・・ACOMP・・・」の文字の上段に「ピザカンパニー」の片仮名文字を表してなるところ,下段の欧文字部分は装飾的に多少デザイン化されてはいるが普通に採択使用される範囲のものであって,「PIZZACOMPANY」の欧文字を表しているものと容易に看取できるものである。そして,「PIZZA」の文字が「ピザ,ピッツァ」を意味し,「COMPANY」の文字が「仲間,人の集まり,会社」の意味を有する語であることは,それぞれ前記のとおりであり,片仮名文字部分中の「ピザ」は「発酵させた小麦粉の生地を薄くのばし,トマトソースや野菜・魚介・チーズなどさまざまな具をのせ,焼いた食物。ピザパイ。ピッツァ。」(株式会社岩波書店広辞苑第6版,2351頁,乙8),「カンパニー」は「会社。商会。商社。コンパニー」の意味をそれぞれ有するものである(広辞苑第6版646頁,乙9)。そうすると,引用商標は,「PIZZACOMPANY」の欧文字部分に相応して「ピザカンパニー」及び「ピッツァカンパニー」の称呼を生ずるものであり,上段の「ピザカンパニー」の片仮名文字部分から「ピザカンパニー」の称呼を生ずるものである。 また,引用商標は,引用商標の各部分の意味が上記のとおりであることから,「ピザ仲間,ピザ会社」といった程度の意味合いを想起することはあるとしても,特定の観念が生ずるとまではいえない。 イ 引用商標中の「ピザカンパニー」部分の自他商品識別力原告は,引用商標の「ピザカンパニー」の部分には独占適応性を認めるべきでない旨主張する。しかし,引用商標に係る指定商品の各商品との関係からみて,「ピザカンパニー」の文字が全体として商品の品質等を表示するものとして認識されるようなものではない。引用商標の「ピザカンパニー」の部分は,それのみでも十分に自他商品の識別力を有しているものであり,独占適応性を認めるべきでないとする理由はない。 また,仮に,引用商標の「ピザカンパニー」の部分が商品「ピザ」との関係において識別力が弱いとしても,直ちにこの部分が自他商品の識別力を欠くものであるとする理由はない。本願の指定商品と同一又は類似の引用商標の指定商品は,「ピザ」のみではなく,「食品香料(精油のものを除く。)」をはじめその他多数の商品を含んでいるものであることから,引用商標が,下段に示すデザイン化された図形による識別機能が認められることで登録されたものであるということはできない。 (3) 本願商標と引用商標の類否ア原告は,本願商標と引用商標とは称呼,外観上非類似であり,構成も全く異にすることから,全体として非類似である旨主張する。 しかし,本願商標及び引用商標は,ともに文字のみによる構成態様ではないものの,図形若しくは記号の付加又はデザイン化の程度は,文字を主体として印象付けられる又は記憶される商標であることを凌駕する程のものではなく,両者はともに「ピザカンパニー」及び「ピッツァカンパニー」の称呼を生じるものである。そして,両者の観念については,「ピザ仲間,ピザ会社」といった程度の意味合いを想起することがあるとしても,特定の観念が生ずるとまではいえないものであり,比較することはできない。また,本願商標中の「PIZZA」及び「Company」の文字部分と引用商標中の「PIZZACOMPANY」の文字部分とは,デザイン化の有無や大文字と小文字の相違があるとしても,単語の綴りとして共通するものであり,外観において,近似した印象を与えるものである。 イ商標の類否の判断に当たっては,商標が使用される商品における取引者,需要者の通常有する注意力を基準として判断されるべきである。そして,本願商標の指定商品は,第30類に属する広範な商品を指定するものであり,そのすべてが引用商標の指定商品と同一又は類似するものであるところ,本願商標及び引用商標に係るそれらの商品のほとんどは,安価に購入され日常的に消費されるものであるから,その取引者,需要者が当該商標につき細心の注意を払うことを期待することはできない。また,簡易,迅速を尊ぶ取引の実際においては,電話を用いた口頭による取引を行う場合も少なくないこと,ラジオによるコマーシャル等のように専ら称呼による商品の宣伝広告が行われる場合があること,陳列棚に貼付された表示札や多数の商品とともに掲載された宣伝広告チラシなどに商品の名称としての称呼を片仮名文字により表示されることが一般に行われていることからすれば,上記の取引者,需要者が商品の同一性を識別するに際しては,商標から生ずる称呼が極めて重要な要素となるというべきである。したがって,本願商標と引用商標とは,観念について比較することができないところ,外観については,商標全体としての外観に差異があるとしても,「PIZZACompany」の文字部分と「PIZZACOMPANY」の文字部分において近似した印象を与えるものであり,称呼において「ピザカンパニー」及び「ピッツァカンパニー」の称呼を共通にするものであるから,本願商標は引用商標と類似する商標というべきであり,審決の認定に誤りはない。 (4) その他の原告の主張に対し原告は,引用商標中の「ピザカンパニー」の部分には独占適応性を認めるべきでない旨主張する。 しかし,引用商標に係る指定商品の各商品との関係からみて,「ピザカンパニー」の文字が全体として商品の品質等を表示するものとして認識されるようなものではない。引用商標中の「ピザカンパニー」の部分は,それのみでも十分に自他商品の識別力を有しているものであり,独占適応性を認めるべきでないとする理由はない。 |
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当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。 2 本願商標と引用商標の類否原告は,審決が本願商標と引用商標が類似するとした判断は誤りであると主張するので,以下この点について検討する。 (1)商標の類否は,対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。 そこで,以上の見地に立って,本願商標と引用商標の類否について判断する。 (2)ア 本願商標についての検討(ア) 外観a本願商標は,前記のように,二重の横長楕円形の内部に,上から順に「The」の文字,「PIZZA」の文字,皿様図形の皿外側部分に白抜きで表された「Company」の文字を配置し,二重横長楕円形の外側の下部に「“FlavouredtoExcite”」の文字及び記号を表してなるものである。 その構成中,二重の横長楕円形及びその内部の文字等は,二重の横長楕円形の存在,大きさ及び位置関係からみて,二重横長楕円形の外側下部の「“FlavouredtoExcite”」の文字及び記号の部分とは視覚的に分離して看取され,かつ,「“FlavouredtoExcite”」の文字等の部分よりも先に本願商標の要部をなすものとして認識されると認められる。 また,二重横長楕円形内部に存在する「The」,「PIZZA」及び「Company」の文字の中では,特に大きくかつ中央に表された「PIZZA」の文字部分が本願商標を見る者に最も強い印象を与える部分であると認められる。そして,「Company」の文字が皿様図形の皿外側部分に白抜きで表されているのに対し,「The」及び「PIZZA」の文字は黒い文字でかつ皿様図形の上に載っているように表されていることからすれば,「The」及び「PIZZA」の部分と「Company」の部分が分離して認識してされることもあり得ると考えられる。また,二重の横長楕円形の内部において,宙に浮いたように表された「The」に比べ,「PIZZA」の文字が側面に「Company」の文字を白抜きで表した皿の上に載せられたかのようにまとまりよく表されていると考えれば,これらの文字部分を「The」の部分と「PIZZA」及び「Company」の部分との2つに分離して看取することもにあり得ると考えられる。 bなお,原告は,「The」,「PIZZA」,「Company」の各文字部分は,「The」及び「PIZZA」と「Company」とに分けて認識されるのが自然であり,本願商標のうち自他商品の識別標識の機能を果たす部分は「The」及び「PIZZA」の部分であると主張する。しかし,二重の横長楕円形の内部において,宙に浮いたように表された「The」に比べ,「PIZZA」の文字が側面に「Company」の文字を白抜きで表した皿の上に載せられたかのようにまとまりよく表されていることを考えれば,これらの文字部分を「The」の部分と「PIZZA」及び「Company」との部分の2つに分離して看取することもにあり得ることは上記のとおりであるから,「The」及び「PIZZA」と「Company」とに分けて認識されることもあり得るとことをもって,上記の認定が覆るものではない。 (イ) 称呼a上記(ア)のとおり,二重の横長楕円形及びその内部の文字(ThePIZZACompany)等は,二重の横長楕円形の存在,大きさ及び位置関係からみて,二重横長楕円形の外側下部の「“FlavouredtoExcite”」の文字及び記号の部分とは視覚的に分離して看取され,かつ,それよりも先に本願商標の要部をなすものとして認識されると認められる。 bところで,「The」は英語の定冠詞である(新英和中辞典第6版,乙4)。また,「PIZZA」はイタリア語を基とする語であって,英語においても「ピザ,ピッツァ」意味する単語として使用されており(新英和辞典第6版,乙5),日本語においては,発酵させた小麦粉の生地を薄くのばし,トマトソースや野菜・魚介・チーズなどさまざまな具をのせて焼いた食物として,「ピザ」又は「ピッツァ」と発音される(広辞苑第6版,乙8)。 一方,「Company」は「仲間,人の集まり,会社」の意味を有する英語であり(新英和辞典第6版,乙6),日本語においては会社,商会及び商社を意味する語として「カンパニー」と発音される(広辞苑第6版,乙9)。 このように,「The」,「PIZZA」及び「Company」の語は,それぞれ上記の意味内容及び発音を有するものとして,英語に長けていない者も含め,広く一般に理解されている語である(乙5ないし9,弁論の全趣旨)。 c上記a,bによれば,本願商標は,「ザ・ピザカンパニー」又は「ザ・ピッツァカンパニー」の称呼が生じうる。 dまた,「The」の語は,その代表的語義が「その,例の,問題の」であり,後に続く名詞中の特定のものを限定する機能を有する定冠詞であり,「強いて訳さなくてよい場合が多い」とされている(新英和辞典第6版,乙4)こと,本願商標の二重の横長楕円形の内部において宙に浮いたように表された「The」に比べ,「PIZZA」の文字が,側面に「Company」の文字を白抜きで表した皿様図形の上にあたかも皿の上に載せられたかのようにまとまりよく表されていると考えれば,これらの文字部分を「The」の部分と「PIZZA」及び「Company」との部分の2つに分離して看取することもあり得ることに照らすと,「ピザカンパニー」又は「ピッツァカンパニー」の称呼も生じうると考えられる。 eさらに,前記のとおり,「Company」の文字が皿様図形の皿外側部分に白抜きで表されているのに対し,「The」及び「PIZZA」の文字は黒い文字でかつ皿様図形の上に載っているように表されていることからすれば,「The」及び「PIZZA」の部分と「Company」との部分が分離して認識してされることもあり得ると考えられ,そうすると,「ザ・ピザ」又は「ザ・ピッツァ」の称呼も生じうると考えられる。のみならず,本願商標中,特に大きくかつ中央に表された「PIZZA」の文字部分が,本願商標を見るものに最も強い印象を与える部分であると認められることを考えると,「ピザ」又は「ピッツァ」の称呼も生じうると考えられる。 fなお,原告は,本願商標のうち自他商品の識別標識の機能を果たす部分は「The」と「PIZZA」の文字部分であり,かつ,あえて「The」の文字を外して称呼するまでもないなどと主張する。 しかし,「The」の語は,その代表的語義が前記のとおり「その,例の,問題の」というものであって,後に続く名詞中の特定のものを限定する機能を有する定冠詞であり,強いて訳さなくてよい場合が多いとされていること,本願商標の二重横長楕円形内の文字部分は,「The」の部分と「PIZZA」及び「Company」との部分の2つに分離して看取することもできることは前記のとおりであるから,「The」の語を外して称することがないということはできず,原告の上記主張は理由がない。 (ウ) 観念「The」,「PIZZA」及び「Company」の各語の意味内容が前記のとおりであること,本願の商標から生じうる称呼を併せ考えると,本願商標からは「ピザを製造,販売する会社」,「ピザ仲間」といった観念が生じうる。 イ 引用商標についての検討(ア) 外観引用商標は,前記のとおり,下半分を黒地に白抜きした「PIZZACOMPANY」の大文字アルファベットで表し,その中央部分である「・・・ACOMP・・・」の文字の上段に「ピザカンパニー」の片仮名文字を表してなる。 (イ) 称呼その外観からすれば,「PIZZACOMPANY」のアルファベット部分に相応して「ピザカンパニー」及び「ピッツァカンパニー」の称呼を生じ,上段の「ピザカンパニー」の片仮名文字部分から「ピザカンパニー」の称呼を生じる。 (ウ) 引用商標の観念「PIZZA」及び「Company」(引用商標では「COMPANY」)の各語の意味内容が前記のとおりであることからすると,引用商標からは,「ピザを製造,販売する会社」,「ピザ仲間」といった観念が生じうる。 ウ 本願商標と引用商標の類否についての検討(ア)上記ア,イの検討をもとに本願商標と引用商標を対比して判断すると,いずれも「ピザカンパニー」又は「ピッツァカンパニー」の称呼を生じうる点,「ピザを製造,販売する会社」,「ピザ仲間」といった観念が生じうる点で共通する。また,デザイン化の有無や大文字・小文字の相違があるにせよ,いずれも「PIZZA」及び「Company」(引用商標では「COMPANY」)というアルファベット文字による同一の単語を含んでいることに照らすと,両商標は外観上,近似した印象を与えるものといえる。このように,称呼及び観念で共通するものがあり,かつ外観上も近似した印象を与えることからすると,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるものとして本願商標は引用商標に類似するというべきであり,これと同旨の審決の判断に誤りはない。 (イ) 原告の主張に対する補足的判断a原告は,本願商標の称呼「ザピザカンパニー」と引用商標の称呼「ピザカンパニー」とは全体として音数も異なり,強調を示す語頭の定冠詞の有無といった,語調,語感も相違するため識別可能であると主張する。 しかし,「ザ」の部分は英語の定冠詞「The」であり,「The」の語を外して称することがないということはできないことは前記のとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。 bまた,原告は,引用商標のうち片仮名文字「ピザカンパニー」の部分が指定商品「ピザ」との関係で商品の品質等を表示するものとして商標法3条1項3号に該当するか,あるいは需用者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標として商標法3条1項6号に該当するものであり,また,「ピザの製造会社,販売会社」の観念を想起させるものとして識別力がないか若しくは僅少であるから,独占権として他人の登録を排除する効力を認めるべきではなく,商標法4条1項11号適用の範囲外であると主張する。 しかし,前記のとおり指定商品として「ピザ」が指定されているのであるから,引用商標のうち片仮名文字「ピザカンパニー」の部分が単に商品の品質等を表示したものということはできない。 また,引用商標のうち片仮名文字「ピザカンパニー」の部分が「ピザの製造。販売会社」を意味するものとして,ピザの特定の製造業者や販売者を想起させるものではないことに照らすと,引用商標中の片仮名文字「ピザカンパニー」の部分は商品「ピザ」との関係において,自他商品を識別する力は強くないとはいうことができるものの,本願商標と引用商標との類否の判断は,引用商標の一部分である片仮名文字「ピザカンパニー」の部分のみでなく,その全体を本願商標と対比して行うものであるから,引用商標中の片仮名文字「ピザカンパニー」の部分の商品識別力が強くないからといって,本願商標と引用商標が類似するとした上記判断が覆るものではない。 原告の上記主張は独自の見解に基づくものであって,採用することができない。 3 結語以上によれば,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消理由は理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 中野哲弘 |
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裁判官 | 今井弘晃 |
裁判官 | 真辺朋子 |