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関連審決 審判1989-17083
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成12行ケ231審決取消請求事件 判例 商標
平成14行ケ165審決取消請求事件 判例 商標
平成18行ケ10525審決取消請求事件 判例 商標
平成16行ケ56審決取消請求事件 判例 商標
平成4行ケ132 判例 商標
関連ワード 識別力 /  指定商品 /  権利能力 /  著名な略称 /  4条1項8号 /  称呼(称呼類似) /  使用義務 /  共有 /  他人の名称 /  社団法人 /  継続 /  商号 / 
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事件 平成 8年 (行ケ) 225号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1998/01/14
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が、平成1年審判第17083号事件について、平成8年8月27日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた判決
1 原告 主文と同旨2 被告 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は、「FREEFRAME」の欧文字を横書きしてなり、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表による第7類「建築又は構築専用材料 セメント 木材 石材 ガラス」を指定商品として、昭和61年5月16日に登録出願、平成元年2月21日に設定登録された登録第2116633号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。
原告は、平成元年10月17日、被告を被請求人として、本件商標につき登録無効の審判の請求をした。
特許庁は、同請求を平成1年審判第17083号事件として審理したうえ、平成8年8月27日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年9月11日、原告に送達された。
2 審決の理由 審決は、別添審決書写し記載のとおり、本件商標は、構成文字に相応して「フリーフレーム」の称呼を生ずるものであるが、法人格を有しない団体は商標法4条1項8号にいう「他人」には当たらないから、法人格のない社団である原告の名称は同号にいう「他人の名称」に当たるということはできず、また、「フリーフレーム」の部分が原告の名称の略称に当たるとしても、同じ理由により同号の「他人の略称」に当たるとはいえず、さらに、当該「フリーフレーム」が、本件商標の登録出願日である昭和61年5月16日において、原告の略称として著名であったことを認めるに足りる証左も見出せないから、本件商標は同号の規定に違反して登録されたものとはいえず、同法46条1項の規定によりその登録を無効とすることはできないとした。
原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由のうち、本件商標の認定及び本件商標が「フリーフレーム」の称呼を生ずること、原告が法人格のない社団であることは認める。本件商標が、その登録出願時において、原告の名称又は原告の著名な略称を含むものに該当しないとの判断は争う。
審決は、法人格のない社団が商標法4条1項8号にいう「他人」に当たらないとの誤った解釈をし(取消事由1)、さらに、事実認定を誤って「フリーフレーム」が本件商標の登録出願日において、原告の略称として著名であったことを認めるに足りないとした(取消事由2)結果、本件商標が同号の規定に違反して登録されたものとはいえないとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されなければならない。
1 取消事由1(規定の解釈の誤り) 審決は、「商標法第4条第1項第8号が、自然人及び法人の氏名、名称等の保護、すなわち人格権を保護することを目的とする規定であると解すべきものである以上、法人格(権利能力)を有しない団体は、本号にいう『他人』には当たらないといわざるを得ないから、結局、請求人の名称は本号にいう『他人の名称』には当たらない。さらに、・・・『フリーフレーム』の部分が前記名称にとって略称に当たることがあるとしても、上記の理由により、同号の『他人の略称』に当たるとはいえない。」(審決書22頁11行〜23頁2行)と判断したが、誤りである。
商標法4条1項8号が人格権を保護することを目的とする規定であるとする審決の見解(審決書22頁11〜14行)を前提としても、法人格のない社団は、それ自身独立の社会的存在を有し活動する団体であるのであるから、保護されるべき人格的利益を有するものと解すべきであり、このことは今日、学説の共通の理解となっている。また、社会的に独立した活動を営みながら、現行法の下では法人格を取得する途がないために非法人に止まっている公益に関しない非営利団体に、中間法人として法人格を付与することの必要性は早くから指摘され、関係官庁において制度の具体的検討の段階にあるほか、現行法の下でも、課税、訴訟等の関係では法人と同様の取扱いを受けている。
このような実情を勘案すれば、ある団体が同号の「他人」に該当するかどうかは、当該団体に法人格があるかどうかという基準で判断すべきではなく、団体が、
個々の構成員から独立した社会的存在としての実体を備えているかどうかの実態に即して判断すべきであり、その実体を備えていれば、法人格の有無にかかわらず、
同号にいう「他人」に当たるものと解すべきである。
規定の沿革をみても、商標法(明治42年法律第25号による改正後の明治32年法律第38号)2条8号は、「他人ノ肖像、氏名、商号又ハ法人若シクハ組合ノ名称ヲ有スルモノ」を不登録事由とし、名称の保護を受けるものを法人に限っていなかったのであり、商標法(大正10年法律第99号)2条1項5号は、この規定を、「他人ノ肖像、氏名、名称又ハ商号ヲ有スルモノ」(同法)と改正したが、その趣旨において変更はなく、同規定を承継した現行商標法(昭和34年法律第127号)4条1項8号においても同じである。したがって、同号にいう「他人の名称・・・若しくはこれらの著名な略称」の「他人」を法人格を有するものに限定する理由はなく、法人格のない社団も、これに含まれるものと解すべきである。
そして、原告は、後記のとおり、長年にわたるフリーフレーム工法の普及活動によって土木工事業界において一定の地位を占め、信用を獲得してきた団体であるから、その名称の略称である「フリーフレーム」が被告の商標に使用されることによって被る不利益は甚大であり、その略称について保護を受けるべき人格的利益を有することは明らかであって、同号の「他人」に当たるというべきである。
2 取消事由2(略称の著名性の誤認) 審決は、「提出に係る証拠によっては、当該『フリーフレーム』が、遅くとも本件商標の登録出願日である昭和61年5月16日において、請求人の略称として著名であったと認めるに足りる証左は見いだせない。」(審決書23頁3〜7行)というが、誤りである。
(1) 原告は、後記のとおり、フリー工業株式会社の代表取締役【A】(以下「【A】」という。)が開発した新しい法面工法であるフリーフレーム工法の普及と技術の向上等を目的とし、フリーフレーム工法を施工する法面工事施工業者及び工事用部材の供給業者が構成員となって、昭和51年1月に設立された非営利団体であり、その名称は、フリーフレーム工法に因んで付けられた。原告の会員は、設立当初は10社であったが、昭和62年4月時点では吹付法枠工の大手業者のほとんどを含む40数社となっている。
原告は、その設立当初から、フリーフレーム工法を普及させるべく、土木建築関係の主だった新聞、雑誌等に定期的に広告を掲載しているほか、フリーフレーム工法の解説書や会員各社の営業活動に使用するための統一カタログ等を発行し、技術講習会や写真コンテストなどを開催し、また、フリーフレーム工法による法面工事に関する種々の問題、技術的事項につき関係官庁と連絡折衝するための窓口となっている。さらに、原告は、その会員によって施工される法面工事の品質の維持のため、技術委員会を設けて種々の技術的問題の検討や会員への技術指導を行っており、また、原告の会員は同一規格の型枠材を使用してフリーフレーム工法の施工を行っている。
原告のこのような活動と会員の営業活動とにより、フリーフレーム工法は、昭和50年代の後半には法面工事分野において群を抜く施工実績を誇るようになり、遅くとも本件商標の出願時である昭和61年5月16日当時、法面工事に関連した業界及び発注者の間で、フリーフレーム工法とその推進団体である原告の名称を知らないものはなかった。
すなわち、原告の名称はフリーフレーム工法と一体のものとして業界によく知られており、その一部をなす「フリーフレーム」を見聞きした者は、フリーフレーム工法とともに原告を想起するものであるから、「フリーフレーム」は、原告の名称の略称として充分な著名性を備えているものである。
(2) 被告は、被告代表者である【B】(以下「【B】」という。)がフリーフレーム工法を発明し、その命名をしたと主張するが、事実に反する。
フリーフレーム工法は、原告の設立発起人の1社であるフリー工業株式会社の代表取締役である【A】が発明し、昭和50年に岡部株式会社の協力を得て実用化した工法であり、フリーフレーム工法との名称も【A】が命名したものである。
【B】は当時大成建設株式会社の技術研究所に勤務する技術者であり、【A】を岡部株式会社に紹介する労をとったが、フリーフレーム工法の着想、工法に使用する型枠材の開発、試験の施工その他一連の開発過程には、何ら関与していない。
【B】が、【A】とともにフリーフレーム工法の特許権の共有名義人となったことは認めるが、これは、【B】が【A】に特許出願するよう助言した際に自己を共同出願人に加えるよう要求し、【A】も、土木工事業界有数の大手企業である大成建設株式会社とのつながりを得れば、自己の発明したフリーフレーム工法が業界で認められるという思惑から、それに同意したことによるものである。
また、【B】が、厳密な契約に基づき、フリーフレーム工法及びその名称を管理してきたとの被告主張も事実に反する。【B】は、原告の設立当初から平成元年3月に辞任するまで原告の理事長であり、この間のフリーフレーム工法の実施に係る契約関係は、フリー工業株式会社(昭和55年10月以降は岡部株式会社)が特許権者である【A】及び【B】から実施許諾を受け、原告の会員各社に再実施許諾を与えるという形式で行われたが、実質は、【A】が、自己の経営するフリー工業株式会社や岡部株式会社を通じて原告の会員各社に実施許諾を付与していたものであり、【B】は特許権の共有名義人であったことから実施料収入の分配を受けていたにすぎない。また、昭和55年10月以降、実施許諾契約に「フリーフレーム工法」との名称の使用義務が盛り込まれたが、それまでは、「フリーフレーム工法」及び「フリーフレーム」との名称は契約関係による規律を受けることなく、事実上使用されていたものであり、いずれにせよ、【B】がその名称を管理していたという事実は存在しない。
被告の反論の要点
審決の認定判断は正当であって、原告主張の審決取消事由は理由がない。
1 取消事由1について 原告が法人格のない社団であることは認める。
法人格のない社団は、公益又は営利を目的としないため、社会的な機能や役割が自然人や法人とは全く異なるのであり、それ故、法は、法人と区別して、訴訟等ごく一部に限って能力を認めるにすぎず、商標法77条2項が準用する特許法6条においても、法人格のない社団が行いうる手続を限定的に列挙するに止まっている。
例えば、商標法16条の4第1項(平成8年法律第68号による削除前のもの、以下同じ。)は「出願公告があったときは、何人も・・・登録異議の申立てをすることができる。」と定めるが、法人格のない社団は、商標法77条2項が準用する特許法6条1項2号に基づいて始めて登録異議の申立てができるのであるから、商標法16条の4第1項の「何人」には含まれていない。このように、商標法は、自然人及び法人と法人格のない団体とを明確に区別しており、同法でいう「人」が自然人及び法人を指すことが明らかである。したがって、同法4条1項8号にいう「他人」も自然人及び法人を指し、法人格のない団体が含まれないと解することは、商標法の解釈上当然のことである。
仮に、法人格のない社団が無制限に同号にいう「他人」に含まれると解するならば、浮動的に生成、消滅する無数の任意団体の存在によって、正当な商標登録出願がことごとく拒絶されることになり、このような事態は、法人格のない任意団体によって、法人格を有する出願人の商標選択の余地を狭めるという本末転倒の結果を生じさせることになる。
原告は、「工法技術の向上と会員相互の協調、親睦」を目的として設立された土木工事施工業者の任意団体であり、被告の商標登録を無効としてまで保護すべき法益を有するものではない。
2 取消事由2について フリーフレーム工法が新しい法面工法であること、原告が昭和51年1月に設立されたことは認める。
「フリーフレーム」が原告の名称の略称として著名であったとするためには、原告が「フリーフレーム」という呼称を独占的排他的に使用してきた等の事情により、「フリーフレーム」という表示が直ちに原告の名称の略称であると認識されるという事情になければならないが、そのような主張立証は存在しない。
のみならず、フリーフレーム工法は、昭和58年まで大成建設株式会社の技術者であって、現在は被告代表者である【B】が発明した工法であり、フリーフレーム工法との名称も【B】が命名したものである。【B】は、昭和51年1月、原告の設立と同時にその理事長に就任し、以後約12年間にわたってフリーフレーム工法の発展に尽くすとともに、原告の活動とは別に独自の立場で、著書等によりフリーフレーム工法の紹介、普及に務めてきたが、その一方で、【A】との共有名義でフリーフレーム工法の特許権を取得し、原告の会員との間でその特許権につき実施許諾契約を締結するに当たり、「フリーフレーム工法」との名称の使用を義務付けるなど、フリーフレーム工法の発明者、命名者として、厳密な契約に基づき、工法及び名称を管理してきた。原告は、【B】がその理事長に在任中から、フリーフレームとの名称を【B】から独立して使用できたわけではなく、独占的に使用できる立場にあったわけでもない。フリーフレーム工法を実施する工事業者は、【B】らとの実施許諾契約を通じて同工法や名称を使用していること、また、同工法と名称に関する権利が原告に帰属するものでないことを熟知していた。
このような事情であるから、法面工事に関連した業界及び発注者の間にフリーフレームとの名称が浸透していたとしても、それは、【B】を発明者、特許権者とする工法の名称として浸透していたものであり、フリーフレームという表示が直ちに原告の名称の略称であるものと認識されることはなかった。
【B】は、昭和58年から被告に勤務していたが、平成元年に原告の運営方針等をめぐる意見の食い違いから原告理事長を辞任し、その後は、【A】及び岡部株式会社が実質上原告の運営に当たっている。【B】と【A】とは、【B】が原告理事長を辞任する際に、フリーフレーム工法に関する特許権について、【B】が被告に、【A】が岡部株式会社にそれぞれ実施許諾することができる旨の合意をし、事後、フリーフレーム工法は、岡部株式会社から再実施許諾を受けた原告の各会員と、被告から再実施許諾を受けた斜面安定協会の会員との2グループにおいて実施されている。このことからしても、フリーフレームとの名称が原告や原告の会員が独占して使用していたものではなく、被告や斜面安定協会の会員においても使用することができたことが明らかであって、原告の名称の略称として著名であるといえるものではない。
したがって、「フリーフレーム」が原告の略称として著名であったと認めるに足りる証左は見いだせないとした審決の判断は正当である。
当裁判所の判断
1 取消事由1(規定の解釈の誤り)について 原告が法人格のない社団であることは当事者間に争いがない。
法人格のない社団は、法人格を有しない故に一定の範囲で権利主体となることに制限があるとはいえ、個々の構成員とは別個に独立して存在し、社会において一定の地位を占めるものであるから、その実質的な社会的地位に伴う名誉、信用等の人格権的利益を享有しうるものであることは、社団法人の場合と変わりがなく、そのような利益のうちには、自己の名称等が他人によってみだりに使用されない利益をも含むものというべきである。
そして、商標法4条1項8号(以下「本号」という。)が「他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標」について商標登録を受けることができないとした趣旨は、当該「他人」の「氏名若しくは名称・・・若しくはこれらの著名な略称」に対する人格権的利益を保護することを主たる目的とするものであることは、本号かっこ書に「(その他人の承諾を得ているものを除く。)」と規定されていることから明らかである。
そうすると、法人格のない社団が一定の範囲で商標法上の権利の主体となりえないものとされているとしても、同法が、一般私法上の人格権的利益の保護を主たる目的とする本号から、法人格のない社団を除外している、すなわち、本号にいう「他人」に法人格のない社団は含まれない、と解する理由はなく、その名称又はその著名な略称を含む商標は、本号によって商標登録を受けることができないものと解すべきである。
このように法人格のない社団が本号の「他人」に含まれると解しても、社団性の乏しい団体は、ここでいう「法人格のない社団」に該当しないわけであるから、被告主張のように浮動的に生成、消滅する無数の任意団体の存在によって正当な商標登録出願が妨げられるおそれがあるということはできない。
したがって、審決が、原告が法人格のない社団であることから直ちに、原告の名称の略称が本号にいう「他人」の略称に当たらないとしたことは誤りであるといわなければならない。
2 取消事由2(略称の著名性の誤認)について(1) 原告が昭和51年1月に設立されたこと、当時、【B】が大成建設株式会社に勤務する技術者であり、原告の設立当初から平成元年まで原告の理事長であったこと、フリーフレーム工法が新しい法面工法であり、【B】と【A】がその特許権の共有名義人であることは当事者間に争いがない。
この事実に、【B】及び【A】とフリー工業株式会社との昭和50年10月22日付契約書(乙第1号証)、同人らとムサシ建設工業株式会社との同年12月18日付契約書(乙第3号証)、同人らと岡部株式会社との昭和55年10月17日付契約書(乙第4号証)、同人らと大成建設株式会社との昭和50年12月15日付確認書(甲第53号証の2)、フリー工業株式会社とライト工業株式会社との同月23日付契約書及び覚書(乙第2号証)、フリーフレーム協会会則及び会員と題する書面(甲第4号証)、フリーフレーム協会第一回総会議事録(甲第5号証)、
【A】作成の陳述書(甲第51号証、弁論の全趣旨によって成立の真正が認められる。)、【C】作成の陳述書(甲第52号証、弁論の全趣旨によって成立の真正が認められる。)、【B】作成の報告書(乙第11号証)並びに弁論の全趣旨を併せ考えれば、上記の【B】と【A】を共有名義人とする特許権とは、特願昭50―20177号出願ほかの昭和50年中の共同出願に係る数件の特許出願中の権利のことであること、昭和50年10〜12月の間に、【B】と【A】は、上記出願中の権利について、フリーフレーム工法の開発当時から昭和58年ころまで【B】が技術者として在籍(技術研究所)していた大成建設株式会社及び同開発当時に【A】が在籍していたムサシ建設工業株式会社に対し直接に実施権の許諾をしたほかは、
【A】が昭和50年6月に設立し代表取締役を務めるフリー工業株式会社に対し再実施許諾権付の実施権を付与し、フリー工業株式会社がさらにライト工業株式会社ほかの法面工事施工業者に再実施許諾をしたこと、また、その頃から原告を設立する準備が進められ、昭和51年1月26日開催の第1回総会によって、大成建設株式会社、フリー工業株式会社、ライト工業株式会社、ムサシ建設工業株式会社、岡部株式会社等10社を会員として原告が設立され、理事長に【B】が、事務局長に【A】が選出されたこと、原告の設立時の会則(甲第4号証)において、原告は、
「フリーフレーム工法の技術の普及向上および会員の地位の安定と発展に寄与することを目的」(2条)とし、「事務局はフリー工業株式会社に置く」(3条)こと、正会員は「フリーフレーム工法の専用実施権者及び再実施権者とする」(4条1項)こととされ、「フリーフレーム工法の再実施権所有を解除された場合」(7条1項)等に会員資格を失う旨が定められたこと、昭和55年10月に、【A】と【B】から再実施許諾権付の実施権を付与され、各法面工事施工業者に再実施許諾をする契約上の地位を占める業者がフリー工業株式会社から岡部株式会社に代わり、同時に、原告の事務局長も【A】から岡部株式会社に所属する【C】に交代したこと、以上の事実を認めることができる。
また、財団法人建設物価調査会作成の報告書(甲第7号証)、雑誌「建設物価」昭和51年3月号、同昭和57年1月臨時増刊号、同昭和63年1月号(甲第8〜第10号証)、「建設物価 建設資材要覧 昭和58年度版」(甲第11号証)、
株式会社建設工業調査会作成の報告書(甲第12号証)、昭和57年3月発行の「ベース設計資料」(甲第13号証)、財団法人経済調査会作成の報告書(甲第14号証)、雑誌「積算資料」昭和62年7月号(甲第15号証)、昭和56年9月発行の雑誌「地すべり技術」第23号(甲第17号証)、昭和56年10月発行の雑誌「月刊ダム日本」444号(甲第18号証)、昭和56年3月発行の雑誌「緑化工技術」7巻3号(甲第19号証)、雑誌「土木施工」昭和56年11月号(甲第20号証)、昭和58年8月発行の雑誌「基礎工」11巻9号(甲第21号証)、昭和59年7月発行の雑誌「砂防と治水」46号(甲第22号証)、【D】作成の報告書(甲第23号証)、原告発行のフリーフレーム工法のカタログ(甲第24〜第26号証)、原告発行のフリーフレーム工法の見積設計資料(甲第28、
第29号証)、原告発行のフリーフレーム工法の見積参考資料(甲第30号証)、
原告発行のフリーフレーム工法の技術資料(甲第32号証)、昭和58年8月発行の原告編著「フリーフレーム工法 ―設計・施工指針―」(甲第34号証)、理工図書株式会社作成の報告書(甲第35号証)、平成元年4月28日付日刊建設工業新聞(甲第41号証)、平成3年5月24日発行の雑誌「日経コンストラクション」(甲第43号証)、昭和59年8月3日付「フリーフレーム工法講習会開催」と題する書面(甲第48号証の3)、「法面工法の講習会について」と題する書面(甲第49号証の2)及び【C】作成の陳述書(前掲甲第52号証)によれば、原告は、設立以降、【B】が理事長を辞任した年である平成元年までの間に限っても、「建設物価」、「積算資料」等の業界誌、日刊建設工業新聞等の業界紙その他当業界向け出版物に、年数回ないしそれ以上、原告の名称と各会員会社(大成建設株式会社を除く。)名とを表示したフリーフレーム工法の広告を掲載し、同工法のカタログやその施工に関する各種技術資料の作成、書籍の編著を行い、また自ら同工法の講習会を開催し、あるいは依頼を受けて地方自治体の開催する講習会に講師を派遣するなど、全国的規模にわたるフリーフレーム工法の宣伝広告に関する活動を継続して行ってきたこと、そして、同工法の施工実績は、昭和60年に118万平方メートル、昭和61年に161万平方メートル、昭和62年に198万平方メートル、昭和63年に212万平方メートル、平成元年には243万平方メートルに達し、これは右各年とも、法面保護壁による土留め・斜面安定工法の実績としては群を抜き、他を圧倒するものであったこと、以上の事実を認めることができる。
(2) ところで、「フリーフレーム」の語は、原告の名称の「フリーフレーム協会」から団体の性質を表す「協会」の部分を省いたものであるから、原告の名称の略称に当たるものと認められる。
そして、前示認定の原告設立時前後の状況に照らすと、原告が、フリーフレーム工法に関する特許出願中の権利につき、共同出願人の【A】及び【B】から実施権又は再実施権を取得して同工法を実施しようとする法面工事施工業者の全員を会員として設立されたいわゆる業界団体であることが認められ、また、前示認定の原告による普及宣伝活動の状況及びフリーフレーム工法の著しい普及状況に照らし、さらに、「フリーフレーム」の語が、原告の名称に関しても、またフリーフレーム工法との工法名に関しても、それぞれの識別力を有する部分の全部から成ることを併せ考えると、遅くとも昭和61年5月16日の本件商標の登録出願時までには、
「フリーフレーム」の語は、全国的規模にわたる当業者及び法面工事の需要者間において、フリーフレーム工法の略称として著名であったとともに、同工法を実施している法面工事施工業者からなる業界団体である原告の名称の略称としても著名となっていたことが認められる。
(3) 被告は、フリーフレーム工法は、【B】が発明し、命名したものであり、
【B】は、原告の会員との間で実施許諾契約を締結するに当たり、「フリーフレーム工法」との名称の使用を義務付けるなど、フリーフレーム工法の発明者、命名者として、厳密な契約に基づき、工法及び名称を管理してきたと主張するが、特許出願が【A】及び【B】の共有名義でなされている同工法の実際の発明者、命名者が【A】と【B】のいずれであるかはともかく、【B】のみが、フリーフレーム工法の発明者、命名者として、厳密な契約に基づき、工法及び名称を管理してきたとの事実を認めるに足りる証拠はない。
すなわち、本件において証拠として提出された出願中の権利についての(再)実施許諾契約に関する契約書等のうちで、被告の主張するような「フリーフレーム工法」との名称の使用を義務付ける条項があるのは、昭和55年10月17日付の岡部株式会社との契約書(乙第4号証)のみであって、昭和50年中に締結された前示【A】及び【B】とフリー工業株式会社との契約書(乙第1号証)、同人らとムサシ建設工業株式会社との契約書(乙第3号証)、同人らと大成建設株式会社との確認書(甲第53号証の2)、フリー工業株式会社とライト工業株式会社との契約書及び覚書(乙第2号証)には、そのような条項は見当たらない。また、前示岡部株式会社との契約書にしても、権利者である【A】及び【B】が共同で岡部株式会社と締結したものであるから、これをもって、【B】のみがフリーフレーム工法及びその名称を管理してきたとの事実を認めるに足りるものともいえない。
のみならず、前示のとおり、原告の設立までの間に、出願中の権利につき各法面工事施工業者に対してなされた実施許諾は、フリーフレーム工法の開発当時【B】が在籍していた大成建設株式会社及び【A】が在籍していたムサシ建設工業株式会社に対するものを除いて、【A】が昭和50年6月に設立し代表取締役を務めるフリー工業株式会社を通じた再実施許諾の形式によってなされているところ、このことは、設立当初の原告の理事長に当時大成建設株式会社技術研究所に技術者として在籍していた【B】が、事務局長にフリー工業株式会社代表取締役の【A】が各就任し、事務局が同会社に置かれたことと相俟って、業界団体として設立された原告の当初の実質的な運営は、フリー工業株式会社又はその代表取締役である【A】が掌理しており、各法面工事施工業者に対し付与する実施権の管理も同様にフリー工業株式会社又は【A】が当たっていたことを窺わせるものということができる。昭和55年10月に、各法面工事施工業者に再実施許諾をする契約上の地位を占める業者がフリー工業株式会社から岡部株式会社に代わり、同時に原告の事務局長が【A】から岡部株式会社に所属する【C】に交代したことも前示のとおりであるが、この事実も、【B】のみがフリーフレーム工法及びその名称を管理していたとの被告主張に反するものということができる。
以上の事実によれば、【B】個人が、原告の理事長としての職務と離れて、フリーフレーム工法及びその名称を管理してきたとの事実を認めることはできないから、原告がフリーフレームとの名称を【B】から独立して使用できたわけではないなどとする被告の主張も、これを肯認することはできないものといわなければならない。
(4) 被告は、さらに、【B】と【A】とは、【B】が原告理事長を辞任する際に、フリーフレーム工法に関する特許権について、【B】が被告に、【A】が岡部株式会社にそれぞれ実施許諾することができる旨の合意をし、事後、フリーフレーム工法は、岡部株式会社から再実施許諾を受けた原告の各会員と、被告から再実施許諾を受けた斜面安定協会の会員との2グループにおいて実施されているから、フリーフレームとの名称は、原告や原告の会員だけでなく、被告や斜面安定協会の会員においても使用することができたもので、原告の名称の略称として著名であるとはいえないと主張する。
しかしながら、本号及び平成6年法律第116号による改正前の商標法4条3項の規定によれば、他人の名称著名な略称を含む商標であるとして、本号に基づき商標登録出願を拒絶する場合には、その商標登録出願時及び拒絶の判断時(拒絶査定時又は拒絶査定に対し不服の審判請求のあった場合には、その審決時若しくはその審決に対する取消訴訟の口頭弁論終結時)の両時点において、その略称が著名であることを必要とするものとされていることに鑑みて、登録商標が他人の名称著名な略称を含む商標であって本号に該当することを理由として、その登録無効の審判の請求をする場合においては、その商標の商標登録出願時及び登録査定時において該略称が著名であったことをいう必要があるが、著名である時点としてはそれで足るものと解さなければならない。
そして、前示のとおり、本件商標は平成元年2月21日に設定登録されたことは当事者間に争いがないから、それ以前に登録査定がなされていることは明白であるところ、【C】作成の陳述書(前掲甲第52号証)及び【B】作成の報告書(乙第11号証)によれば、【B】が原告の理事長を辞任し、【A】との間で確認書を取り交わして被告主張の合意をしたのは同年3月であることが認められるから、それ以降に被告や斜面安定協会の会員においても「フリーフレーム」との名称を使用したことにより、仮に「フリーフレーム」の名称が原告の名称の略称として著名でなくなったとしても、それ自体は本件商標が本号に該当することを左右する事由には当たらず、被告の上記主張も失当である。
(5) 以上によれば、審決が、「当該『フリーフレーム』が、遅くとも本件商標の登録出願日である昭和61年5月16日において、請求人の略称として著名であったと認めるに足りる証左は見いだせない。」とした判断は誤りであるといわなければならない。
3 よって、原告の請求は理由があるから認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 牧野利秋
裁判官 石原直樹
裁判官 清水節
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