審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
---|---|---|
平成10ワ9655商標法違反差止等請求事件 | 判例 | 商標 |
平成18ネ2387不正競争行為差止等請求控訴事件 | 判例 | 商標 |
平成5ワ1111 | 判例 | 商標 |
平成15ワ10016損害賠償等請求事件 | 判例 | 商標 |
昭和50ネ2172 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 識別機能 / 指定商品 / 普通名称(3条1項1号) / 慣用商標(3条1項2号) / 周知性 / 類似性(類否判断) / 結合商標 / 権利濫用(権利の濫用) / 先使用(32条) / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 離隔的 / 取引の実情 / 出所の混同 / 国内 / 差止 / 連合商標 / 更新登録 / 先使用権 / 非類似 / 商号 / |
---|
元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
---|---|
元本PDF | 裁判所収録の別紙1PDFを見る |
事件 |
昭和
61年
(ワ)
7184号
|
---|---|
裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 1988/07/28 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
一 被告セントラルパーク株式会社は、その営業上の印刷物その他宣伝広告物に別紙商標の目録(一)の(二)記載の標章を使用してはならない。 二 被告セントラルパーク株式会社は、その占有する前項記載の標章を使用した印刷物その他宣伝広告物を廃棄せよ。 三 原告の被告セントラルパーク株式会社に対するその余の請求並びに被告日本アナボリック株式会社及び被告【A】に対する各請求をいずれも棄却する。 四 訴訟費用は、原告と被告日本アナボリック株式会社及び被告【A】との間に生じた分は全部原告の負担とし、原告と被告セントラルパーク株式会社との間に生じた分はこれを五分し、その一を被告セントラルパーク株式会社の負担とし、その余を原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
---|---|
当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨1 被告日本アナボリック株式会社(以下「被告日本アナボリック」という。)は、その販売にかかるゴーカートに別紙商標の目録(一)記載の標章、その他「SLICK」ないしは「スリック」を付加して表示する標章を付し、又は右各標章を付したゴーカートを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、又は右ゴーカートに関する広告書類、定価表又は取引書類に前記標章を付して展示し、又は頒布してはならない。 2 被告日本アナボリックは、その占有する前項の標章を付した広告書類、定価表又は取引書類を廃棄せよ。 3 被告日本アナボリックは原告に対し、別紙謝罪広告目録(一)記載の謝罪広告を同目録記載の要領で同目録記載の新聞・雑誌に各一回ずつ掲載せよ。 4 被告日本アナボリック及び被告【A】(以下「被告【A】」という。)は、各自原告に対し、金八〇〇万円及びこれに対する昭和六一年七月一九日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。 5 被告セントラルパーク株式会社(以下「被告セントラルパーク」という。)は、その営業上の施設又は看板、印刷物、その他宣伝広告物に別紙商標の目録(一)記載の標章、その他「SLICK」ないしは「スリック」を付加して表示する標章を使用してはならない。 6 被告セントラルパークは、その占有する別紙商標の目録(一)記載の標章、その他「SLICK」ないしは「スリック」を付加して表示する標章及びこれらの標章を使用した看板、宣伝広告物、印刷物を廃棄せよ。 7 被告セントラルパークは原告に対し、別紙謝罪広告目録(二)記載の謝罪広告を同目録記載の要領で同目録記載の新聞・雑誌に各一回ずつ掲載せよ。 8 被告セントラルパークは原告に対し、金七〇〇万円及びこれに対する昭和六一年八月六日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。 9 訴訟費用は被告らの負担とする。 10 金員支払部分につき仮執行の宣言二 請求の趣旨に対する答弁(被告日本アナボリック、同【A】)1 原告の被告日本アナボリックに対する請求の趣旨1項のうち「被告日本アナボリックは、その販売にかかるゴーカートに『SLICK』ないしは『スリック』を付加して表示する標章を付し、又は右標章を付したゴーカートを譲渡し、引き渡し、譲渡もしくは引き渡しのために展示し、又は右ゴーカートに関する広告書類、 定価表又は取引書類に前記標章を付して展示し、又は頒布してはならない。」との請求及び請求の趣旨2項のうち「被告日本アナボリックはその占有する前項の標章を付した広告書類又は取引書類を廃棄せよ。」との請求に係る訴えを却下する。 2 原告の被告日本アナボリックに対するその余の請求及び被告【A】に対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 (被告セントラルパーク)1 原告の被告セントラルパークに対する請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
|
当事者の主張
一 請求原因1 原告は、左の商標権(以下「本件商標権」といい、その登録商標を「本件登録商標」という。)の商標権者である訴外株式会社共和から昭和六一年四月三〇日本件商標権の譲渡を受け、同年一〇月一三日商標権移転の登録を了した。 出願日 昭和四〇年七月三〇日公告日 昭和四一年五月四日登録日 昭和四一年九月二六日登録番号 第〇七二〇七〇一号指定商品 第一二類 輸送機械器具、その部品及び付属品(他の類に属するものを除く)登録商標 別紙商標の目録(三)記載のとおり更新登録日 昭和五二年五月九日、昭和六一年八月二五日2 原告は、昭和六〇年三月二二日米国の訴外アスコット社から同社が製造、販売する特殊ゴーカート(以下「本件カート」という。)の日本における独占的販売権及び本件カートのための特殊サーキット(以下「本件サーキット」という。)のノウ・ハウを取得し、本件カートの日本での商標を「SLICKCART」(別紙商標の目録(二)記載のもの、以下「原告標章」という。)とし、本件サーキットを「SLICKCART CIRCUIT」と称して、フランチャイズ方式により、 本件カートの販売及び本件サーキットの運営を行っている。 3 本件カートは、ガソリンエンジンを搭載した特殊ゴーカートに特殊プラスチック製のボディ及び特殊タイヤを装着し、さらにサーキット自体に特殊な工夫を施すことにより、時速四〇キロメートルのスピードで一周一〇〇メートル余の楕円形のコースを周回することにより誰でも容易に高速でレースカーを運転しているような感覚を味わえる特殊ゴーカートである。 4(一) 原告は、昭和六〇年七月二〇日愛知県海部郡<以下略>において自ら本件サーキットを開設したところ営業的に大成功であり、さらに同年一二月二〇日大阪市<以下略>でサーキット全体を大型テントで囲った全天候型のモデルサーキットを開設した。 (二) 本件カートは爆発的な人気を博し、原告が直営する右両サーキットは場所的に不便であるにもかかわらず、平日で一〇〇〇人、土曜日及び日曜日においては各二〇〇〇人の利用者があり、テレビ、新聞、週刊誌等に大々的に取り上げられた。 (三) 原告のフランチャイズ・サーキットは、原告が直営する右二箇所の他、別紙サーキット一覧表記載のとおり昭和六二年六月までに和歌山市、明石市、岡山市、福山市、松山市、北九州市、名古屋市、宇都宮市等に一三箇所開設され、それらのサーキットの施設、看板にはすべて原告標章が大きく書き込まれているので、 原告標章は、単に本件カートの商標であるのみならず、原告及びフランチャイジーの営業を表示するものとして認識されている。 (四) 以上の結果、原告標章は、昭和六〇年七月以降我が国において原告が販売する本件カートの商標並びに原告及びそのフランチャイジーが営業する本件サーキットの営業表示として広く認識されるに至った。 5 被告日本アナボリックは、米国の訴外リクレーショナル・エンタープライズ社(以下「リクレーショナル社」という。)から同社製ゴーカート(以下「被告カート」という。)を輸入し、販売しているが、右販売につき同被告の封筒、見積書等の取引書類等に別紙商標の目録(一)の(イ)ないし(ニ)記載の標章(以下これらを総称して「被告標章」といい、その個々の標章を「被告標章(イ)」などという。)を付して頒布している。 6 被告日本アナボリックの前項記載の行為は、本件商標権を侵害するものである。 (一) 被告カートはゴーカートの一種であり、本件登録商標の指定商品である輸送機械器具に属する。 なお、ゴーカートは幾つかの種類があり、大きく分けると遊園地の付属施設である小規模コースにおいて従来から使用されている低速で走行する遊戯機の性格が強いいわゆるゴーカートと、大規模な専用サーキットを有し、高速かつレース形式でその走行を競い、むしろ競争用自動車の性格を有するゴーカートがある。本件カートや被告カートは後者のゴーカートの範囲に属するものであり、もはや遊園地用機械器具の範囲を脱し、競争用自動車の範囲に属するに至ったものであり、商品の区分としても第九類(遊園地用機械器具)ではなく第一二類(競争自動車)に属すべきものである。 (二) 本件登録商標と被告標章とは、観念の点において同一であり、外観及び称呼の点において類似しているから、被告標章は本件登録商標に類似する。 (1) 観念の同一 本件登録商標の「スリック」なる語は、英語の「SLICK」を片仮名で表記したものであり、「滑らかな」、「つるつるする」という観念を有する。 他方、被告標章(イ)の「SLICーCAR」は「SLICK」から単に「K」を外し、その後に輸送機械器具の一般名称である「CAR」を付しただけであり、その意味は、「つるつる滑る車」ということであるから、本件登録商標の指定商品が第一二類の輸送機械器具であることからすれば、本件登録商標と観念が同一ないしは少なくとも類似しているといえる。このことは、被告標章(ロ)ないし(ニ)についても同様である。 (2) 外観の類似 被告標章(ロ)及び(ニ)は、いずれもその要部である「スリック」の部分が本件登録商標と同一であり、右両標章とも片仮名で左から右へ横書きした文字商標であるから、時と場所とを別にしていわゆる離隔的に観察すると全体的外観において本件登録商標と彼此混同を生じ易く、類似している。 (3) 称呼の類似 被告標章は、その要部である「SLIC」、「スリック」、「SLICK」の部分から「スリック」の称呼を生じるから、全体として本件登録商標と称呼が類似する。 7 被告日本アナボリックの前記5記載の行為は、原告の販売する本件カートの商標として広く認識されている原告標章と類似する被告標章を被告カートの商標として使用することにより、本件カートと被告カートの出所の混同を生じさせ、原告の営業上の利益を害している。 8 被告日本アナボリックは、故意又は過失により前記5記載の行為により本件商標権を侵害し、又は不正競争行為をなし、これにより原告に次の損害を与えた。 (一) 得べかりし利益の喪失 被告日本アナボリックは、被告カート二〇台を被告セントラルパークに売却し、 次のとおり七〇〇万円の純利益を得た。 (1) 被告カートの販売価格 一台九二万円(2) 被告カートの原価 一台六〇万円(3) コース設定ノウ・ハウ料 六〇万円(4) 被告日本アナボリックの得た純利益(九二万円ー六〇万円)×二〇台+六〇万円=七〇〇万円 原告は、被告日本アナボリックの右行為により得べかりし利益を喪失したが、商標法38条1項又はその類推適用により、同被告の得た利益の額七〇〇万円が原告の被った損害の額と推定される。 (二) 信用の毀損 原告は、被告日本アナボリックの前記行為により原告の信用を毀損された。右信用毀損による損害を金銭に評価すると、一〇〇万円が相当である。 9 原告は、被告日本アナボリックの前記5記載の行為により営業上の信用を大きく傷つけられたから、商標法39条、特許法106条又は不正競争防止法1条ノ二第三項に基づき、信用回復のために必要な措置として、請求の趣旨3項記載の謝罪広告を求める権利を有する。 10 被告【A】は、被告アナボリックの代表取締役であるが、代表取締役としての職務を行うにつき故意又は過失により前記5記載の行為をし、又は被告日本アナボリックのために忠実に職務を遂行する義務に重大な過失により違反して被告日本アナボリックをして前記行為をなさしめたから、民法709条又は商法266条ノ三の規定に基づき原告が被った前記損害を賠償する義務がある。 11 被告セントラルパークは、兵庫県姫路市<以下略>所在姫路セントラルパークを経営している会社であるが、被告日本アナボリックから被告カート二〇台を購入し、右姫路セントラルパーク内のサーキットを営業するに当り、昭和六一年七月一八日付読売新聞夕刊の広告において「宇宙船操縦テクニックはスリックカーレーシング」と題し、右広告中のリクレーショナル社製ゴーカートの写真の下に「スリックカート」と表示し、また「姫路セントラルパークニュース SUMMER 1986 No.2」及び「F・F創刊二号」においても「新登場スリックカーレーシング」と宣伝し、さらに同月一九日にオープンした右サーキット場に大きく「SLICK CAR RACING」と書いた横断幕を掲げ、案内表示板に「スリックカーレーシング」と表示するなどして、被告標章を営業表示として使用している。 被告セントラルパークの右行為は、原告及びそのフランチャイジーが営業する本件サーキットの営業表示として広く認識されている原告標章と類似する被告標章を同被告の営業するサーキットの営業表示として使用し、人をして右サーキットを原告が営業しているかのような誤認を生じさせ、原告の営業上の利益を害している。 仮に右サーキットの営業者が被告セントラルパークではなく訴外株式会社ぽりーであるとしても、これは外部から認識し得ない内部的事情にすぎず、同被告は右サーキットを自己の施設又は活動として表示しており、しかも同被告自身姫路セントラルパークに入る際の入園料及び右サーキットの売上収入の一部からの利益を得ているものであり、不正競争防止法1条1項2号の責任を免れない。 12 被告セントラルパークは、故意又は過失により前項記載の行為をなし、これにより原告に次の損害を与えた。 (一) 得べかりし利益の喪失 被告セントラルパークは、姫路セントラルパーク内のサーキットで被告標章を営業表示とすることにより次のとおり六〇〇万円の利益を得た。 (1) 被告カート一回の稼働による利益 二五〇円(2) 昭和六一年七月一九日から八月五日までの平日(一二日)の利用者数 一日一〇〇〇人(3) 同年七月一九日から八月六日までの土、日曜(六日)の利用者数 一日二〇〇〇人(4) 被告セントラルパークの得た利益二五〇円×(一〇〇〇人×一二日+二〇〇〇人×六日)=六〇〇万円 原告は、被告セントラルパークの右行為により得べかりし利益を喪失したが、商標法38条1項の類推適用により、同被告の得た利益の額六〇〇万円が原告の被った損害の額と推定される。 (二) 信用の毀損 原告は、被告セントラルパークの前記行為により原告の信用を毀損された。右信用毀損による損害を金銭に評価すると、一〇〇万円が相当である。 13 原告は、被告セントラルパークの前記11記載の行為により営業上の信用を大きく傷つけられたから、不正競争防止法1条ノ二第三項に基づき、信用回復のために必要な措置として請求の趣旨7項記載の謝罪広告を求める権利を有する。 14 よって、原告は、被告日本アナボリックに対し、商標法36条一、二項又は不正競争防止法1条1項1号に基づき請求の趣旨1、2項記載のとおり商標権侵害行為ないし不正競争行為の差止め及び侵害物件の廃棄、商標法39条、特許法106条又は不正競争防止法1条ノ二第三項に基づき請求の趣旨3項記載の謝罪広告の掲載を、被告日本アナボリック、同【A】に対し、各自前記損害金八〇〇万円及びこれに対する不法行為以後の日である昭和六一年七月一九日から支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を、被告セントラルパークに対し、不正競争防止法1条1項2号に基づき請求の趣旨5、6項記載のとおり不正競争行為の差止め及び侵害物件の廃棄、同法1条ノ二第三項に基づき請求の趣旨7項記載の謝罪広告の掲載並びに前記損害金七〇〇万円及びこれに対する不法行為以後の日である昭和六一年八月六日から支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。 二 被告日本アナボリックの本案前の主張 原告の被告日本アナボリックに対する本訴請求のうち「『SLICK』ないしは『スリック』を付加して表示する標章」の使用差止め及びその印刷物の廃棄請求については、その訴訟物たる差止め及び廃棄の対象となる標章が不特定であって、民事訴訟法224条に違反するから、右請求部分に係る訴えは却下を免れない。 すなわち、右請求部分の請求原因を商標権侵害と構成するにせよ、不正競争行為と構成するにせよ、原告の登録商標ないし使用商標と差止め及び廃棄を求める標章(以下「イ号商標」という。)の同一又は類似の判断は、両商標の外観、称呼、観念及び当該商標が用いられる商品の取引の実情を総合して考察されなければならないものであるところ、右両商標の外観、称呼、観念の離隔的考察はイ号商標が具体的に特定されなければ行い得ないし、また、イ号商標が具体的に特定されなければ、イ号商標の用いられる商品の取引の実情も特定できない。 さらに、先使用権の行使或いは普通名称ないし慣用商標、慣用表示としての商標使用は商標権侵害を構成せず、不正競争行為にもならないところ、当該イ号商標の使用が普通名称ないし慣用商標、慣用表示としての使用に当るか或いは先使用権の行使に当るかについてもイ号商標が具体的、個別的に特定されなければ判断できないものとなることは明らかである。 三 請求原因に対する認否、反論(被告日本アナボリック、同【A】)1 請求原因1のうち、原告主張の事項が本件登録商標の商標登録原簿に記載されていることは認めるが、原告が本件登録商標の商標権者であることは不知。 2 同2、3の事実は不知。 3 同4(一)、(二)の事実は不知。 同4(三)のうち、原告標章が原告及びフランチャイジーの営業を表示するものとして認識されていることは否認し、その余の事実は不知。 同4(四)の事実は否認する。 4 同5のうち、被告日本アナボリックがリクレーショナル社からゴーカート(被告カート)を輸入し、販売していることは認めるが、その余の事実は否認する。 5(一) 同6冒頭の主張は争う。 (二) 同6(一)のうち、被告カートがゴーカートの一種であることは認めるが、その余は争う。 被告カートは特殊ゴーカートであるから、商標登録の場合の指定商品の商品区分上はゴーカートであって、商標法施行令別表上第九類に属する商品であり、より具体的には第九類に属する商品のうち「遊園地用機械器具」に該当し、又はこれに準ずる商品である。一方、本件登録商標の指定商品は「第一二類輸送機械器具、その部品及び付属品(他の類に属するものを除く)」であるから、被告カートが本件登録商標の指定商品に該当しないことは明らかである。 また、第一二類に属する商品と被告カートの属する商品であるゴーカートとは、 外観、形状、用途、需要先を全く異にする他、生産者及び販売者も異なり、完成品とその構成部品という関係も全くなく、したがって、両商品に同一又は類似の商標が使用されたとしても、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれは全くないから、被告カートは本件登録商標の指定商品に類似しない。 (三) 同6(二)は争う。 被告標章は、以下に述べるとおり、いずれも本件登録商標とは観念、外観及び称呼の点において全く類似性を有さず、取引の実情においても、本件カートと被告カートが顧客によりその商品の出所につき誤認混同されるおそれは全くない。 (1) 被告標章(イ)a 観念の非類似性 被告標章(イ)は、英文字の「SLIC」と「CAR」を「-」で連結した英文字の結合商標であるところ、そのうち「CAR」には車又は車両という意味があるが、「SLIC」という英語は何らかの意味を持つ単語としては存在しないから、 単なる造語であって何の観念も有しない言葉である。それ故、被告標章(イ)が持つ観念は、「SLIC」というそれ自体は何の観念もない一種の符号を持つ車又は車両ということになる。 一方、本件登録商標は、邦文字の「ス」「リ」「ッ」「ク」を連結したものであるところ、その出願当時(昭和四〇年七月三〇日)国内はもとより米国においてもいわゆるスリックカーレース(走行路面に特殊加工及び特殊なコーティングを施し、これをつるつる滑る特殊路面とし、その上に特殊プラスチック製のボディ及び特殊タイヤを装着させた特殊ゴーカートを走らせるゲーム)は存在していなかったから、本件登録商標の「スリック」が英文字の「SLICK」という単語を同じ発音に近い邦字に置き換えて綴ったものとみることは困難であり、単なる造語であって何の観念も有しない言葉であると解すべきである。仮に「スリック」が英文字の「SLICK」を同じ発音に近い邦語をもって置き換えた言葉であるとしても、我が国の英語水準からすれば、前記「スリック」だけではこれを「滑らかな」、「つるつる滑る」という意味の英語の「SLICK」を片仮名に置き換えたものと理解する者はほとんどいないから、「スリック」は何の観念も有しない。 したがって、被告標章(イ)は、本件登録商標と観念の上で同一性はもとより類似性もない。 b 外観の非類似性 被告標章(イ)と本件登録商標とが外観の上で同一性はもとより類似性もないことは明らかである。 c 称呼の非類似性 被告標章(イ)と本件登録商標とが称呼の上で同一性はもとより類似性のないことは明らかである。なお、被告標章(イ)は、「SLIC」と「CAR」が不可分的に結合されており、「スリックカー」と称呼されるものであって、これを「カー」を省略して単に「スリック」とのみ称する称呼は存在し得ない。 d 取引の実情における誤認混同の不存在 被告日本アナボリックが顧客に販売する被告カートは、その取引過程において、 すべてリクレーショナル社製で「CANーAM RACER」又は「PRO TRAC RACER」なる商標のゴーカートであることが明らかにされており、また、その車体のスタイルも原告販売にかかるアスコット社製本件カートと異なるものであって、顧客がその出所につき被告カートを本件カートと誤認混同するおそれが全くないばかりか、顧客のすべては原告と被告アナボリックが異なる輸入先から輸入した異なる商品を取り扱っている業者であることを両者の発行しているパンフレット等で知っており、両者より被告カート或いは本件カートの価格、品質、アフターサービス、耐久性、ゲームの経済的効果性等につき説明を受け、これらについて比較検討したうえで購入を決定するのである。また、被告日本アナボリックとしても、顧客からの注文に対しては、同被告の取り扱う商品がリクレーショナル社製カートであって原告のアスコット社製カートと異なるものであることを商品パンフレットの送付や商品説明によって明らかにしているのであり、かつ、被告カートについては被告日本アナボリック或いはその関連会社である株式会社ぽりーが直接顧客に売るのであり、しかも通信販売のような広告による注文品販売ではないから、 顧客が被告カートを本件カートと誤認混同するおそれは全くない。 (2) 被告標章(ロ)a 観念の非類似性 被告標章(ロ)は、邦文字の「キャンナム」と「スリックカーサーキット」なる文字を結びつけた結合標章であるが、このうち「スリックカーサーキット」は前述のスリックカーレースにおける走行路面すなわちスリックカーレース用に特殊加工及び特殊コーティングを施された特殊路面についての一般名称であるから、スリックカーレースにおける特殊路面という観念を有するが、「キャンナム」は造語であって何の観念も有しない。したがって、被告標章(ロ)が持つ観念は、「キャンナム」というそれ自体は何の観念もない一種の符号を持つスリックカーレース場の特殊走行路面ということになる。 一方、本件登録商標が観念のない造語であること前述のとおりであるから、被告標章(ロ)と本件登録商標とは、観念の上で同一性はもとより類似性もない。 b 外観の非類似性 被告標章(ロ)と本件登録商標とは文字数及び文字構成が異なり、外観の上で同一性はもとより類似性もないことが明らかである。 c 称呼の非類似性 被告標章(ロ)と本件登録商標とが称呼の上で同一性はもとより類似性もないことは明らかである。 仮に簡易迅速をたっとぶ取引の実際において被告標章(ロ)がその一部だけで簡易に称呼されるとしても、省略称呼としては「キャンナム」しかあり得ず、本件登録商標とは称呼が異なる。 d 取引の実情における誤認混同の不存在(1)のdに同じ。 (3)被告標章(ハ)及び(ニ)a 観念の非類似性 被告標章(ハ)及び(ニ)は、いずれも前述のスリックカーレースの観念を有するから、観念のない造語である本件登録商標とは観念の上で同一性はもとより類似性もない。 b 外観の非類似性 被告標章(ハ)と本件登録商標は、前者が英文字、後者が邦文字であり、両者は全く外観を異にする。被告標章(ニ)と本件登録商標は、共に邦文字であるが、全体の文字数及び文字の構成が異なり、外観の上で同一性はもとより類似性もないことが明らかである。 c 称呼の非類似性 被告標章(ハ)及び(ニ)は、「スリックカーレーシング」という九つの音数を有し、本件登録商標とは音数もアクセントも異なるから、称呼の上で同一性も類似性もない。 仮に被告標章(ハ)及び(ニ)省略称呼ができるとしても、それは「スリックカーレース」であって「スリック」なる省略称呼はあり得ないから、この点でも称呼を異にする。 d 取引の実情における誤認混同の不存在(1)のdに同じ。 6 同7の事実は否認する。 原告標章は英文字の「SLICK」と「CART」を連結した結合標章であり、 前述のスリックカーレース用の特殊ゴーカートという観念を有するから、被告標章とは観念を異にし、外観、称呼も同一性はもとより類似性も有しない。また、前述の取引の実情に照らしても、誤認混同のおそれはない。 7 同8の事実は否認する。 8 同9は争う。 9 同10のうち、被告【A】が被告日本アナボリックの代表取締役であることは認めるが、その余は争う。 (被告セントラルパーク)1 請求原因1ないし4の事実に対する認否は、被告日本アナボリック、同【A】の認否に同じ。 2 同11のうち、被告セントラルパークが姫路セントラルパークを経営している会社であること、原告主張の新聞広告、雑誌による宣伝をしたことは認めるが、その余の事実は否認する。 姫路セントラルパーク内のスリックカーレース場は訴外株式会社ぽりーが営業しているものであり、右レース場内で使用されている被告カート二〇台は、訴外興銀リース株式会社が被告日本アナボリックから買受け、株式会社ぽりーが興銀リース株式会社からリースを受けて使用しているものである。 3 同12の事実は否認する。 4 同13は争う。 四 抗弁1 普通名称ないし慣用商標、慣用表示 スリックカーレース(SLICK CAR RACE)は、走行路面に特殊加工及び特殊なコーティングを施し、これをつるつる滑る特殊路面とし、その上に特殊プラスチック製のボディ及び特殊タイヤを装着させた特殊ゴーカートを走らせ、誰でも容易に高速でレースカーを運転しているような感覚を味わわせるゲームであり、近年米国で人気のあるものであるが、右ゲームを最初に開発したのは被告日本アナボリックの輸入元であるリクレーショナル社であり、昭和五六年頃のことである。同社は、昭和五八年初め頃右ゲームを「SLICーTRAC RACING」の名称で博覧会に出品したところ、爆発的な人気を博し、その後全米に普及し、スリックカーレース(SLICK CAR RACE)、スリックカートレース(SLICK CART RACE)或いはスリックトラックレース(SLICK TRACK RACE)という用語は同社の開発した右ゲームを指す一般名称(普通名称)として使用され、スリックカー(SLICK CAR)或いはスリックカート(SLICK CART)は右ゲーム用の特殊カートを示す一般的名称(普通名称)として使用されるに至っている。 被告日本アナボリックは、リクレーショナル社からの輸入業者として米国における用語例に従い、昭和五八年頃からスリックカーレース、スリックカーサーキット、スリックトラック、スリックカー等の用語を右ゲーム又は右ゲームに用いられる走行路面若しくは特殊ゴーカートを示す一般的な用語として使用してきたものであり(なお、同被告は、右スリックカーの商標としてはキャンナムレーサー、キャンナムレーシングカー、キャンナムスリックカー又はプロトラックレーサーという標章を取引交渉或いは取引書類中で用いている。)、日本においても、スリックカーレースは前述のゲームを示す普通名称として通用しているし、さらにスリックカー(SLICK CAR)及びスリックカート(SLICK CART)はスリックカーレースに使用される特殊ゴーカートを示す普通名称として用いられており、 仮に普通名称でないとしても、少なくとも慣用商標ないし慣用表示である。 したがって、スリックカー(SLICK CAR)、スリックカート(SLICK CART)又はこれらを含む語を被告カートに商標若しくはその他の表示として使用し、又はスリックカーレースの営業を示す名称として使用する行為は、商品又は営業の普通名称ないし慣用商標、慣用表示の使用であるから、商標権侵害又は不正競争行為にならない。 2 先使用 被告日本アナボリックは、原告において原告標章が本件カートの商標及び本件サーキット営業表示として周知性を獲得した時期であると主張する昭和六〇年七月より以前の昭和五八年頃から、株式会社ぽりーを販売代行者としてリクレーショナル社製の被告カートを販売するに際し、取引書類に「スリック」を含む用語すなわち「スリックトラック」「スリックカー」等の用語を用い、これを頒布してきたものであり、しかも右はリクレーショナル社の用語例及び被告日本アナボリックの独自の発想に基づくものであるから、被告日本アナボリックは善意である。 したがって、被告日本アナボリックは、不正競争防止法2条1項4号の規定により、被告標章その他「SLICK」又は「スリック」を付加して表示する商標使用につきいわゆる先使用権を有する。 3 権利濫用 本件登録商標は昭和四〇年七月三〇日付で訴外共和護謨工業株式会社が出願し、 昭和四一年九月二六日付で登録となったものであるところ、特殊ゴーカートであるスリックカーが米国で開発されたのは昭和五六年頃であるから、本件登録商標の当初の商標権者が本件登録商標を特殊ゴーカートの商標として使用した事実がないことはもとより、使用する意図を有していなかったことも明らかである。原告は、原告商標が本件登録商標の存在により登録を受けることができないため、これを本件登録商標の連合商標として出願するため本件登録商標を譲り受けたごとくであるが、このように原告が連合商標の登録出願のために本件登録商標を前商標権者から譲り受けたことを奇貨として、右譲受より以前から使用されている「スリック」を含む標章の使用の差止めを本件商標権に基づいて求めることは、権利の濫用として許されない。 五 抗弁に対する認否すべて争う。 |
|
証拠(省略)
理 由一 被告日本アナボリックの本案前の主張について 被告日本アナボリックは、原告の同被告に対する本訴請求のうち「『SLICK』ないしは『スリック』を付加して表示する標章」の使用差止め及びその印刷物の廃棄請求については、訴訟物たる差止め及び廃棄の対象となる標章が不特定であるから、右請求に係る訴えは不適法である旨主張するので、検討する。 原告の被告日本アナボリックに対する請求の趣旨1、2項記載の請求は、商標法36条一、二項又は不正競争防止法1条1項1号に基づく標章の使用差止め及び廃棄請求であるが、原告が差止め及び廃棄を求める対象は、「別紙商標の目録(一)記載の標章、その他『SLICK』ないしは『スリック』を付加して表示する標章」というものであり、このうち「『SLICK』ないしは『スリック』を付加して表示する標章」という部分は、確かにそれだけを取り上げて観念的に考えれば、 標章の内容が包括的で、「SLICK」ないしは「スリック」を付加して表示する具体的標章としては種々のものがありうるところである。しかし、実際問題としては、右標章の付される商品はゴーカートという特殊な商品であり、「SLICK」ないしは「スリック」という言葉も必ずしも一般に馴染みのある言葉とはいえないから、商品を表示する標章としては勢い「SLICK」ないし「スリック」という言葉と「車」を意味する言葉を組み合わせ、場合によってはこれに短い言葉を付加した程度のものとならざるを得ないであろうと考えられるし、対象商標の特定が別紙商標の目録(一)で四つの具体的商標を挙げたうえで右標章その他という形でなされているので、「その他の標章」はこれら四つの標章と主要な点で共通項を有するものに限定されると解されるから、「その他『SLICK』ないしは『スリック』を付加して表示する標章」といってもその範囲は観念的に考えるほど広いものではない。そして、被告としては、もとより現在使用している標章をもとにして将来それ以外の右のような標章を使用するおそれがあるか否かは争いうるのである。 したがって、原告が本件でしているような訴訟物の特定の程度でも、被告らの防禦には支障はないものと考えられる。その他、執行の能否の点や既判力の範囲の点を考えに入れても、原告の訴訟物の特定には欠けるところはないものというべきである。 よって、被告日本アナボリックの本案前の主張は採用できない。 二 請求原因1のうち、原告主張の事項が本件登録商標の商標登録原簿に記載されていることは当事者間に争いがなく、右事実によれば、原告は、その主張の内容の本件商標権をその主張のとおり前権利者の訴外株式会社共和から譲り受けて商標権移転の登録を了し、本件商標権を取得したものと認められる。 三 いずれも成立に争いのない甲第六ないし第一〇号証、乙第一一、第二九、第三〇、第四七号証、原告代表者本人尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第五号証、いずれも弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める甲第一七号証、第二八号証の一、乙第三一ないし第三三号証、それぞれ弁論の全趣旨により昭和六一年七月一〇日撮影の本件カートの写真であると認める検甲第一号証の一ないし四、同月二〇日撮影の岡山市のスリックカートサーキットの写真であると認める検甲第二号証の一ないし四、同年六月一八日撮影の名古屋市のスリックカートサーキットの写真であると認める同号証の五、同年七月二一日撮影の宇都宮市のスリックカートサーキットの写真であると認める同号証の六、七、同月二二日の撮影の北九州市のスリックカートサーキットの写真であると認める同号証の八ないし一一、 同月二四日撮影の松江市近郊のスリックカートサーキットの写真であると認める同号証の一二、一三、原告代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。 1 原告代表者【B】は、原告設立前の昭和六〇年三月二二日米国のゴーカート製造会社であるアスコット社との間で、同社が製造、販売する特殊ゴーカート(本件カート)の日本における独占的販売権及び本件カートのための特殊サーキット(本件サーキット)のノウ・ハウを取得する旨の契約を締結し、同年六月二六日本件カートの輸入、販売、本件サーキットの営業等を目的として原告を設立し、その代表取締役に就任し、原告がアスコット社との間の右契約上の地位を承継した。 2 本件カートは、五馬力のガソリンエンジンを搭載した一人乗りの一種のゴーカートであり、衝突の衝撃に耐える強化プラスチック製のボディを有し、左後車輪を除く三本の車輪に溝のないタイヤを装着したものである。本件サーキットは、一周約一〇〇メートルのオーバル(楕円形)コースで、コンクリートの上に特殊なワックスを塗り、特殊なパウダーを撒いてよく滑るようにし、あたかもアイスバーンの上を走るような感覚を味わえるようにしてある。本件サーキットの競技態様は、十台位の本件カートが同時にスタートして三分間サーキットを周回して走行距離を競うというものである。本件カートは、誰でも乗れるものであるが、最高時速四〇キロメートル近くのスピードでコースを周回し、コーナーではハンドル操作のテクニックを要するもので、カーレースのスリルを味わえるようになっている。 3 原告は、昭和六〇年七月二〇日愛知県海部郡<以下略>に初めて本件サーキットである「名四サーキット」を開設し、次いで同年一二月二〇日大阪市<以下略>に大型テントで囲った全天候型の本件サーキットである「南港サーキット」を開設した。 4 本件サーキットは、本物のレース感覚が味わえるということで若年層を中心に人気を呼び、ことに南港サーキットは開設と同時に非常な人気を集めて、平日で一〇〇〇人、土曜日及び日曜日には一日二〇〇〇人位の利用者がつめかけ、長蛇の列ができるほどであった。そして、南港サーキットが非常な人気を呼んでいることは、同サーキットの開設直後から関西地方を中心にテレビ、新聞、雑誌等でたびたび大きく取り上げられた。 5 本件サーキットが右のとおり非常な人気を博したことにより、業界の反応も強く、原告に対する本件カート及び本件サーキットの注文が相次いだので、原告は、 フランチャイズ方式によるテリトリー制により本件サーキットの営業を拡大していくことにした。そして、別紙サーキット一覧表記載のとおり、原告の前記直営サーキット二箇所のほか、フランチャイズ方式により明石市、名古屋市、北九州市、岡山市、宇都宮市、和歌山市、福山市、宇治市等全国各地に次々と本件サーキットを開設していった。 6 本件カートは、米国ではアスコット社が「Track Master」の商標で販売していたものであるが、原告は、本件カートを日本国内で販売するに当り、 本件カートの特徴を示す「滑らかな、つるつるした」という意味の英語である「sIick」(スリック)と車(本来の意味は二輪の荷車・馬車、手押し車)を意味する「cart」(カート)を結合して「スリックカート」という名称を考案し、 これを英語の大文字で一連に横書きして成る原告標章を昭和六〇年七月の名四サーキット開設以来本件カートの商標及び本件サーキットの営業表示として使用してきた。原告は、原告標章を本件カートのボディに付し、ちらしに記載し、原告の直営サーキット及びフランチャイジーの営業するサーキットの建物の壁面、看板等にも大きく表示した。また、前記の新聞等の報道においても、原告の営業する新しいモータースポーツとして「スリックカート」の名称が紹介されていた。 以上の事実によれば、原告標章は、南港サーキットが営業を開始した昭和六〇年一二月末頃には、少なくとも京阪神地方一円でゴーカートの業界はもとより一般人の間でも原告の本件カート及び本件サーキットを示す表示として広く認識されるに至ったものと認めることができる。いずれも弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める乙第一二号証の一ないし二四七及び被告日本アナボリック代表者本人尋問の結果中右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。 四1 被告日本アナボリックが米国のリクレーショナル社からゴーカート(被告カート)を輸入し、販売していることは、原告と被告日本アナボリック及び被告【A】との間で争いがない。 右争いのない事実に、いずれも被告日本アナボリック代表者本人尋問の結果により真正に成立したものと認める乙第一ないし第六号証、第八、第九号証の各一、 二、第一〇号証の一ないし一八、第一六、第二八号証、第四三ないし第四六号証(乙第四六号証中公証人作成部分の成立は争いがない。)、第五二ないし第五七号証、いずれも同本人尋問の結果により原本の存在及び成立の真正を認める乙第一七号証、第一八号証の一、二、第一九号証及び同本人尋問の結果を総合すれば、次の事実を認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠はない。 (一) 被告日本アナボリックは、昭和五七年六月一七日設立された会社であるが、その頃から特殊ゴーカートである被告カートを米国のリクレーショナル社から輸入し、日本国内で販売し、同時に被告カートを使用するサーキットについてのノウ・ハウの提供を行ってきた。 (二) 被告カートは、米国においてリクレーショナル社が開発したもので、特殊プラスチック製のボディを有し、溝のないタイヤを装着した一種のゴーカートであり、特殊加工又は特殊材料を敷いてつるつる滑るようにした走行路面をレース形式で走行させ、誰でも高速でレースカーを運転しているような感覚を味わうことができるようにしたものである。 (三) リクレーショナル社は、被告カートを用いたレースを「SLICーTRAC RACING」(「SLICーTRAC」は、前記のとおり「滑らかな、つるつるした」という意味の英語の「SLICK」に走路を意味する英語の「TRACK」の各末尾の文字を省略してハイフンで結合した造語である。)と名付け、米国の博覧会に出品して人気を集めたものであり、同社は、右開発したゴーカートを「CANーAM RACER」の商標で販売し、その後改良を加えて昭和六一年九月頃以降に販売しているゴーカートを「PRO TRAC RACER」の商標で販売している。 (四) 被告日本アナボリックは、被告カートを輸入して日本国内で販売するに際して、リクレーショナル社の商標に対応して、被告カートの商標としては、注文書、契約書等の取引書類には「キャンナムレーシングカー」、「キャンナムレーサー」、「キャンナムスリックカー」又は「プロトラックレーサー」の標章を使用し、また、取引先に提出した説明書や図面において、被告カートを使用する走路の名称として「スリックトラック」の語を使用していた。 2 原告は、被告日本アナボリックが被告カートの販売につき被告標章を使用している旨主張するので、検討する。 (一) まず、被告標章(イ)についてみるに、いずれも成立に争いのない甲第一一ないし第一三号証、原告代表者及び被告日本アナボリック代表者各本人尋問の結果によれば、被告日本アナボリックは、訴外株式会社サンプロデュースタイムリーから被告カートの購入を希望するので見積を出してくれとの申出を受けたことに応じて、昭和六一年七月二四日付の見積書を同社に送付したこと、右見積書を入れた同被告の社用封筒の裏側下部の同被告の商号名を印刷してある上に「SLICーCAR」(被告標章(イ))と記載されたシールが貼付されていたこと、右取引は見積以上には進展しないで終わったことが認められる。 しかし、いずれも成立に争いのない乙第一三、第一四、第五八号証及び被告日本アナボリック代表者本人尋問の結果によれば、被告日本アナボリックは、栄養補助食品その他の食品の輸入、販売も営業の目的の一つとしており、同被告が右訴外会社に見積書を送付するのに使用した右封筒は、同被告の商号の記載箇所の上に「健康&ビタミン」の文字が印刷されていたものであったため、右送付事務を担当した同被告の女子職員が栄養補助食品と関係のない被告カートについての見積書を送付する封筒に右記載があるのは適切でないと判断して、同人の思いつきで、「SLICーCAR」と記載したシールを作って右記載の上に貼付したもので、そのとき一回限りのものであったことが認められる。右以外に被告日本アナボリックが被告カートの販売につき被告標章(イ)を使用した事実を認めるに足りる証拠はない。 右事実によれば、被告日本アナボリックは被告カートの販売について被告標章(イ)を現在使用しておらず、将来使用するおそれがあるとも認められない。 (二) 被告標章(ロ)についてみるに、前掲甲第一二号証によれば、被告日本アナボリックは、訴外株式会社サンプロデュースタイムリーに送付した前記見積書において、名称欄に「キャンナム・スリックカーサーキット」(被告標章(ロ))と横書きに記載し、そのうちの「スリックカーサーキット」の部分の下にアンダーラインを付していることが認められる。しかし、右甲第一二号証によれば、右見積書では被告カートのみならず、コース設計ノウ・ハウ料等も含まれていることが認められ、このことと、被告標章(ロ)が末尾に「サーキット」の語を有する複合語であることに照らせば、右見積書に記載された被告標章(ロ)は、被告カートを示す標章ではなく、被告カートを使用するサーキットを示す標章として用いられているものと認めるのが相当である。 他に、被告日本アナボリックが被告カートの販売について被告標章(ロ)を使用したことを認めるに足りる証拠はない。 (三) 被告標章(ハ)、(ニ)については、被告日本アナボリックがこれらの標章を被告カートの販売について使用したことを認めるに足りる証拠はない。 五 原告は、被告日本アナボリックが被告カートの販売につき被告標章を使用した行為は本件商標権を侵害するものであると主張する。しかし、前記四認定のとおり、被告標章のうち被告カートの販売につき被告日本アナボリックによって使用されたものは、被告標章(イ)が偶発的に一回使用されただけにすぎないのであり、 同被告が被告カートの販売について使用した標章のうちで「SLICK」ないし「スリック」を含むものも「キャンナムスリックカー」というものがあるだけである。 原告は、被告カートはゴーカートの一種であり、本件登録商標の指定商品である輸送機械器具に属すると主張する。被告カートは、前示のとおりの構造を有するゴーカートの一種であるが、被告日本アナボリック代表者本人尋問の結果によれば、 被告カートは遊園地内等の専用のコースでのみ走行するようにした遊戯機の一種というべきものであり、競争自動車の範ちゅうに属するものではなく、一般道路を走行できる性能、構造も有しないことが認められ、右事実によれば、被告カートは商標法6条、同法施行令1条、同法施行規則3条による商品の区分上は、同規則別表の第一二類輸送機械器具ではなく、第九類中の遊園地用機械器具に属するものというべきである。そして、右のとおり被告カートが本件登録商標の指定商品である輸送機械器具とは構造、性能、使用態様を異にするものであることに照らせば、需要者、販売先等も異なると考えられ、被告カートと本件登録商標の指定商品とに同一又は類似の商標を使用した場合に同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれがあるとも認め難いから、被告カートが本件登録商標の指定商品に類似する商品であると認めることはできない。 したがって、被告日本アナボリックが本件商標権を侵害したものとは認められない。 六 原告は、被告日本アナボリックが原告の販売する本件カートの商標として広く認識されている原告標章と類似する被告標章を被告カートの商標として使用することにより、本件カートと被告カートの出所の混同を生じさせ、原告の営業上の利益を害していると主張するので、検討する。 1 被告標章のうち被告カートの販売につき被告日本アナボリックによって使用されたことがあるものは、前記四認定のとおり、被告標章(イ)のみである。 被告標章(イ)は「スリックカー」という称呼を生じ、一方原告標章は「スリックカート」という称呼を生じることが明らかであるところ、右両者は語尾の「ト」一音の有無の差にすぎず、称呼において類似するばかりでなく、外観上も、「K」と「ー」と「T」が違うだけであり、観念も「CAR」と「CART」とは類似するものと認められる。したがって、被告標章(イ)は全体として原告標章に類似し、被告標章(イ)を被告カートの商品表示として使用すれば、本件カートと被告カートの間に出所の誤認混同が生じるおそれがあるものということができる。 しかし、被告標章(イ)が使用された状況は、前記四認定のとおり、被告日本アナボリックから訴外株式会社サンプロデュースタイムリーに送付された見積書を入れた封筒に貼付されたシールに記載されていたもので、偶発的な事情による一回限りのものにすぎず、将来被告日本アナボリックが右標章を被告カートの販売について使用するおそれがあるとも認められない。また、右使用時の状況に照らせば、これによって現実に原告が営業上の利益を害したものとも認められないし、これによって原告が何らかの損害を被ったとか信用を毀損されたとかの事実を認めうる証拠もない。 2 被告日本アナボリックが被告カートの商標として実際に使用した標章は前記四1認定のとおりであるが、このうち「キャンナムスリックカー」の標章は「スリック」の文字を含んでいる。 しかし、右「キャンナムスリックカー」の標章は原告標章に類似するものとは認められない。すなわち、ローマ字で書かれた原告標章と片仮名で書かれた「キャンナムスリックカー」とが外観上類似しないことはいうまでもない。また、原告標章は「スリックカート」という称呼を生じるところ、「キャンナムスリックカー」は一体のものとしてとらえるのが自然であるから「キャンナムスリックカー」と一連に発音されるものであり、称呼においても類似するとはいえない。なお、「キャンナムスリックカー」は「キャンナム」の語と「スリックカー」の語とが結合したものであるが、「スリックカー」の部分が特に強い識別力を有すると認めるに足りる証拠はなく、むしろ「キャンナム」の方が語頭に置かれており、造語であっても語感からいっても印象が強いものと認められ、「キャンナムスリックカー」のうちの「スリックカー」の部分が自他商品識別機能を有する要部であるとはいえない。さらに、「キャンナムスリックカー」は造語であって特定の観念を生じないから、観念の類似は問題にならない。 以上のとおり、「キャンナムスリックカー」の標章は原告標章に類似するとは認められない。 七 請求原因11のうち、被告セントラルパークが姫路セントラルパークを経営している会社であり、原告主張の新聞広告、雑誌による宣伝をしたことは、原告と被告セントラルパークの間で争いがない。 原告は、被告セントラルパークが被告日本アナボリックから被告カート二〇台を購入し、姫路セントラルパーク内のサーキットを営業している旨主張するが、右事実を認めるに足りる証拠はない。かえって、成立に争いのない乙第一五号証、いずれも被告日本アナボリック代表者本人尋問の結果により真正に成立したものと認める乙第七、第四八号証及び同本人尋問の結果によれば、姫路セントラルパーク内のサーキットで使用されている被告カート二〇台は、訴外興銀リース株式会社が被告日本アナボリックから購入して訴外株式会社ぽりーにリースしたものであること、 右サーキットは、右株式会社ぽりーが被告セントラルパークから場所の提供を受けて昭和六一年七月以降営業しているものであることが認められる。 いずれも姫路セントラルパーク内のスリックカーレーシングの施設を撮影した写真であることは当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によりその撮影時期を昭和六一年七月二〇日であると認める検甲第四号証の一、三、四によれば、右姫路セントラルパーク内のサーキットの営業開始当時、サーキット場に「SLICK CAR RACING」(被告標章(ハ))と書かれた横断幕が掲げられ、サーキット場及びその周辺に掲げられた案内板には「スリックカーレーシング」(被告標章(ニ))と記載されていたことが認められるが、被告日本アナボリック代表者本人尋問の結果によれば、これらの掲示は株式会社ぽりーがしたものであることが認められる。 以上の事実によれば、被告セントラルパークは自己の経営する姫路セントラルパーク内で株式会社ぽりーが営業する被告カートを使用したサーキットの営業を表示する名称として「スリックカーレーシング」(被告標章(ニ))の語を用いてその宣伝広告を行ったものである。そして、「スリックカーレーシング」のうちの「レーシング」の部分は自動車競走を意味する普通名称として一般人に理解されることは明らかであるから、右部分は、特殊ゴーカートを使用したゲームである右サーキットの営業の種類、内容等を示す語であり、自他営業識別機能を有さず、「スリックカー」の部分が世人の注意を惹く要部であるということができる。したがって、 「スリックカーレーシング」の標章からは右要部につき「スリックカー」という称呼が生じるところ、原告標章からは「スリックカート」の称呼が生じ、語尾の「ト」一音の有無の差にすぎないし、観念としても「カー」と「CART」とは類似するものと認められる。右の結果、「スリックカーレーシング」の標章は原告標章に類似するものというべきであり、右標章を姫路セントラルパーク内の前記サーキットの営業表示として使用するときは、同サーキットの利用者の間に原告が営業するものとの誤認混同を生じさせ、原告の営業上の利益を害するおそれがあるものと認められる。 八 被告セントラルパークは、「スリックカーレース」の語は特殊ゴーカートを特殊路面上を走行させて誰でも容易に高速でレースカーを運転している感覚を味わわせるゲームの普通名称ないし慣用表示であると主張するので、検討する。 原告が本件カートを米国から輸入し本件サーキットを開設するより前の昭和五七年頃から、被告日本アナボリックが被告カートを米国のリクレーショナル社から輸入して日本国内で販売し、同時に被告カートを使用するサーキットのノウ・ハウを提供してきたこと、同被告が取引先に提出した説明書や図面において被告カートを使用する走路の名称として「スリックトラック」の語を使用したことがあったことは、前記四1で認定したとおりである。しかし、被告日本アナボリックが取引関係の書類や宣伝広告文書等において右ゲームの一般名称として「スリックカーレース」の語を使用してきたこと、或いは右ゲームに使用する特殊ゴーカートの一般名称として「スリックカー」や「スリックカート」の語を使用してきたことを認めるに足りる証拠はない。同被告が走路の名称として「スリックトラック」の語を使用したことがあるといっても、前記四1挙示の各証拠によれば、同被告による日本国内での被告カート又はこれを使用したサーキットに関する取引は散発的に行われてきたにすぎないことが認められ、特に被告カートやそのサーキットが取引業者や利用者の間で人気を博したとの事実は窺われない。また、原告が本件サーキットを開設するまでに、被告カートを使用したサーキット以外に、前記のような特殊ゴーカートによるゲームが日本国内で行われていたことを認めるに足りる証拠はないから、「スリックカーレース」、「スリックカー」、「スリックカート」等の言葉が原告の本件サーキット開設以前から普通名称ないし慣用表示であったとは到底認められない。そして、前掲甲第六ないし第一〇号証によれば、原告の本件サーキット開設後、新聞等で「スリックカート」の語が最近人気を呼んでいる新しいモータースポーツ及びそれに使用されるゴーカートの名称として紹介されていることが認められるが、これらの紹介記事は、右各書証によれば、あくまで原告の営業する本件サーキット及びそこで使用されるゴーカートを紹介する記事であることが認められるから、これらの新聞記事をもって「スリックカート」の語が普通名称ないし慣用表示であるとする証左とはならない。その他、現在に至るまで、日本国内において、「スリックカーレース」又は「スリックカー」、「スリックカート」の語がゴーカートを取扱う業界やゴーカートの一般利用者の間で特殊ゴーカートを使用したゲーム又はこれに使用する特殊ゴーカートの一般的な名称として使用されている事実を認めるに足りる的確な証拠はない(前掲乙第二八号証及び被告日本アナボリック代表者本人尋問の結果中には、これらの語が普通名称ないし慣用表示である旨の記載又は共述部分があるが、裏付けを欠き、措信できない。)。なお、成立に争いのない乙第四九号証及び原告代表者本人尋問の結果によれば、「スリック・タイヤ」という言葉は競争自動車に装着される溝のないタイヤを示す自動車用品の分野の普通名称であることが認められるが、このことから「スリックカーレース」、 「スリックカー」、「スリックカート」等の語までが普通名称ないし慣用表示であるということにはならない。これらの語の「スリック」の部分は、英語の「slick」に由来するものであるが、我が国における英語教育の普及度に照らして、 「slick」が「滑らかな、つるつるする」という意味であり、「スリックカー」や「スリックカーレース」の語が前記特殊ゴーカート及びこれを使用したゲームの内容をそのまま示した語であると一般に理解されるとまでは認められない。 よって、被告セントラルパークの前記主張は採用できない(その余の抗弁は、原告の同被告に対する請求に関するものではないから、判断しない。)。 九 以上によれば、原告は被告セントラルパークに対し、不正競争防止法1条1項2号に基づき、同被告の営業上の印刷物その他宣伝広告物に被告標章(ニ)を使用することの差止め及び右標章を使用した印刷物その他宣伝広告物の廃棄を求めることができる。 なお、同被告は、前記七認定のとおり、右標章による宣伝広告の対象となっている姫路セントラルパーク内のサーキットを自ら営業しているものではなく、右標章を自らの営業表示として使用しているとはいえないが、右標章の使用はその経営する姫路セントラルパークの宣伝広告の一環として行われたものであることが明らかである。不正競争防止法1条1項2号は、周知営業表示と同一又は類似の表示を使用することにより営業主体につき混同を生じさせる行為である限り、自らの営業表示として使用するものでなくとも規制の対象にするものと解すべきであり、かく解さないと営業上の利益を害されるおそれのある行為が放置されることになって相当ではないというべきである。したがって、被告セントラルパークの前記行為は、不正競争防止法1条1項2号に該当する。 一〇 原告は、被告セントラルパークの不正競争行為により損害を被ったと主張するので、検討する。 まず、得べかりし利益の喪失については、原告は、被告セントラルパークがその不正競争行為によって得た利益の額が原告の被った損害の額と推定されると主張する。しかし、原告が同被告の得た利益として主張するものは、同被告が姫路セントラルパーク内のサーキットを営業していることを前提とするものであるところ、これが認められないことは前示のとおりである。そして、原告が同被告の前記不正競争行為によって得た利益の額を認めるに足りる証拠もないから、右推定の可否を論じるまでもなく、原告の右主張は失当である。その他、同被告の右行為によって原告が喪失した得べかりし利益の額について右以外の主張・立証もない。 次に、信用毀損による損害についてみるに、原告が被告セントラルパークの右行為によって信用を毀損されたことを認めるに足りる証拠はないから、右主張もまた失当である。 よって、原告の被告セントラルパークに対する損害賠償の請求は理由がない。 一一 原告は、被告セントラルパークの不正競争行為により営業上の信用を大きく傷つけられたとして不正競争防止法1条ノ二第三項に基づき謝罪広告の請求をするが、前示のとおり同被告が原告の営業上の信用を害したものとは認められないから、原告の右請求は理由がない。 一二 以上の次第で、原告の被告日本アナボリック及び同【A】に対する各請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないからこれを棄却し、被告セントラルパークに対する請求は、主文第一、二項掲記の限度で理由があるから、右限度でこれを認容し、その余は失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法92条本文、89条を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判官 | 露木靖郎 |
---|---|
裁判官 | 小松一雄 |
裁判官 | 青木亮 |