審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成20行ケ10295審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成20行ケ10139審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成20行ケ10089審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成20行ケ10178審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
平成20行ケ10258審決取消請求事件 | 判例 | 商標 |
関連ワード | 識別力 / 識別機能 / 指定商品 / 周知性 / 混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) / 4条1項11号 / 4条1項15号 / 類似性(類否判断) / 結合商標 / 外観(外観類似) / 称呼(称呼類似) / 観念(観念類似) / 取引の実情 / 出所の混同 / 無効審判 / パリ条約 / 外国 / 継続 / 非類似 / |
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事件 |
平成
20年
(行ケ)
10212号
審決取消請求事件
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原告ジャック・ウルフスキン・アウスリュストゥング・ フューア・ドラウセン・ゲゼルシャフト・ミット・ ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・ コマンディット・ゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン 訴訟代理人弁護士加藤義明 同 木村育代 訴訟復代理人弁護士松永章吾 訴訟代理人弁理士アインゼル・フェリックス=ラインハルト 同 山崎和香子 被告株式会社サラブランド 訴訟代理人弁護士片山卓朗 同 伊藤真 訴訟代理人弁理士古関宏 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2008/11/26 |
権利種別 | 商標権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1原告の請求を棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求特許庁が無効2007-890029号事件について平成20年1月24日にした審決を取り消す。 第2事案の概要1本件は,被告が有する下記商標(本件商標)登録について,原告が後記引用商標1及び引用商標2と類似し,かつ出所につき混同を生じるおそれがあり商標法4条1項11号又は15号に違反するとして,商標登録無効審判請求をしたところ,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案である。 2争点は,?@本件商標が原告の有する下記引用商標1と類似するかどうか(商標法4条1項11号 ,?A本件商標が他人の業務に係る商品と混同を生じるお )それがある商標に当たるか(同法4条1項15号 ,である。 )記( )本件商標1・指定商品 ・商標第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボン,,,」 つり バンド ベルト 仮装用衣服・出願日平成15年12月15日・登録日平成17年6月24日・登録第4874789号( )引用商標12・指定商品 ・商標第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」第22類「,,,」 衣服綿 ハンモック 布団袋 布団綿第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」第25類・出願日昭和63年6月30日「被服」・登録日平成3年7月31日(平成14年5月15日の書換登録後)・登録第2324652号第3当事者の主張1請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯被告は,平成15年12月15日,上記内容の本件商標について商標登録出願をし,平成17年6月24日に登録第4874789号として設定登録を受けた(甲1,2 。これに対し原告は,平成19年3月9日付けで下記 )無効理由1,2に基づき本件商標登録の無効審判を請求した(甲27 。)特許庁は,上記請求を無効2007-890029号事件として審理した上,平成20年1月24日 「本件審判の請求は,成り立たない 」旨の審決 , 。 (出訴期間として90日を附加)をし,その謄本は平成20年2月5日原告に送達された。 記a 無効理由1:本件商標は上記引用商標1及び下記引用商標2と類似するから商標法4条1項11号に違反する。 記〈引用商標2〉・商標・指定商品第18類 引用商標1と同じ「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」第25類「履物」第26類「(。),, ・出願日 昭和63年6月30日靴飾り 貴金属製のものを除く靴はとめ・登録日 平成3年8月30日靴ひも,靴ひも代用金具」・登録第2329483号(平成14年5月15日の書換登録後)b 無効理由2:本件商標は,他人(原告)の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標であるから,商標法4条1項15号に違反する。 ( )審決の内容2審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,?@本件商標と引用商標2の指定商品とは非類似の商品である,?A本件商標は,引用商標1と類似しないから商標法4条1項11号に該当しない,?B本件商標は原告の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標とは認められないから商標法4条1項15号に該当しない,というものである。 (3)審決の取消事由しかしながら,審決の判断には,次のとおり誤りがあるから,違法として取り消されるべきである。 ア取消事由1(本件商標と引用商標1の類似性についての判断の誤り)(ア)称呼の類似審決は 「本件商標は,構成中『Sarah』の文字に相応して『サ ,ラー』の称呼を生ずるものであるが,図形部分から特定の称呼が生ずるものとは認められない (11頁29行〜31行)とし,引用商標1に 」ついては 「取引に資されるべき特定の称呼は生じないというのが相当 ,である (11頁末行〜12頁1行)として,両者が称呼において相紛 」れる余地はないと判断した(12頁23行〜25行 。)しかし,以下に述べるとおり,引用商標1と本件商標とは 「ジュウ ,ルイノアシアト」という同一の称呼を生ずるものである。 すなわち引用商標1は,下部に黒塗り山形図形を配し,その上部に,4つの黒塗り歪形の図形を該黒塗り山形図形の凸部に沿うように配してなるものであり,全体の図形は仮想垂直線より左方向にやや傾いて描い。, , てなるものである そして 上記黒塗り山形図形は獣類の足裏の肉瘤をまた,上部の4つの黒塗り歪形の図形はその足指を表したかのように看取され,これらは全体として,獣類の足跡を表わしたと理解させるものであるから,その構成態様に応じて「ジュウルイノアシアト」の称呼を生ずる。 一方,本件商標の図形部分は,下部に黒塗りで丸みのある不整形の山形図形,その上部に上記山形図形の凸部に沿うように4つの黒塗りの縦長楕円様図形を配した図形からなるものであり,獣類の足跡として看取されるものであるから,その構成に相応して「ジュウルイノアシアト」の称呼を生ずる。審決は,本件商標の図形部分から特定の称呼は生じないとしたが,本件商標の図形部分は文字部分と分離独立しても自他商品の識別標識としての機能を果たし得ること,本件商標の図形部分は3個の図形全体から,下から上方向へ歩行した獣の足跡として看取されるのが相当であることからすれば,識別標識としての機能を持つというべきであり,獣類の足跡として看取される本件商標の図形部分から特定の称呼が生じないとの審決の判断は不合理である。 よって,引用商標1と本件商標とは,いずれも全体として 「ジュウ ,ルイノアシアト」の称呼を生ずる。 被告は,本件商標は文字部分から「サラー」の称呼のみが生じ図形部分からは何らの称呼も生じないと主張する。しかし,本件商標は「Sarah」の文字部分と3つの獣類の足跡が描かれた図形部分の組合せからなる結合商標であるところ,文字部分である「Sarah」とは,旧約聖書上の人物であるアブラハム(Abraham)の妻であり,または,英語圏の女性名であるSallyという名前に付けられる愛称であるから,3つの獣類の足跡と看取される図形部分と「Sarah」の文字との間には,何らの関連性もなく,また図形部分と文字部分の重なり合いはなく,図形部分と文字部分は若干隔離されている。 これらを総合的に判断すれば,本件商標の図形部分と文字部分は,それぞれの称呼や観念上,全く一体性がなく,これらを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分に結合しているとはいえないから,本件商標からは,文字部分と図形部分のそれぞれから称呼・観念が生じる。 そして,需要者は,この3個の獣類の足跡を同一図形を単純に配列したものとして受け止めるのが自然であり,図形が3個あることや,それらが左右互い違いの歩行跡のように配置されていることに格別の意味があるものとの印象を受けないから,図形部分に接する需要者に印象され,「 」 る観念は左右互い違いの歩行跡のように描かれた3個の獣類の足跡ではなく,当該図形部分を構成する個々の「獣類の足跡」であり,これが需要者に強く印象付けられるのであるから,3つの獣類の足跡が描か, 。 れた図形全体のみならず 個々の足跡の図形からも称呼・観念が生じるそこで本件商標の個々の獣類の足跡の図形について観察すると,一般の需要者は,中央下部に凸形図形を配し,その凸部に沿うように縦長楕円形が複数並べられた図形を見た場合,凸形図形を獣類の足裏の肉瘤と看取し,その凸部に沿うように並べられた縦長楕円様図形を獣類の足指を表したかのように看取するのが自然であり,犬又はそれに類する何らかの種類の獣の足跡であると認識する。 , ,「」 したがって 本件獣類の足跡の図形からはジュウルイノアシアトとの称呼が生じるというべきである。 (イ)観念の類似審決は 「引用商標1は 『爪のある獣の足跡』との観念が生ずるもの ,,であるが,本件商標の図形部分は『歩行している獣の3個の足跡』ほどの観念をもって看取されるというのが相当である (12頁13行〜1 」5行)とし 「両者は,単に『獣の足跡』の観念を共通にして相紛らわ ,しいものということはできず,上記観念においても充分に区別し得るものである (12頁21行〜22行)と判断した。 」しかし,本件商標の図形部分は,歩行することによって印される足跡の極めて自然な状態を描いてなるものであって,3個であることに格別の意味があるものとの印象を受け難いものであるから,これに接する取引者,需要者は,これを単なる「獣の足跡」の図形として認識する場合も少なくない。特に引用商標1及び本件商標の指定商品である被服等の分野においては,ある図形を表す場合にその数を増減することはデザインのバリエーションとして通常よく行われるところであり,取引者,需要者が図形の数を以て両者を識別できるとは限らない。 そうすると,両者は「獣類の足跡」の共通の観念を有する。 (ウ)外観の類似審決は 「本件商標の図形部分と引用商標1とを比較してみても,前 ,者が三個の丸みのある獣の足跡が左右互い違いの歩行跡のように描かれたものであり,後者が1個の爪のある獣の足跡であって,両者の全体から受ける印象は全く異なるものといわざるを得ないから,本件商標と引用商標1とを,時と所を異にして観察した場合にも,両者は相紛れることなく判然と区別されるというべきである(12頁7行〜12行)と 。」判断した。 しかし,引用商標1,本件商標の図形部分を構成する足跡の図形は,共に全体が黒塗りの図形で,中央下部に丸みのある不整形の山形図形,その上部に上記山形図形の凸部に沿うように4つの縦長楕円様図形を配して構成されている。これらの外観上の共通点から,当該図形に接した取引者及び需要者は,両者がともに「獣類の足跡」であることを容易に看取することができる。 そして,本件商標の図形部分が3個の図形からなるものの,3個であることに格別の意味があるわけではなく,取引者・需要者が図形の数を手がかりとして両者を識別できるわけではない。また,引用商標1の爪についても,きわめて小さく表わされていることから,これが看者の印象に強く残るとは考えにくい。 そうすると,引用商標1と本件商標は,山形図形を配し,その上部に縦長楕円形を山形図形の凸部に沿うように並べてなり,一見して獣類の,。 足跡と認められる点が共通していることから 両者は外観上も類似する(エ)上記(ア)〜(ウ)によれば,引用商標1と本件商標は 「ジュウルイ ,ノアシアト」の称呼及び「獣類の足跡」の観念において共通し,外観において類似する互いに相紛らわしい商標である。 そして,本件商標の指定商品のうち「第25類被服」は,引用商標1の指定商品と抵触する。よって,本件商標は上記指定商品について,商標法4条1項11号に該当するから,審決の判断は誤りであり,取り消されるべきである。 イ取消事由2(出所の混同のおそれについての判断の誤り)引用商標1の周知性は審決も認めているところであるが,引用商標1は, , 昭和60年代の初めころから 原告の業務に係る被服等の商品に使用され雑誌にも広告が多数掲載されたことから,日本における需要者の間で周知となっている(甲14の1〜39,甲15の1〜37 。)上記アのとおり,本件商標と引用商標1は称呼,観念及び外観において類似する互いに相紛らわしい商標であるから,引用商標1に接した需要者が,その出所として原告を想起する可能性は高い。 そして原告は,被服を中心としたアウトドア関連の商品に引用商標1を使用している。引用商標1の指定商品である第25類の「被服」以外の商品である 「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,仮装様 ,衣服 (本件商標の指定商品)は,原告が取り扱う商品の中でも,特に被 」服と密接な関係にあることから,本件商標がこれらの商品に使用された場合には,原告の商品との関連において出所の混同を生ずるおそれが否定できない。 そうすると,本件商標がその指定商品中,第25類の「被服」以外の商品に使用されれば,商標の類似性,及び引用商標1の周知性に鑑みて,原告の商品との関連において出所につき混同が生ずるおそれは否定できない。本件商標が商標法4条1項15号に該当しないとした審決の判断は誤りであり,取り消されるべきである。 2請求原因に対する認否請求原因の(1),(2)の事実は認めるが,同(3)は争う。 3被告の反論(1)取消事由1に対しア称呼について原告は,本件商標と引用商標1とは,いずれも全体として「ジュウルイノアシアト」の称呼を生ずると主張するが,本件商標からは「サラー」のみの称呼が生ずるのに対して,引用商標1からは取引に資されるべき特定の称呼は生じないというべきであるから,両者が称呼において相紛れる余地はないとした審決の認定・判断に誤りはない。 ,「」, 原告は 本件商標から ジュウルイノアシアト の称呼を生ずるとして識別標識としての機能を持ち獣類の足跡として看取される本件商標の図形部分から特定の称呼が生じないというのは不合理であり本件商標の図形部分の構成に応じてかかる称呼を生ずる,とする。 しかし,商標の図形部分が他の構成要素から独立して識別標識としての機能を有し,且つ,一定の意味合いを看取させる場合であっても,当該図形部分から商標の類否判断の要素としての称呼を生じないことは往々にしてある。審決が正当に説示するように,本件商標に接する需要者・取引者は,称呼を生じやすい文字部分を捉え,そこから生ずる「サラー」の称呼をもって取引に供するというべきであり,称呼が発生しにくい図形部分からは何らの称呼をも生じない。 一方,引用商標1については,獣類の足跡を表わしたと理解されるものではない。すなわち 「獣類」は,一般に「4足で歩く哺乳動物」を意味 ,するから,イヌ,ネコ,クマ,パンダ,カバ,サイ,キリン,ラクダ,ウシ,ウマ,シカ,イノシシ,ウサギ,リス,ビーバー,イタチ,アライグマ,ネズミ,カンガルー,コアラ等,ありとあらゆる4足で歩く哺乳動物を包含する。しかし,これら各動物の足跡,例えば,イヌの足跡とウマの足跡が異なるものであることは容易に理解できる。つまり,引用商標1が「獣類の足跡」を表したと理解され,そこから「獣類の足跡」の観念及び「ジュウルイノアシアト」の称呼を生ずるということは,イヌの足跡やウマの足跡等,4足で歩く哺乳動物の足跡を含め同一であるということと同義となる。したがって,引用商標1に接する需要者・取引者をして,そこから「獣類の足跡(即ち,4足で歩く哺乳動物の足跡 」の観念を生じ, )「」 , ジュウルイノアシアト の称呼をもって取引に供するとの原告の主張は取引の実情から乖離している。 また,パリ条約の加盟国に広く開放され,国際的に広く採用されている「ウイーン分類 ,及び,それに準拠し,日本の社会・文化を考慮し, 」独自に作成された「標章の図形要素の細分化ウイーン分類表(ウイーン分類第5版準拠第2版(特許庁商標課2005年〔平成17年〕 )」8月発行,乙3)によれば,動物の図形は12に分類されており,中でも「四足獣」は5つに分類されている。したがって,国際的にみても,動物に関する図形商標について「獣類」という概念で括ることができないことは明らかである。 そうすると,審決が正当に説示するように,引用商標1からは取引に資されるべき特定の称呼は生じないというべきである。 イ観念について本件商標と引用商標1は,観念において充分に区別し得るものであるとする審決の判断に誤りはない。原告は,本件商標と引用商標1は「獣類の足跡」の観念において共通する,と主張するが,理由がない。 すなわち,商標に接する取引者・需要者がその商標を一定の図形を表わしたものと理解したとしても,その理解された内容が直ちに商標の類否判断における観念であるということはできない。類否判断の要素としての観念は,その商標が如何なる意味合いをもって取引に供されるかという観点から判断されるべきである。原告の主張する「獣の足跡」のように,意味内容ないし用語法が極めて広いものであるときは,単純にその広い意味内容のまま考察した場合,各種獣類の足跡はその足跡において同じということにもなり,その商標の識別力を稀釈して,その識別機能を見誤るおそれがあるからである。 したがって,原告による観念類似の主張は理由がなく,本件商標と引用商標1は観念において充分に区別し得るものであるとの審決の判断に誤りはない。 ウ外観について原告は,本件商標の図形部分を構成する足跡図形の一構成要素と,引用商標1の全体構成とを比較しており,本件商標の図形部分の全体構成を比較対象にしていない。しかし,取引の経験則に徴すれば,本件商標に接する需要者・取引者は,左側に表された図形部分と右側に表された文字部分をそれぞれ一体の識別標識として認識,把握すると解される。 審決は 「本件商標から,あえて個々の図形が抽出されて印象し記憶さ ,れるとすべき特段の事情もない (12頁5行〜6行)とし,本件商標の 」図形部分と引用商標とを比較してみても,両者の全体から受ける印象は全く異なるものといわざるを得ないから,本件商標と引用商標1とを,時と所を異にして観察した場合にも,両者は相紛れることなく判然と区別される,と正当に認定判断をしているものである。 したがって,本件商標の図形部分の構成要素の1つと引用商標1とを比較する原告の主張は,商標の外観類否の判断手法を誤るものであり,失当である。 エ以上のとおり,本件商標は,引用商標1との間で,外観,称呼,及び観念のいずれの点からしても,相紛れるおそれのない非類似のものであるから,商標法4条1項11号の規定に該当するものではない。審決の判断に誤りはない。 (2)取消事由2に対し以下のとおり,本件商標は商標法4条1項15号の規定に該当するものではない。 ア引用商標1の非周知性原告は,引用商標1の周知性は審決が認めるとおりである,としている。しかし審決は 「 JackWolfskin』の文字と引用商標 ,『(()『』 と同一の構成からなる図形とを結合してなる商標 別掲 3使用商標参照のこと )を,昭和60年代の初め頃から,同人に係る被服を中心と 。 したアウトドア関連の商品に継続して使用していることが認められ,また,当該図形のみからなる商標についても,本件商標の出願前より上記商品に使用したことが認められる(12頁末行〜13頁5行)と認定 。」しているだけであり,引用商標1の周知性を認めているわけではない。 イ商標の非類似性原告は,本件商標と引用商標1は称呼,観念及び外観において類似する互いに相紛らわしい商標であるから,本件商標に接した需要者が,その出所として原告を想起する可能性は高い旨主張する。 しかし,本件商標と引用商標1は,前記(1)のとおり,外観,称呼及び観念のいずれの見地からしても類似するところのない,非類似の商標である。したがって,原告の主張は失当であり,審決が認定判断するとおり,本件商標と引用商標1は,別異の出所を表示する商標として看取されるというべきである。 ウ商品の非同一及び非類似原告は,本件商標がその指定商品中,第25類の「被服」以外の商品に使用されれば,商標の類似性,及び引用商標1の周知性に鑑みて,原告の商品との関連において出所につき混同が生ずるおそれは否定できないと主張する。 原告がいう「第25類の『被服』以外の商品」とは 「ガーター,靴下 ,止め,ズボンつり,バンド,ベルト,仮装用衣服」のことであるとするところ,原告の商品については,アウトドア関連用品という以上に特定していない。したがって,原告は,本件商標が上記「ガーター,靴下止め…」等の商品に使用された場合,原告のいかなる商品について使用された場合に出所の混同を生ずるおそれがあると主張しているのか不明である。 エ以上のとおり,本件商標が商標法4条1項15号の規定に該当するとの原告の主張は理由がなく,審決の判断は正当であって誤りはない。 第4当裁判所の判断( ),(), 1請求原因(1) 特許庁における手続の経緯(2) 審決の内容 の各事実は当事者間に争いがない。 2本件における付加的事実関係(1)本件商標登録は,前記のとおり,被告により平成15年12月15日付けで出願され,平成17年6月24日に登録されたものであるが,証拠(甲1,24)及び弁論の全趣旨によれば,本件商標登録に対し原告から平成17年9月26日付けで 本件商標は前記引用商標1及び別添審決写し末尾(3) ,の使用商標(後記3(1)で摘示。決定書では「引用商標2」と表記)に類似するから,商標法4条1項11号に該当することを理由として,商標法43条の2に基づく登録異議の申立てがなされ,これを受けた特許庁は,異議2005-90501号事件として審理した上,平成18年3月14日 「登,録第4874789号商標の商標登録を維持する」との決定がなされ,平成18年4月5日確定した。その理由は,下記のとおりである。 記「本件商標は,前記のとおり図形と『Sarah』の文字を組み合わせた構成よりなるところ,図形部分と文字部分とはこれを常に一体のものとして把握しなければならない特段の事情を有するものとは認められないから,図形部分も独立して自他商品の識別機能を有するものというべきである。そして,該図形部分は下部に黒塗り山形図形を配し,その上部に,4つの黒塗り歪形の図形を該山形図形の凸部に沿うように配した図形を,上方向に3個左右互い違いに配し,これよりはあたかも獣類の足跡を表してなるかのように看取され 『獣類の足跡』あるいは『足跡』を表したと理 ,解させるものといえる。 ,, ,, 一方 引用商標1は 前記のとおり黒塗り山形図形を配し その上部に4つの黒塗り歪形の図形を該山形図形の凸部に沿うように配し,これら4つの歪形の図形の上部には,それぞれ小さな黒塗り三角形を配してなるものであり,上記黒塗り山形図形は獣類の足裏の肉瘤を,また,上部の4つの黒塗り歪形の図形はその足指を,また,先端の小さな黒塗り三角形はその爪を表したかのように看取され,これらは全体として 『獣類の足跡』 ,を表したと理解させるものといえる。 また,引用商標2は,前記のとおり『JackWolfskin』の文字と図形とを組み合わせた構成よりなるところ,図形部分と文字部分とはこれを常に一体のものとして把握しなければならない特段の事情を有するものとは認められないから,図形部分も独立して自他商品の識別機能を有するものというべきであり,前記引用商標1と相似形の図形からなるものと認められるから,前記認定と同様に全体として 『獣類の足跡』と理 ,解させるものといえる。 , , そこで 本件商標と引用商標の構成中の図形部分の類否についてみるに本件商標は前記のとおり『歩行している如き3個の獣類の足跡』を表してなるのに対し,引用商標の図形部分は『1個の獣類の足跡』を表してなるものであって,構成上顕著な差異を有するから,これに接する看者をして一見して異なった印象を抱かさせ,記憶されるとみるのが相当である。 ,, , そうとすると 本件商標は たとえこれを構成する個々の図形において引用商標の図形と近似するところがあるとしても,あえて個々の図形部分を抽出して比較しなければならない特段の事情も見い出し得ないから,両商標は,これを時と所を異にして比較したときには,外観上十分に区別し得るものである。 また,本件商標と引用商標は,たとえ『獣類の足跡』の称呼,観念において類似する場合があるとしても,これが上記外観上の差異を凌ぐものとは認められない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということはできないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである 」。 (2)なお,被告は下記内容の商標についての商標権者であるが,これは,前権利者である有限会社プレイヤーバッグから平成15年11月21日移転を受け平成15年12月5日にその旨の登録がなされたものである。 記・商標・指定商品第21類「かばん類,袋物,その他本類に属する商品」〔, , ただし 平成17年8月17日の書換登録後は第14類「身飾品( カフスボタン」を除く, 「 。)「,,」, 第18類 かばん類 袋物 携帯用化粧道具入れ第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,第26類「衣服用き章(貴金属製のものを除く,衣服用バッジ(貴金属製のもの 。)・出願日昭和56年9月30日を除く,衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯 。),(。), ・登録日昭和59年10月31日留 ボンネットピン 貴金属製のものを除く・登録第1724500号ワッペン,腕章 〕」3取消事由1(本件商標と引用商標1の類似性に関する判断の誤り)について(1) 本件商標の内容ア本件商標の構成は,前記第2,2(1)のとおりであり,右下側に筆記体で「Sarah」と表記された文字部分と,左側の図形部分とから成る。 図形部分は,下部に黒塗りで丸みのある不整形の山形図形,その上部にその凸部に沿うように概ね大きさを同じくする4つの黒塗りの縦長の楕円様の図形を配した同じ図形を,縦に3個並べてなる。その配列は,一番上と一番下のものが左斜めおよそ45度弱の角度で,また,中のものが,右斜めおよそ45度弱の角度で傾斜しており,一番上のものに対し中のものが右,最下部のものが若干左へと,垂直線に比して少しずつ左右にずれる位置に配置され,それらの間隔も各図形半個分程度であり,大きくはない。 文字部分は,一番大きく表記された大文字の「S」が3個からなる図形部分のうちの1個とほぼ同じ大きさであり,その余の「arah」は小文字の筆記体で一繋がりに表記されている。 イそして,本件商標の文字部分に用いられている「Sarah」の語に関し,文献には以下の記載がある。 SallyAbraham 「(《》.〔〕 Sarah…サラ 1女の名; 愛称2 聖書」([「」 の妻での母甲30 小西友七編集主幹 ジーニアス英和辞典Isaac1572頁,株式会社大修館書店2000年〔平成12年〕4月1日改訂版7版発行 )],「」, 「, そうするとSarah の語は 本件商標の指定商品である 被服ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,仮装用衣服」との関係では,外国の女性の名前を想起する程度の意味を有すると解される。 ウ上記によれば,本件商標は,構成中の「Sarah」の文字部分に相応して「サラ」ないしこれをローマ字読みした「サラー」の称呼を生ずるものと認められる。 一方,本件商標の図形部分は,上記3個の図形の一つ一つは獣類の足跡を想起させるところ,それらの配列・間隔,及び爪のないことからして,下から上方向へ歩行した比較的小さな獣類の足跡を想起するものと解され,歩行した小獣類の足跡の観念を生じる。 しかし本件商標の図形部分は上記のとおり小獣類の足跡を示すものにすぎないから,特定の称呼は生じないというべきである。 ( )引用商標1の内容2これに対し引用商標1の構成は上記第2,2( )のとおりであるところ, 2不整形の丸みを帯びた山形の図形の上に4つの概ね大きさを同じくする楕円, , 図形と 更にその各楕円図形の上に小さな二等辺三角形の図形4つを配してこれが右斜めおよそ45度程度方向に傾斜したものである。 そこからは,全体として爪のある獣類の足跡の観念が生じるものと解される。しかし,獣類の足跡であるからそこから特定の称呼が生じるものとは認められないというべきである。 ( )本件商標と引用商標1の類否3ア商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決,, , すべきであるが それには そのような商品に使用された商標がその外観観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照 。)イそこで以上の見地に立って,本件商標と引用商標1とを対比すると,本件商標と引用商標1とは,本件商標の3個からなる図形部分のうちの一つ一つが,小獣類の足跡の外観を有する点からすると,引用商標1が爪のある獣類の足跡の外観を有する点に共通性があるということはできる。 しかし,本件商標においては,図形部分の足跡様の3個の図形は,上記のとおり下から上に,左右各斜めに,かつ短い間隔で配されており,爪もないことから,比較的小さな獣類が歩行した足跡を想起するものとみられる。そしてその大きさもさほど大きくないことからして,その一つのみが分離して観察されるものとは解されないから,3個で一体・一連のものとして把握されるというべきである。そうすると,本件商標には加えて「Sarah」の文字部分もあることから,本件商標と引用商標1とは外観上区別することができるというべきである。 また本件商標の図形部分からは歩行した小獣類の足跡の観念が生じ,引用商標1からは爪のある猛々しい獣類の足跡の観念が生じるところ,これらも区別し得るものである。 称呼についても,図形部分からは特定の称呼は生じないものの,本件商標の文字部分からは「サラ」ないし「サラー」の称呼が生じ,一方,引用商標1から特定の称呼が生じないことは前記のとおりであるから,称呼においても両者は区別することができる。 このように,本件商標は,外観,観念,及び呼称のいずれにおいても引用商標1と区別することができるから,本件商標は引用商標1と類似するものとは認められない。そうすると,本件商標が商標法4条1項11号に該当しないとした審決の判断は正当として是認できる。 ウ原告の主張に対する補足的説明(ア)原告は,本件商標の文字部分と図形部分からはそれぞれ称呼・観念が生じ,かつ本件商標の図形部分と引用商標1とでは 「ジュウルイノ ,アシアト」との同一の称呼を生じると主張する。 しかし,引用商標1自体から特定の称呼が生じると認められないことは上記のとおりであり,取引の実情に照らして引用商標1に「ジュウルイノアシアト」との称呼が生じると認めるに足る証拠もない。 (イ)また原告は,本件商標において足跡が3個であることに格別の意味はなく,単なる「獣の足跡」の図形として認識するから,本件商標と引用商標1とは共通の観念を有すると主張する。 しかし,本件商標の図形部分の足跡として看取される各図形の配列,間隔からして,3個が一体・一連のものとして把握されることは上記のとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ)また原告は,外観においても,本件商標の図形部分において足跡が3個であることに意味はなく,引用商標1の爪についても極めて小さいことから看者の印象に残らず,両者は外観上も類似すると主張する。 しかし,本件商標の図形部分について一体・一連のものとして把握す, , べきことは上記のとおりであり また引用商標1は足跡が1つであって不成形の丸みを帯びた山形部分,その上部の4つの楕円図形がいずれも丸みを帯びた形であるのに比して,先の尖った二等辺三角形の爪の部分は,狼等の猛々しい動物を連想させ,十分に看者の印象に残るものであり,本件商標の図形部分の一つと外観上区別し得る要素の一つと認められる。原告の上記主張は採用することができない。 4取消事由2(出所の混同のおそれについての判断の誤り)について(1)原告は,昭和60年代初めころから,下記の態様(以下「使用商標」という)で,原告を示す「Jack Wolfskin」の文字と共に引用商標1を使用するほか,引用商標1を単独でも商品等に付してこれを使用し,原告製品の出所を示すものとして需要者に周知となっているところ,引用商標1は本件商標とは称呼,観念,及び外観において類似しているから,引用商標1の指定商品でもある第25類の「被服」以外の商品に本件商標が使用されると,需要者はその出所を原告と混同するおそれがあり,審決の判断は誤りであると主張する。 記(2)証拠(甲15の1〜37)によれば,原告は1988年〔昭和63年〕ころから引用商標1を一部に含む上記使用商標の態様で外国で発行されたアウトドア用品のカタログ等に使用し(甲15の1〜4 ,1990年〔平成2年〕 )からは我が国においても上記のとおり「Jack Wolfskin」の文字に引用商標1を付してジャケット等のアウトドア用品の販売を開始した 甲15の4 1 (〔990JackWolfskin Catalogue INDEX/PRICE LIST,株式会社キャラバン発行〕2枚目に「本年より日本の皆様にJack Wolfskinのアウトドアー製品をご紹介出来る様になりました 」との記載がある)ことが認められる。ま 。 た1995年〔平成7年〕ころからは複数のアウトドア関連の雑誌にも上記使用商標を用いて広告を掲載し(甲13,14の1〜39 ,2002年〔平成 )〕 (), 14年 ころには日本全国に14のジャックウルフスキン直営店 甲11340の特約店(甲12)を展開し,また引用商標1を商品に付して販売していたこと(甲15の22等)が認められる。 (3)しかし,本件商標と引用商標1とが類似しないことについては上記3で説示したとおりであり,本件商標と引用商標1とは区別し得るものであるから,本件商標は,原告の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれのある商標ということはできない。 したがって,本件商標登録は商標法4条1項15号に違反してなされたものではないとした審決の判断に誤りはない。 5結語以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 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裁判長裁判官 | 中野哲弘 |
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裁判官 | 今井弘晃 |
裁判官 | 清水知恵子 |