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関連審決 不服2007-8568
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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成21行ケ10021審決取消請求事件 判例 商標
平成21行ケ10102審決取消請求事件 判例 商標
関連ワード 量産 /  指定商品 /  混同を生ずるおそれ(混同を生じるおそれ) /  4条1項11号 /  類似性(類否判断) /  外観(外観類似) /  称呼(称呼類似) /  取引の実情 /  出所の混同 /  補正 /  判定 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10031号 審決取消請求事件
原告日 新電子工業株式会社
同訴訟代理人弁理士山田英穂
被告特許庁長官
同 指定代理 人木村一弘石田清 安達輝幸
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/06/25
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2007-8568号事件について平成20年12月3日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの商標登録出願に対する拒絶査定不服審判の請求について特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記2のとおり)には,下記3の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(1)原告は,平成18年2月13日,「LaserEye」の欧文字を標準文字で表し,指定商品を第9類「光照射型混入異物検査装置」とする商標登録出願(商願2006-012069号)をしたが,平成19年2月16日付けの拒絶査定を受けたので,同年3月23日,これに対する不服の審判を請求した。なお,原告は,同日,指定商品を第9類「レーザー光照射型混入異物検査装置」と補正した。
(2)これに対し,特許庁は,原告の請求を不服2007-8568号事件として審理し,平成20年12月3日に「本件審判の請求は,成り立たない。」とする本件審決をし,平成21年1月9日,その謄本は原告に送達された。
2本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,要するに,本願商標は,登録第4930819号商標(以下「引用商標」という。)と称呼を共通にし,外観においても近似した印象を与える類似の商標というべきであり,かつ,本願商標の指定商品は引用商標の指定商品に含まれる「牛乳殺菌機」と類似するものであるから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当し,登録を受けることができない,というものである。なお,引用商標は,「レーザーアイ」の片仮名文字と「LASEREYE」の欧文字とを上下二段に横書きし,指定商品に第11類「牛乳殺菌機」等を含むものである。
3取消事由(1)取消事由1(本願商標の指定商品の認定の誤り)(2)取消事由2(商品の類否判断の誤り)ア本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」と引用商標の指定商品に含まれる「牛乳殺菌機」との目的,用途及び機能が共通であるとの認定の誤りイ本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」と引用商標の指定商品に含まれる「牛乳殺菌機」との製造業者及び需要者が共通するとの認定の誤りウ本願商標の指定商品に本願商標を付して販売することが出所を混同させるおそれがあるとの判断の誤り第3当事者の主張1取消事由1(本願商標の指定商品の認定の誤り)について〔原告の主張〕本件審決が,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」について,食品に含まれる異物を検出する装置であると認定したのは,明らかな誤りである。
本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」は,本来,機能的には,食品に含まれる異物を検出する装置ではない。すなわち,本願商標の指定商品に対応する,原告製造のレーザー異物検査装置は,被検体に特定波長のレーザー光を照射し,その透過光や反射光を測定して,予め測定しておいた被検体の主体を構成する母材の特性値と比較し,そのずれの度合いにより光照射された物体が異物か否かを判定する機能を備えたものであり,その機能的な性質上,被検体が食品に限定される理由はないからである(甲14)。本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」を含む異物検出装置は,例えば,医薬品に含まれる異物を検出するためにも用いられ,食品に含まれる異物を検出する装置とは限らない(甲13)。本願商標の指定商品が,少なくとも現状において,食品に含まれる異物を検出するために用いられているのは,当該装置が高価な機械であるための費用対効果の評価や,食品に対して厳しい品質管理を求める法的規制(食品衛生法6条4号)に対処する手段としての優れた有用性の認識に基づくものであり,装置自体が有する本質的な機能に基づくものではない(甲15)。
〔被告の主張〕本願に係る審査時及び審判時において原告が提出した書面並びに本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」が含まれる「異物検査機(異物検出機)」に係る取引の実情等を踏まえれば,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」について,食品に含まれる異物を検出する装置であると認定することを否定することはできない。
2取消事由2(商品の類否判断の誤り)について〔原告の主張〕(1)本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」と引用商標の指定商品に含まれる「牛乳殺菌機」との目的,用途及び機能が共通であるとの認定の誤り本件審決は,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」を「主として,食品の製造・加工において用いられる,レーザー光を利用した異物検査装置」(審決書3頁24〜25行)と認定し,引用商標の指定商品に含まれる「牛乳殺菌機」を「「生乳」に含まれる雑菌などを加熱により,ほぼ死滅させる機械」(審決書3頁26〜27行)と認定した上で,「事業者が,食品の製造・加工過程において,…食品の安全性を確保するために設置する点において,両者はその目的及び用途を共通にするものであり,またその対象とする物品が異なるとしても,食品の製造・加工における食品の安全性確保という点において,その主たる機能を同一にするものである。」(審決書4頁7〜11行)と認定した。
しかしながら,仮に両商品が食品の安全性を確保するために設置される装置であるとしても,このことを理由に,それぞれの目的,用途及び機能が共通若しくは同一であると認定するのは論理の飛躍があり,到底是認できない。
ア目的及び機能について「食品の安全性」という概念には,例えば,食中毒の発生の防止,消費者の飲食事故の防止,毒物の混入の阻止,混入した異物の排除等といった視点が異なる複数の概念を含んでおり,一律に論じることは不適切であり,その中身に踏み込んで検討しなければ,その実態を正しく把握できない。このように,「食品の安全性」という言葉は,食品に関する不安の解消を目的とした事象を記述する場合に有用ではあるが,この一括りにした広義の概念が一致するからという理由で,商品の具体的態様を検討することなく,それらの同一性を論ずることは,明らかに適切さを欠いている。両商品は,それぞれの目的及び機能が全く異なるのである。
イ用途について本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」は,主として母材で構成されている被検体と異物との光学的性質の違いを利用して両者の異同判定を行うものであるから,この装置を量産工程中で利用するためには,母材中の異物を検出するだけではほとんど意味がなく,後工程として,前工程で発見した異物を除去する工程が必須のものとなる。したがって,この後工程で容易に異物を除去するためには,被検体中の母材が食品の場合,被検対象物としては,乾燥果物,穀類や焼成菓子等の粒状・小塊状の固形物である必要があり,牛乳等の流動状態の液体は適切な母材ではない。また,検出・除去すべき異物も,金属片,石片,プラスチック片等の固形物でなければならない(甲15)。その用途は,食品の製造・加工業とは限らず,多様であるが,生乳等の液体の処理加工は用途として含まれない。
これに対して,引用商標の指定商品に含まれる「牛乳殺菌機」は,生乳中の雑菌を加熱処理するための機械であるから,この機械を使用するのは乳業メーカーであり,用途は生乳の処理加工業に限られる。
このように,両商品は,その用途も全く一致しない。
ウ小括本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」と引用商標の指定商品に含まれる「牛乳殺菌機」は,その目的,用途及び機能が同一でない上,業務上,何ら共通点を有せず,関連性もほとんどないのである。
(2)本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」と引用商標の指定商品に含まれる「牛乳殺菌機」との製造業者及び需要者が共通するとの認定の誤りア本件審決は,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」と引用商標の指定商品に含まれる「牛乳殺菌機」とは,目的,用途及び機能が共通若しくは同一であるとの認定に基づいて,両商品は「生産・販売・用途等において密接な関連を有する」(審決書4頁17〜18行)と結論付けているが,その前提が成り立たないことは上記(1)のとおりであるから,この結論を導くことはできない。
イ本件審決が,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」について,「食品の製造・加工機械メーカーから離れて独自に他の分野のメーカーのみにより製造されるものとはいえず」(審決書4頁15〜16行)とするのも明らかな誤りである。一口に食品の製造・加工機械メーカーといっても,それなりに技術は細分化され,特有のノウハウも保有しており,これを一括りにして論じることは,業界の実情を無視したものである。そして,「異物検出装置」の製造に主として要求される技術は,被検体を透過あるいは反射されて光電変換器や電磁変換器により変換・検出された微弱電気信号を分析・処理する信号処理技術であり,加熱装置と温度制御装置及び液密配管器具に関する技術を習得すれば製造可能な「牛乳殺菌機」の製造・加工技術とは全く異なる。このため,現状において,食品に含まれる異物を検出するために多用されている「異物検出装置」を製造している製造業者は,装置の性質上,ほとんどが食品製造とは無縁の会社であり(甲12),両商品の製造業者は一致しない。
ウ本件審決は,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」と引用商標の指定商品に含まれる「牛乳殺菌機」とが「同一の業者によって販売されている事実があること等を考慮すれば,…需要者を共通にすることが多い」(審決書4頁19〜22行)としているが,前提条件が事実と相違する以上,この論理が成立しないことも明白である。本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」の購入者すなわち需要者は,乾燥果物,穀類や焼成菓子等の粒状・小塊状固形物製品の製造・加工業者であり,牛乳等の飲料食品の製造・加工業者ではない。これに対して,「牛乳殺菌機」の購入者すなわち需要者は,牛乳製造・加工業者又は飲料食品の製造・加工業者である。したがって,両商品の需要者が重なることはなく,また,これらの商品の生産・販売における関連性もない。
(3)本願商標の指定商品に本願商標を付して販売することが出所を混同させるおそれがあるとの判断の誤りア本件審決は,原告が本願商標をその指定商品に付して販売するならば,「牛乳殺菌機」の製造業者が「製造・販売又は取り扱っているかのような印象を取引者や需要者に与え,商品の出所を混同させるおそれがあることは明らかである」(審決書4頁25〜27行)と判断し,この事実を本願商標の不登録事由としている。
しかし,両商品の需要者が一致することがないのは上記(2)のとおりであるから,この論理も前提条件を欠いており,本件審決の結論は誤りである。
イ本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」の需要者が食品等の製造・加工業者であり,価格が高価であり,専門的知識がない業者が容易に使いこなせるものでもないため,これが店頭等で標準品として陳列販売されるような販売形態はあり得ない。さらに,上記装置は,注文生産であり,需要者の生産ライン中に組み込まれて使用されるために仕様を需要者の要望に合わせる必要がある等の理由により,通常は,装置の販売担当者と需要者企業の購買担当者が面談して,仕様,納期等の必要な打合せをした上で販売契約が成立するものなのである。このように,取引の実情においては,食品の製造・加工業者が「レーザー光照射型混入異物検査装置」に付された本願商標を視認することにより当該装置の購入動機に結びつく等といった事態は起こり得ないから,需要者に商品の出所の混同を生じさせるおそれはないのである。つまり,本願商標は,実際には商品の出所表示の機能を有しておらず,愛称(ペットネーム)として用いることにより,商品に対する親しみや愛着を持ってもらい,企業のイメージアップを期待しているというのが実情なのである。
〔被告の主張〕本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」と引用商標の指定商品「牛乳殺菌機」とが類似するものであるか否かは,これらに同一又は類似の商標を使用した場合,同一の者の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがあるか否かという観点から判断すべきであり,また,両商品は,以下に述べるとおり,その生産部門,販売部門,用途,需要者の範囲について,その関連性が極めて強い商品といえる。
(1)生産部門及び販売部門「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」は,食品の製造・加工用の機械メーカー以外によって生産されていることは否定しないが,原告が主張するように,食品の製造・加工と関連のないメーカーのみが「異物検査機(異物検出機)」を生産しているとはいえず,食品の製造・加工用の機械メーカーによっても生産されている。加えて,食品の製造・加工用の機械メーカー以外のメーカーが食品用の「異物検査機(異物検出機)」の分野に多数参入してきている実情もある。
他方,「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」は,食品の製造・加工用の機械メーカーが生産している。
また,「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」と「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」とが,同一のメーカーによって販売されている事実もある。
したがって,これらを総合勘案すれば,「レーザー光照射型混入異物検査装置」と「牛乳殺菌機」とは,その生産部門及び販売部門において密接に関連するものといわざるを得ない。
(2)用途及び需要者「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」は,食品の製造・加工工程において,食品中の異物を検査,検出し,当該食品の一定の品質を管理し,食品の安全性を確保することを目的とするものであるから,食品の製造・加工メーカーを,その需要者とするものである。
他方,「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」は,牛乳を始め,果汁飲料,機能性飲料,清涼飲料等の食品の製造・加工工程において,食品の殺菌を行い,当該食品の一定の品質を管理し,食品の安全性を確保することを目的とするものであるから,食品の製造・加工メーカーを,その需要者とするものである。
以上のことからすると,「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」と「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」とは,前者が,食品中の異物を検査,検出することにより,当該食品の一定の品質を管理し,食品の安全性を確保するためのものであり,後者が,食品の殺菌をすることにより,当該食品の一定の品質を管理し,食品の安全性を確保するためのものであるという違いはあるとしても,共に,食品の一定の品質を管理し,食品の安全性を確保するために使用する点において,同一の目的の商品といえるものであって,しかも,両商品は,食品の製造・加工工程において,同一の製造,加工ラインに設置して使用されることが少なくないものであることから,「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」と「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」との関連性は極めて強いものといえる。
したがって,「レーザー光照射型混入異物検査装置」と「牛乳殺菌機」とは,需要者をして,その用途が極めて近似する商品として認識されるというべきであり,さらに,両商品は,共に食品の製造・加工メーカーが使用する商品といえるから,その需要者の範囲を共通にする商品というべきである。
(3)商品の類否以上によれば,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」と引用商標の指定商品「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」とは,生産者及び販売者を同じくする場合も少なくなく,かつ,それぞれの機能である食品中の異物の検査,検出と食品の殺菌とが,最終的には,食品の一定の品質を管理し,食品の安全性を確保するという目的を共通にする商品というべきである。しかも,両商品は,食品の製造・加工工程において,同一の製造,加工ラインに設置して使用されることが少なくないものであり,需要者をして,その用途が極めて近似するものと認識される商品であって,同様に,両商品は,共に食品の製造・加工メーカーが使用する商品といえることから,需要者の範囲を共通にする商品というべきである。
したがって,これらを総合的に考慮すれば,「レーザー光照射型混入異物検査装置」と「牛乳殺菌機」に同一又は類似の商標を使用するときは,同一の者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められ,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」と引用商標の指定商品「牛乳殺菌機」とは類似であるというべきである。
(4)取引の実情について商標の類否判断に当たり考慮することができる取引の実情とは,その指定商品全般についての一般的,恒常的なそれを指すものであって,単に当該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的,限定的なそれを指すものではないことは明らかである。
これによれば,原告の主張に係る取引の実情,すなわち,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」について,価格が高価であること,専門的知識が必要であること,注文生産であること,仕様を需要者の要望に合わせること等は,いずれも,現在の取引の実情の一側面を今後も変化する余地のないものとして挙げているにとどまるものであって,商標の類否判断に当たり考慮することができる取引の実情とはいえないものであるから,その主張は採用されるべきではない。
そして,本願商標は,引用商標と比較して,類似性の程度が高い点をも考慮するならば,本願商標をその指定商品に使用した場合には引用商標との間で出所に誤認混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
(5)まとめ以上のとおりであるから,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとして,登録することができないとした審決の認定・判断に何ら違法の点はなく,取り消されるべき理由はない。
第4当裁判所の判断1取消事由1(本願商標の指定商品の認定の誤り)について(1)認定事実ア原告は,「日新LaserEyeNLA-551」の商品名でレーザー異物検査装置を製造販売しているところ,同装置のカタログ(甲14)には,「レーザー異物検査装置の特長」として,検査品と異物とのレーザー光特有の透過・反射・散乱等の違いを利用すること等が記載され,「主な検査対象物」として,「レーズン,乾燥野菜,ドライフルーツ,ナッツ類他」と記載されている。
イ異物検査機の開発設計・製作販売を業とする株式会社システムスクエアのウエブページには,以下の記載がある(甲13,乙1)。
(ア)「異物検査機ってなに?」の見出しの下で,「弊社の異物検査機は,工場で生産・加工される食品や医薬品,樹脂材料などあらゆる物に混入した異物を検出する為に使われます。その中でも,特に食品安全に対する要求は非常に厳しさを増しています。」と記載されている。
(イ)「業務内容」の項には,「異物検査機の開発設計・製作販売」とした上,「金属検出機,X線異物検査機,液中異物検査機,各種選別機」と記載されている。
(ウ)「主要取引先」として,「株式会社ブルボン,山崎製パン株式会社,日本ハム株式会社,伊藤ハム株式会社,株式会社ニチレイフーズ,日本製粉株式会社,その他食品メーカー,株式会社イシダ」と記載されている。
ウそのほか,チーズ,ヤクルト,コロッケ,即席麺,冷凍野菜等の食品の製造・加工を取り扱う食品業界においては,食品への異物の混入を防ぐため,食品の製造・加工工程において,目視による異物の混入の確認に加え,金属検査機やX線異物検査機等をその工程中に設置し,異物の混入の有無を確認し,除去を行っている(乙11〜19)。
エまた,原告は,本願商標の出願過程において,特許庁に対し,以下の記載のある意見書等を提出した。
(ア)平成18年9月29日受付の意見書(甲3)本件に係る指定商品は醸造製品,肉類加工製品,水産物製品の加工装置の最終段に設置される製品の安全を保証するための装置だからであります。本出願人は本件に係る指定商品の区分が第7類の「食料加工用又は飲料加工用の機械器具」とするのが適当ということであれば,当該区分に変更することに吝かではありません。…本件に係る指定商品は検査対象となる食品中に混入した人体に危害を及ぼしたり発見した人に不快感を与えたりする異物を検出する異物検出装置を対象としており,近年加工食品に対する安全性への要求の高まりを反映して,食品加工装置の最終段に設置される装置として必須のものとなりつつあります。つまり,本件に係る指定商品は食品加工装置の付属装置として流通する商品なのであります。…本出願人は本件に係る指定商品の区分につきまして第9類に拘るつもりはなく,また,指定商品の名称も「光照射型混入異物検査装置」に限らず,例えば,「レーザー光照射型混入異物検査装置」や「光照射型の食品中の混入異物検査装置」等の減縮補正を行う用意があります。
(イ)平成19年3月23日受付の審判請求書(甲5)本願商標の指定商品である「レーザー光照射型混入異物検査装置」の動作原理…はレーザー光源から射出されたレーザービーム(線状光線)を反射鏡等を用いて射出方向とほぼ垂直な方向に走査(振り動かす)しながら被検体(検査対象となる物体)の表面を線状になぞるように照射し,主としてそれぞれの照射箇所から反射された反射光や誘起された蛍光を所定位置に配置された光検知器等により検知し,当該検知光の波長に応じた強度分布(スペクトル)等を自動的に解析することにより,照射位置の物質を特定し,本来検出されるはずのない物質を検出したとき,その箇所に異物があると判定するようにしたものであります。…本装置における好適な適用対象は既存の他の異物検査装置では検出が困難な小塊状や粒状の食品中に紛れ込んだプラスチック片や有機物等のX線識別装置では殆ど異同の判別が困難な異物であり,従って,本装置の主たる用途はかかる特殊な異物の検出用ということになります。さらに,本装置を異物検出に適用するためには,少なくとも検査対象となる被検体の光学的物性が明らかになっている必要があります。つまり,本件の指定商品を例えば,食品中の異物検出に使用しようとする場合であっても,主体となる食品が何かが明らかなものにしか適用できません。…また,この装置が市場に販売投入された場合でも,用途は上記のようにかなり制限されたものであり,製品中に含まれる異物に特に神経質な食品製造業界の最終検査工程での使用等に限定されます。
(ウ)平成20年9月27日受付の意見書(甲10)本願出願に係る商標の指定商品である「レーザー光照射型混入異物検査装置」は食品等の製造または加工の工程で必ず必要になる装置ではなく,製造加工業者が高度の安全性を確保することを望んだ場合にのみ,その最終工程に設置される検査装置であります。つまり,上記装置を製造加工工程の後段に設置するか否かは製造加工業者の任意選択に委ねられているのであります。我が国における食品等の生産工程におきましては極めて厳重な安全管理が為されているため,通常は製品中に異物が混入するといった事態は想定できません。しかし,万一そのような事態が発生した場合の製品回収と破棄および損害賠償に要する費用は,昨今報道されている食品中に毒物が混入していた事例からも理解できますように,極めて甚大で企業の存亡に関わるものとなります。そこで,上記のような万一に生じかねない甚大な損害と信用毀損を回避すべく,特に食品業界から要求された装置が「混入異物検査装置」なのであります。このように,当該装置が主として食品業界からの要求に基づいて開発生産されたのは,たまたま食品業界において万一の事態として想定される不良商品の流通により生じる経済的損失や企業価値の毀損の甚大さに拠るものであり,食品の生産工程に特有の事情に基づくものではありません。従いまして,食品以外の他の商品において同様の事情が想定される場合は,当然当該商品の製造工程の後段に採用されることは当然予想されることであります。
(2)原告の主張の当否原告は,本件審決が,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」が食品に含まれる異物を検出する装置であると認定したのは,明らかな誤りであると主張する。しかしながら,そもそも,本件審決は,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」について,食品に含まれる異物を検出する装置であると限定した認定をしたわけではなく,「検査対象物が必ずしも食品に限定されたものではないとしても,その主たる用途からすれば,主として,食品の製造・加工において用いられる,レーザー光を利用した異物検出装置といい得るものである。」(審決書3頁23〜25行)としたものである。
そして,前記(1)の認定事実によれば,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」の検査対象物は,必ずしも食品のみに限定されたものとはいえないものの,主として食品であるということができ,この認定は,原告の審査・審判段階における前記認定に係る意見書等の記載にも沿ったものである。そうすると,上記装置につき,主として食品の製造・加工において用いられる,レーザー光を利用した異物検出装置であるということは何ら妨げられないというべきである。
よって,本件審決の上記判断に,原告主張の誤りはない。
(3)小括したがって,取消事由1は理由がない。
2取消事由2(両指定商品類否判断の誤り)について(1)両指定商品の目的,用途及び機能ア本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」は,前記1で説示したとおり,主として,食品の製造・加工において用いられる,レーザー光を利用した異物検出装置といって妨げなく,異物検出のためのセンサーに,レーザー光を使用した「異物検査機(異物検出機)」の範疇に含まれる商品である(乙8)。
なお,その検査対象は,レーズン,乾燥野菜,ドライフルーツ,ナッツ類,チーズ,コロッケ,即席麺,冷凍野菜等であり,主として小塊状や粒状の固形の食品であるが,ヤクルト,しょうゆ,ワイン,ペットボトル入り飲料等の液体の食品にも適用される(甲5,14,乙11〜19,43,46,48,58)。
イこれに対し,引用商標の指定商品に含まれる「牛乳殺菌機」は,牛乳を殺菌する機械であって,プレート式殺菌機やチューブラー式殺菌機等のように「殺菌機」と称して使用されているものである。そして,当該「殺菌機」は,牛乳工場で使用されるのを始め,果汁飲料,機能性飲料,清涼飲料等の殺菌にも使用されている(乙20〜27,51,52)。
ウ以上のように,両商品は,食品の製造・加工工程において,食品の一定の品質を管理し,食品の安全性を確保することを確保するために使用されるという共通性は否定できないが,原告は,このことを理由に,本件審決のように,それぞれの目的,用途及び機能が共通若しくは同一であると認定するのは論理の飛躍があると主張し,両商品の目的及び機能が全く異なり,その用途も全く一致しない所以を力説する。
しかるところ,両商品の目的及び機能ないし用途を原告の主張に即して具体的にみてみると,「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」は,主として固形の食品の製造・加工工程において,食品中の異物を検査,検出するものであるのに対し,「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」は,牛乳を始め,果汁飲料,機能性飲料,清涼飲料等の食品(飲料)の製造・加工工程において,食品の殺菌を行うことを目的とするものであるという点に違いを看て取ることができる。
(2)両指定商品の製造業者及び需要者ア「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」は,食品の製造・加工とは直接関連のない原告や株式会社システムスクエアのみならず,アドバンスフードテック株式会社,株式会社寺岡精工,株式会社ヤナギヤ,株式会社コパックス,株式会社アデマック等の,食品の製造・加工用の機械メーカーによっても生産され,又は開発されている(甲13,14,乙1,28〜32)。
他方,「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」は,日本テトラパック株式会社,岩井機械工業株式会社,植田酪農機工株式会社,株式会社イズミフードマシナリ,第一工業株式会社,株式会社パワーポイント・インターナショナル等の食品の製造・加工用の機械メーカーが製造している(乙33〜38)。
イ押尾産業株式会社及びナラサキ産業株式会社は,「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」と「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」の双方を販売している(乙39,40)。
ウ「異物検査機」の開発設計・製作販売を業とする株式会社システムスクエアの主要取引先は,株式会社ブルボン,山崎製パン株式会社,日本ハム株式会社,伊藤ハム株式会社,株式会社ニチレイフーズ,日本製粉株式会社等の食品の製造・加工メーカーであり,これらの食品の製造・加工メーカーにおいて,異物検出装置が使用されている。よつ葉乳業でも,異物検出装置を使用している(甲13,14,乙1〜7,11〜19,58)。
他方,「殺菌機」は,牛乳を始め,果汁飲料,機能性飲料,清涼飲料等の食品の製造・加工工程において,食品の殺菌を行い,当該食品の一定の品質を管理し,食品の安全性を確保することを目的とし,牛乳や飲料等の食品の製造・加工メーカーに販売されている(乙20〜27,51,52)。
エ上記認定の,?@「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」の製造業者は,食品の製造・加工用の機械メーカー以外のメーカーのみならず,食品の製造・加工用の機械メーカーによっても生産され,「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」は,食品の製造・加工用の機械メーカーが生産していること,?A「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」と「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」の双方を販売している会社もあること,?B両商品は,いずれも食品の製造・加工メーカーを,その需要者とすること,以上の事実を総合すると,両商品の製造業者及び需要者は共通するというべきである。
オ原告は,両指定商品の製造業者は一致せず,需要者が重なることはなく,また,これらの商品の生産・販売における関連性もないと主張する。しかしながら,現に,「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」と「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」とその双方を販売している会社が存在し(乙39,40),「異物検出装置」と「殺菌機」の双方を使用している会社が存在すること(乙22,58)に照らしても,原告の主張は採用することができない。
(3)指定商品類否判断指定商品が類似のものであるかどうかは,商品自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく,それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には,たとい,商品自体が互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであっても,それらの商標は商標法4条1項11号にいう「類似の商品」に当たると解するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号昭和36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。
イこれを本件についてみると,本願商標の指定商品「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」と「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」とは,?@製造業者の一部が食品の製造・加工用の機械メーカーであることにおいて共通していること,?A両商品を販売する会社もあること,?Bいずれも食品の製造・加工メーカーにおいて使用されていること,以上の諸点に照らせば,両商品の対象とする食品の種類や具体的な目的及び機能ないし用途に,前記(1)ウのような違いがあるとしても,「レーザー光照射型混入異物検査装置」の属する「異物検査機(異物検出機)」と「牛乳殺菌機」の属する「殺菌機」とに同一又は類似の商標が使用されるときは,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認・混同するおそれがあると認められる関係にあり,商標法4条1項11号にいう「類似の商品」に当たると解するのが相当である。
ウ原告は,「レーザー光照射型混入異物検査装置」は,高価であり,装置の販売担当者と需要者企業の購買担当者が仕様,納期等の打合せをした上で注文生産し,販売契約が成立するもので,店頭等で標準品として陳列販売されるような販売形態はないから,このような取引の実情においては,需要者に商品の出所の混同を生じさせるおそれはないと主張する。しかしながら,仮に,現在,原告において主張のような取引形態を採用しているとしても,それが,指定商品全般についての一般的,恒常的な取引の実情であると認めるに足りる証拠はない。
(4)商標法4条1項11号該当性本願商標は,「LaserEye」の欧文字を標準文字で表し,引用商標は,「レーザーアイ」の片仮名文字と「LASEREYE」の欧文字とを上下二段に横書きしたもので,称呼を共通にし,外観においても近似した印象を与え,両商標の類似性は高い。
そして,本願商標をその指定商品に使用した場合には,引用商標との間で出所に誤認混同を生ずるおそれがあることは明らかである。本願商標は,商標法4条1項11号に該当するといわざるを得ない。
これと同旨の本件審決の判断に誤りはないというべきである。
(5)小括したがって,取消事由2は理由がない。
3結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 高部眞規子
裁判官 杜下弘記